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MM総研とIDC Japanのアナリストが2021年度の各IT市場を予測

MM総研とIDC Japanのアナリストが2021年度の各IT市場を予測

2021年02月05日更新

mobile、note、tablet PC

リフレッシュサイクルの短縮化提案が鍵

MM総研 中村成希 氏
執行役員 研究部長

 2020年は一昨年のWindows 10への移行需要の反動が大きくなるとみていましたが、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務や自宅学習、在宅診療の拡大で、結果としてPC需要は大いに盛り上がりました。義務教育の現場ではGIGAスクール構想によって本来であれば4年をかけて普及させていこうと考えていたものを1年で実現するなど、大変な需要が生まれています。

 PCのフォームファクターについては、ノートPCへの移行が明確に進んでおり、昨年はノートPCの出荷台数が最も多い1年になりそうです。タブレットPCについても、昨年の上半期は過去最高の出荷台数を記録しました。ニューノーマルやステイホーム、リモートワークなどの取り組みが要因ですね。

 9インチ以上のタブレット、モバイルノート、ノートPCをワイドモバイルと定義した際の出荷台数の実績と予測値では、2016年から2023年までの年平均成長率が5%を超えています(右頁上図参照)。スマートフォンと9インチ以下のタブレットを合わせたモバイルICTデバイスの合計に占めるワイドモバイルの比率は、2016年から2023年までの間に26%から36%と10%上昇する見込みで。

PC のフォームファクターは、ワイドモバイル(9 インチ以上のタブレット、モバイルノート、ノートPC)化が進む。2016 年から2023 年までの年平均成長率は5%を超えている。

リプレース提案を積極的に

 こうした流れを受けて、2021年のPC市場では新たな提案を進めていくことも必要です。例えばPCのリプレースサイクルを5年とした場合、2016~2017年にPCを入れ替えている企業への提案が想定できます。2017年くらいになると、Windows 10ベースのPCが導入されているケースもあり、Windows 10からWindows 10へのデバイスの入れ替え提案ができそうです。

 クラウド化が進行する中では、クラウド環境に適したデバイスだけではなく、セキュリティも重要です。エンドユーザーはさまざまな場所でインターネットに接続してPCを利用するようになっているため、ゼロトラストといったセキュリティの概念に則ったデバイス管理ができる体制も求められていくでしょう。そうした体制を実現できるセキュリティサービスとデバイスをセットにした提案もますます有効になります。

 文教市場では、今後はデバイスからネットワークやクラウドなどの環境整備に移行していきます。大型の表示装置やモニターなど周辺機器の提案機会も増えていきそうです。また、今年の後半からは高等学校向けのGIGAスクールの需要が生まれるでしょう。

 いずれにせよ、今後のPC提案の一つの方向性として、デバイスのリフレッシュサイクルの短縮化の促進が挙げられます。現状は入れ替えサイクル期間の中央値が5年程度になっていますが、そのサイクルを短くできる提案ができれば、PC市場をさらに伸ばしていけるはずです。

「ICT 活用サポートの充実」から学びの個別最適化をめざす「ICT 活用の発展」の5 項目で、8 割以上の自治体が「課題に感じる」「やや課題に感じる」と回答。
予算計画では多くの項目で5 割を切る結果となっている。

Server

AI/機械学習の活用が広がる

IDC Japan 福冨里志 氏
エンタープライズインフラストラクチャ
グループマネージャー

 2021年のサーバー市場に対する新型コロナウイルスの影響は、プラスとマイナスの双方が挙げられます。

 マイナスの側面は、企業のサーバー投資の余力や意欲の減退です。6月ごろまで続く可能性があるでしょう。ただし大企業が従来から計画していたシステムの更新需要についてはそれほど影響はなさそうです。

 一方、プラスの側面としては、デジタルトランスフォーメーションや働き方改革に積極的に取り組んでいる先進的な企業の投資のさらなる活発化が予測されます。AIや機械学習の活用が広がり、サーバーへのGPU搭載といった動きも加速します。インテルからは開発コード名がIce Lake(アイスレイク)ベースのXeonが登場する予定で、推論性能を高めるアクセラレーターが搭載されるため、AI活用の新たなフェーズに入ることが予想されます。

 社会全体がネクストノーマルへとシフトしていく中、生き残れる企業になるためにも2021年は重要な1年になるでしょう。デジタルでどのように優位を獲得していくか、そのために業務やサービスをどう再構築していくべきかを、腰を据えて考えていく必要があります。

 ITサプライヤーはそうした視点で企業を支えていけるようなサーバー提案が必要です。サーバーの運用のシームレス化を実現するアーキテクチャやモダナイゼーションの提案、従量課金系のサービスを活用したCAPEXからOPEXへの転換の促進などもあります。

 ミッションクリティカル系のシステムも含めて、クラウドを活用したシステムへの移行が進む中で、AIや機械学習の積極的な活用を見据えたサーバー提案をしていくべきでしょう。

Cloud

クラウドで何を実現するか

MM総研 狩野 翼 氏
研究主任

 国内のクラウド市場(パブリッククラウドとプライベートクラウドを合わせた市場)は2024年に5兆円を超える規模に達すると予測しています。2024年までの市場全体の年平均成長率(CAGR)は18.4%と高い水準になる見通しです。

