シスコシステムズが、約2年ぶりとなる情報通信事業に関する事業戦略説明会を開催した。今回のトレンドニュースでは、その様子をリポートする。また同時に、企業のDX が求められる中で、AI の活用に注目が集まっている。SAP ジャパンとリコーはそれぞれ、自社のビジネスアプリケーションへのAI 組み込みによって、業務を大きく効率化させる取り組みを進めている。3社の最新情報を見ていこう。

シスコシステムズ
「やわらかいインフラ」構築の伴走支援で
インフラ変革と新たな収益源の確保に貢献

シスコシステムズは5月10日、約2年ぶりに情報通信事業に関する事業戦略を説明した。同社は通信事業者が直面している課題を五つを挙げ、これらの課題解決に貢献するために六つの領域に注力することで、通信事業者向け事業の強化を図ると説明した。ここでは六つの柱に関してそのハイライトをリポートする。

通信事業者の五つの重要課題に
六つの柱で解決に貢献する

シスコシステムズ
木田等理

 シスコシステムズの国内市場における情報通信事業について、同社の専務執行役員 情報通信事業統括 木田等理氏はネットワークソリューションベンダーとして通信事業者の課題解決の支援に重点的に取り組んでいると強調する。そして顧客である国内大手通信事業者が抱える課題は環境の変化に応じて刻々と変わるものと前置きし、現在の重要課題として「インフラストラクチャの変革」「新たな収益源の確保」「サステナビリティ」「ネットワーク可視化・自動化」「セキュリティ」の五つを示した。

 それぞれについて木田氏は「通信ネットワークへの顧客のさまざまな要求と変化に対応するために、インフラを変革する必要があります。また通信事業者間の競争が激化しており、通信サービスの売り上げに加えて、通信に関連したさまざまな付加サービスによる新たな収益源の確保も課題となっています」と指摘する。

 そして「保守要員が不足しており、さらに今後は熟練した作業員が退職していきます。それに対応するにはネットワークの保守・運用を自動化することが求められます。自動化を実現するにはネットワークの可視化が必要です」と指摘する。

 国内の通信事業者が抱えている五つの重要課題に対して、シスコシステムズは六つの柱(領域)に注力することで課題解決に貢献し、同時に同社の情報通信事業を伸ばしていくという。同社が示した六つの柱とは「ソフトウェアとサービスによる価値の最大化」「サステナビリティへの貢献」「フルスタックオブザーバビリティ」「セキュアネットワーキング」「AIへの取り組みを活用」「伴走支援型サービス」だ。

インフラ変革と収益向上への貢献に向けた
ネットワークインフラのプラットフォーム化

 通信事業者のインフラ変革と新たな収益源の確保への貢献について木田氏は「一つのネットワークで多種多様なトラフィックに対応するネットワークコンバージェンスに加えて、マルチレイヤーを統合するレイヤーコンバージェンス、エッジでの機能の実装、そしてセキュリティ、これらをプラットフォームとしてネットワークがサポートする、すなわちNetwork as a Platformとしてネットワークインフラを提供することで、シンプルで拡張性の高いネットワークインフラが実現され、通信事業者のインフラ変革に貢献します」と説明する。そして「Network as a Platformで実現されたネットワークインフラ上に、エッジクラウドやセキュリティ、認証サービス、IoT、プライベート5G、そしてAIなど、さまざまな機能を組み合わせることで市場競争力の高いサービスの創出につながるプラットフォームが実現されます」と新たな収益源の確保への貢献についても説明する。

 同時にネットワークおよびネットワークインフラの信頼性と安全性の確保も重要だ。木田氏は「ビジネスにおいても社会においてもネットワークの重要性がますます高まっています。そのため障害が発生するとその影響の範囲と大きさは深刻です。それを防ぐにはネットワークと、データセンターやクラウドで稼働しているアプリケーションを含めた監視が不可欠です」と指摘する。

 しかし監視する対象分野や目的はさまざまで、これらを網羅して監視するのは非常に困難だ。しかし木田氏は「シスコシステムズには企業買収によって得た対象分野や目的が異なる多数の可視化ソリューションがあります。それらを組み合わせることでフルスタックのオブザーバビリティを実現でき、全体を監視・分析することが可能です。しかも複数の可視化ソリューションを個別に利用するのではなく、統一されたダッシュボードから一元的に利用できる環境の提供を進めています」とアピールする。

 フルスタック オブザーバビリティの実現により、障害対応の迅速化はもちろんのこと、障害の予兆把握、さらにはトラフィックの状況の把握によりネットワークの最適化が可能となり、コスト削減にもつながるという。

これからのITインフラに不可欠な
「やわらかいインフラ」で事業を推進

 通信事業者のインフラ変革と新たな収益源の確保への具体的な貢献として「やわらかいインフラ」が紹介された。

 ハイブリッドワークの浸透、接続されるデバイスの種類や場所の多様化、オンプレやクラウドなどデータの保存先の多様化、アプリケーションやシステムの開発ライフサイクルの高速化および短期間化、セキュリティ対策の対処や範囲など、ITインフラを取り巻く環境が大きく変化している。それらの変化に対応するにはITインフラ上のアプリケーションやデータ、それらの種別や大きさ、負荷に応じてITインフラを柔軟かつ迅速に対応させる必要がある。

 それを実現するには、ITインフラを構成する機能を従来のように個々のコンポーネントで捉えるのではなく、ITインフラ全体を抽象化して一つの概念として捉えなければならない。そこでシスコシステムズは「やわらかいインフラ」を提唱している。

 やわらかいインフラは大企業のみならず中小企業にも不可欠であり、中小企業に向けて通信事業者がマネージドサービスとして提供することを想定し、シスコシステムズではビジネス化を推進している。

 木田氏は「通信事業者はマネージドサービスによるサービスの創出にも高い関心があります。シスコシステムズでは通信事業者に向けて、やわらかいインフラの構築を伴走支援し、この活動を通じてインフラ変革に貢献するとともに、中小企業などの顧客へのマネージドサービスの提供により、新たな収益源の確保にも貢献できます」と強調した。

SAPジャパン
ビジネスのAI活用をサポートする
SAP Business AIの全体像

統合基幹業務システム(ERP)をはじめとしたソフトウェアビジネスを展開するSAPジャパン。同社では、全てのSAPクラウドソリューションにAIを組み込む戦略「SAP Business AI」を進めている。そうした同社のビジネスAIへの取り組みを解説するプレスセミナーが2024年4月23日に開催された。ビジネスアプリケーションをアシストするAIコパイロット「Joule」や、AI利用の開発環境基盤「SAP Business Technology Platform」(SAP BTP)について解説された本セミナーの様子をリポートしていく。

SAPが掲げるAIビジョン
SAP Business AIとは何か

 2024年2月15日にSAPジャパンが開催した2024年ビジネス戦略記者説明会において、同社 代表取締役社長の鈴木洋史氏は「2024年は『ビジネスAI元年』の年とし、全てのSAPポートフォリオにAIの組み込みを進めていく」と語った。そうした同社のビジョンが「SAP Business AI」だ。

 4月23日のプレスセミナーに登壇したSAPジャパン ビジネステクノロジープラットフォーム事業部 事業部長 岩渕 聖氏は「SAP Business AIは4層に分かれています。一つ目は当社のさまざまなビジネスアプリケーションで動作するAIコパイロット『Joule』です。Jouleはユーザーの業務を助けるデジタルアシスタントです。二つ目が『組み込みAI』機能。当社が提供しているクラウドERPなどのSaaSアプリケーションに対してAIの機能を組み込んで提供するものです。三つ目にAIファンデーション。これはユーザーさまやパートナーさまも含めてカスタマイズが可能な『SAP Business Technology Platform』(以下、SAP BTP)というPaaSであり、ERPのデータなどを取り込みながら、お客さま独自のAIエンジンを作ることが可能です。四つ目が連携パートナーであり、AI機能を提要するに当たり、各パートナーさまとコラボレーションしながら協業という形であらゆるAIモデルを皆さまに提供していく方針です」と語る。