 SaaS、PaaS、IaaSなどのパブリッククラウドの市場規模は2024年に約2.4兆円に達するでしょう。オンプレの環境をクラウドに移行して最適化するリフトアンドシフト方式の普及や、新型コロナウイルスの感染拡大後の働き方の変化に伴うSaaS需要の高まりなど複数の要因による相乗効果が働く見込みです。

 従来まではCRMやSFAの効率化、人事労務系のデジタル化の目的でSaaS化が進んでいましたが、テレワークやリモートワークの影響で、昨年はコラボレーションやコミュニケーション系のクラウドサービスの利用が増加しました。今年の前半まではこの動きが続きそうです。

 企業のシステム全体を俯瞰した際、クラウド化は不可逆の状況です。オンプレのメンテナンスの手間などインフラの運用面の課題を解決する手段としてもクラウドの選択は必然的になっています。デジタルトランスフォーメーションが進む中、システムの全体最適を考慮した上で、クラウド、オンプレ、エッジの選定が行われるようになっているのです。

 政府もクラウド・バイ・デフォルトの原則からクラウドの活用を第一に考える方針を進めています。実際、AWSが政府の共通プラットフォームとして採用されたりしています。従来までのクラウド活用における懸念が払拭されているのです。

 これまでは、クラウドを選択する理由としてオンプレとの比較が多かったのですが、最近はクラウドで何を実現していくのかが考慮された上での選定に移行してきています。クラウドが相対化されて、クラウドに対するアプローチが変わってきているのです。

オンプレからクラウドへの移行が進むにつれて、クラウド利用を前提としたシステム開発を進める環境が整い、クラウドシフトに弾みがつく。

Network

ネットワークの在り方が見直される

IDC Japan 草野賢一 氏
コミュニケーションズ
グループマネージャー

 2020年は新型コロナウイルスの影響で、リモートワークへの対応が急速に進められました。小規模企業ではルーターの機能でリモートアクセスを実現しているケースもあり、今後、リモートワークが常態化するにつれて、高性能なルーターへのアップグレード、リプレース提案の可能性が出てくるでしょう。

 また、テレワークの普及でWeb会議の利用頻度が高まっていますが、会議の質を確保するためにもインターネットの接続回線の増強やルーターの性能アップが検討されるはずです。

 現在は在宅勤務が増えたことでオフィスの見直しが進んでおり、オフィスのネットワーク投資については一旦保留している企業が増えています。WANについてはSD WANの成長を見込んでいましたが、新型コロナウイルスによってオフィスの縮小化や分散化の潮流が起き始めた中で、企業ネットワークをどうすべきか、改めて検討されている段階のようです。セキュリティ環境なども一緒に見直されているのです。

 こうした中で、今後、無線LANの刷新などが実施される場合は、Wi-Fi 6に対応した製品が中心となるでしょう。また、拠点のアクセスポイントの管理などをクラウド経由で行える製品の導入なども増えてきているようです。そうした製品の管理を請け負うマネージドサービスの需要も徐々に伸びていくでしょう。

 実際、新型コロナウイルスの感染拡大以降の企業ネットワークに関する取り組みや考え方の変化の調査では、「ネットワーク管理の省人化」「無線LAN化の促進」「リモートアクセス設備の増強」といった回答が多くなっています。

 一方で、「パブリッククラウドシフトの加速」や「新たなネットワーク技術/考え方の導入」など、企業ネットワークの在り方に大きな変化をもたらす可能性も示唆されています。

Security

クラウド利用を前提とした対策に

IDC Japan 登坂恒夫 氏
ソフトウェア&セキュリティ
リサーチマネージャー

 昨年は新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、テレワークやリモートワークを真剣に考えなければならない状況になりました。そこで浮き彫りになったのがVPN接続の課題です。従来までは接続する人員が限られていましたが、緊急事態宣言によって、全社員がVPNで社内ネットワークに接続するような状況になりました。VPN機器に大きな負荷がかかり、接続に不具合が生じる状態になってしまったのです。VPN機器の脆弱性の問題なども指摘されたりしました。

 これからは、そもそも企業のネットワークにつなげずに直接インターネット経由でクラウドサービスを利用していくようなデジタル化、デジタルトランスフォーメーションが加速していくでしょう。そうした際に必要になるのが、従来のような境界型のセキュリティとは全く違う考え方です。

 例えばEDR(Endpoint Detection & Response)やXDR(Cross-Layer Detection&Response)のような概念です。メールやエンドポイント、ネットワークなどシステム全体においてマルウェアなどの侵入を前提とした検知と対応を実現する対策です。新型コロナウイルスの感染拡大によって、昨年からは特にエンドポイントを対象にしたEDRソリューションの需要が高まっています。

 クラウドサービスを利用する際の認証を含めたアクセス管理も必要です。加えて、セキュリティサービス自体のクラウド化も進行しています。クラウド間でシームレスに連携したセキュリティ環境を構築できるメリットがあるからです。

 今後はITシステムの統合化や集合化が進みます。その中でセキュリティもマルチベンダー方式でうまく連携させてサイロ化をなくすことが求められていくでしょう。

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