 この連携パートナーの中で、同社は3月新たにNVIDIAとのパートナーシップ拡大を発表している。例えば、SAPのAIコパイロットであるJouleを用する際に、NVIDIAとSAPが共同開発したRAG(Retrieval Augmented Generation)機能によってハルシネーションを防ぐモデルの構築を目指していくことや、両者の資産を組み合わせてクラウドERP「SAP S/4HANA Cloud」やクラウド人事ソフトウェア「SAP SuccessFactors」などに組み込む生成AIシナリオの追加および強化といった取り組みを行う。

 そのほか、Aleph Alpha、Anthropic、AWS、Cohere、Databricks、Google Cloud、IBM、マイクロソフトといったパートナーとも連携し、AI機能の提供を進めていく。

SAP BTPとAIの組み合わせで
アプリ開発を効率化する

 SAP BTPとJouleの新機能についてもそれぞれ紹介された。まずはSAP BTPから見ていこう。SAP BTPはデータ管理や分析、インテグレーション、AIといった複数の機能を、一つの環境に統合したPaaSだ。
 例えばSAP BTPにはアナリティクス製品「SAP Analytics Cloud」が含まれているが、「このSAP Analytics Cloudに、2024年2月に実装されたのが『SAP Analytics Cloud Just Ask』です。上部の検索窓から分析のための質問を自然言語で伝えることで、必要な情報を返したり、グラフやチャートを自然生成して分析結果を回答したりします。DBaaS基盤である『SAP HANA Cloud』に搭載された『SAP HANA Cloud Vector Engine』は、ベクトル化した非構造データを格納して類似検索を行ったり、汎用LLMが持たないコンテキスト情報を取り入れたりすることで、生成AIの回答の質や信頼性向上を実現します。コード開発環境『SAP Build Code』は、開発したい要件などを伝えることで、SAPのJavaScript拡張フレームワークであるCAPに則ったコードを自動生成してくれます。カスタムアプリのデータモデルやロジック部分を迅速に構築できるのです」と岩渕氏は語る。

 開発者やAIエンジニア、データサイエンティストなどさまざまな人々がビジネスアプリケーションを利用できる機能のリリースを進める。

 また今後のロードマップとして、Jouleに自動化の要件やシナリオを相談すると、ワークフローやRPAの定義済みのコンテンツから適切なものを探して自動提案してくれる「Joule for SAP Build Process Automation」や、Jouleへの自然言語の指示だけでチャートやダッシュボードの作成、分析やシミュレーションが可能となる「Joule for SAP Analytics Cloud」などをSAP BTPへ実装していく予定だ。

AIコパイロットのJouleが
システムを横断して業務をサポート

 AIコパイロットのJouleについてのデモも実施された。「JouleはSAPアプリケーションのUXを大きく変えます。皆さまの中には、今までSAPのUIはちょっと古くさいとか、使いづらいと感じていた方もいるでしょう。しかしJouleが搭載されたSAPでは、そもそもマウスでクリックするような操作ではなく、自然言語で問い合わせて指示をしていくことで操作します。まさにユーザーアシスタントとして、Jouleは機能するのです」と語るのは、SAPジャパン カスタマーアドバイザリ統括本部 SAP Business AI Lead 本名 進氏。

 Jouleは従来のSAPアプリケーション画面にネイティブで統合され、各アプリケーション上で使用が可能だ。

 本名氏は「例えばSAPシステムの中にあるLLMが知らない社内データに対して、RAGを付加することでLLMに問い合わせをする、そういった仲介をする存在がJouleです。SAPはさまざまな業務領域のアプリケーションを横断的に提供していますので、ERP『SAP S/4HANA』だけでなくSAP SuccessFactors、支出管理ソリューション『SAP Ariba』といった複数のシステムに対して、AIアシスタントとしてJouleがサポートしてくれるため、システムを横断していてもユーザーが問い合わせをしたコンテキストを維持した状態でさまざまな業務領域のアプリケーションにアクセスしてサポートしてくれます」とSAPならではのメリットを語る。

 プロジェクト管理に不慣れなユーザーをJouleがアシスタントとしてサポートするデモも行われた。Jouleと自然言語で会話することで、ERPの情報を基にした利益率などの情報から、今後行うべきアクションなどを提案してもらったり、結果が良かったプロジェクトの詳細を分析してもらったりといったサポートを受けられる。この機能は現在開発中で、すぐに利用することはできないが、非常に期待ができる機能の一つであると本名氏は語る。また、アプリケーション開発もSAP独自のCAPと呼ばれる開発フレームワークに準じたソースコードを、Jouleとの自然言語の対話で自動生成するデモも実施されるなど、ビジネスアプリケーションにおけるJouleの有用性が紹介された。

「JouleをSAPのアプリケーション、そして開発ツールで活用することで、ユーザーの業務効率を大きく向上できます」(本名氏)

 最後に今後の国内展開について本名氏は「多くのパートナーさまにこのAI領域に注力いただいています。当社は今回紹介したように、製品にAIを組み込み提供をしていきますが、パートナーさまはそのプロジェクトをお客さまにどう導入していくかにフォーカスし、プロジェクト管理に対してAIを組み込んだ独自のセットなどを作成していただいている例などもあります。パートナーさまの独自の知見をAIの力に組み込んでより効率化していくことを協力して進めていきます」と本名氏。

 また、パートナーを支援するため、顧客に提案できるようなユースケース作りを進めると同時に、パートナー向けのイベントや支援の仕組みの構築も進めていくという。

「『SAP BTP Hackathon 2024』も開催しており、43社のパートナー企業さまに参加していただく予定です。ラーニング、ハッカソン、シェアの流れの中で、その結果やユースケースをSAPコミュニティに広く共有・展開をしていきたいですね」と本名氏は締めくくった。

リコー
インテリジェントキャプチャー領域を強化し
顧客の業務プロセスのタスクゼロを実現する

リコーは4月22日、プロセスオートメーション戦略についての記者発表会を実施した。同記者会見では、プロセスオートメーション領域の強化に向けた成長投資の一環としてドイツnatif.aiの全株式を取得したことを発表した。natif.aiが持つインテリジェントキャプチャー技術をリコーが獲得することによって、さまざまな顧客の業務プロセスにおいて自動化・高度化を実現していくという。その内容を詳しく紹介していこう。

2036年ビジョンの実現に向け
プロセスオートメーション領域に注力

 リコーは2036年ビジョンとして「"はたらく"に歓びを」を掲げている。その実現のために、リコー コーポレート上席執行役員 リコーデジタルサービスビジネスユニット プレジデント 入佐孝宏氏は「顧客がやらなければならないタスクを減らす・なくす」「顧客が本来やりたい・やるべき仕事に集中できる環境・場を提供する」「顧客が本来やりたい仕事でクリエイティビティを発揮することをサポートする」ことが求められると語る。この3点の提供のためにリコーは、デジタルサービスとグローバルの顧客を基盤として、プロセスオートメーションとワークプレイスエクスペリエンスの二つの領域に注力する。そうすることで、顧客のはたらく喜びを実現していくという。

 プロセスオートメーション領域において、リコーが重要視しているのが、さまざまな種類・レイアウトのドキュメントを自動で分類し、データを抽出する「インテリジェントキャプチャー技術」だ。今回リコーは、ドイツのドキュメントAI企業natif.aiの全株式を取得することで、インテリジェントキャプチャー技術の強化を行う。

リコー
入佐孝宏
リコー
髙松太郎

natif.aiが持つ技術を活用して
手書きを含めたさまざまな書類に対応

 natif.aiは2019年にドイツで設立されたドキュメントオートメーション領域に特化したスタートアップ企業だ。同社は、ドキュメント分類およびデータ抽出のサービスプラットフォームを提供しているほか、機械学習による高性能AIモデルや、高度なOCR技術の研究開発を手掛けている。

 natif.ai買収の背景について、リコー リコーデジタルサービスビジネスユニット プロセスオートメーション事業センター 所長 髙松太郎氏は次のように説明する。「全世界で労働力の不足が見込まれているため、生産性向上に関する経営課題の解決が急務となっています。その解決に向けて、各企業はデジタルトランスフォーメーションを進め、競争力を維持・向上させる取り組みを行っています。しかし多くの企業では、デジタルトランスフォーメーションの前段階である、アナログで行っていた業務をデジタル化する『デジタイゼーション』、ワークフロー全体をデジタル化する『デジタライゼーション』の段階で多くの課題を抱えており、デジタルトランスフォーメーションの段階までたどり着けていません。その要因として、企業で扱われるデータの90%が非構造化データであることや、業務プロセスの約70%が紙、もしくは紙とデジタルのハイブリッドで行われていることがあります。非構造化データから情報を抽出するには手間やコストがかかるといった課題があることで、データの構造化・業務のデジタル化が進まないのです。これらの課題を解決するために、当社はインテリジェントキャプチャー技術に優れたnatif.aiの買収を行いました」

 またnatif.aiを買収したことによる効果について、髙松氏は以下のように説明を続ける。「当社が持つOCRによる紙文書のデジタル化からコンテンツ管理、ワークフロー自動化、外部システムとの連携を実現するクラウドアプリケーション『DocuWare』では、異なる帳票の自動分類不可、手書き文字認識不可、新フォームからデータを抽出するにはマニュアル学習の必要性があるといった課題があります。こうした課題を持つDocuWareとnatif.aiの高度なインテリジェントキャプチャー技術を連携することによって、自動抽出項目の拡大や精度、手書きを含めたさまざまな書類やレイアウトへの対応力を向上させられます」

会場ではデモも実施され、状態の悪い帳票でも正確にデータ抽出が可能なOCR性能や、非構造化文書をスキャンしデータの自動抽出とAI活用が行える例が紹介された。

非構造化文書からデータを自動抽出し
AIで活用可能なデータとして蓄積

 同記者会見では、natif.aiのインテリジェントキャプチャー技術を三つのデモを交えて紹介した。

 一つ目のデモでは、一般的なOCRが苦手としている状態の悪い帳票・手書きの帳票・複数ページのファイルのそれぞれの読み取りが行われた。状態の悪いしわくちゃの帳票に書かれた文字や手書き文字でも正確にデータ化できていた。また、内容を判別して文書ごとに分別してデータを読み取れるため、複数ページの文書を含む異なる文書が一つのファイルになっているPDFデータも読み取りに問題がないのだ。

 二つ目のデモでは、帳票・業務ごとに事前学習を行ったAIモデルを活用した伝票チェックの自動化が行われた。注文書・納品書・請求書・宅配伝票・カード申込書といった異なるタイプの帳票の一括スキャンを行ったところ、帳票のタイプを自動認識して、ワークフローを分岐した。注文書・納品書・請求書はDocuWare内の「取引書類」という保管先に格納され、各書類の明細データを正確に抽出し、自動で突合処理が行われた。一方、宅配伝票・カード申込書はDocuWare内の「その他」という保管先に格納された。経理担当者は手作業をほとんど行うことなく、業務を完了できるのだ。今回のデモでは帳票・業務ごとに事前学習を行ったAIモデルが使われたが、ゼロから学習できるAIモデルや、事前学習を行ったAIモデルに顧客の個別環境に合わせて追加学習を行い、精度を高めたAIモデルも用意されている。

 三つ目のデモでは、非構造化文書からのデータの自動抽出とAI活用が行われた。デモでは契約書から、契約書ナンバー、契約先、企業名、契約日といったAIでの活用に必要な情報が自動で抽出され、DocuWare内に蓄積された。DocuWare内にAIでの活用可能なデータとして蓄積されることで、類似文書の検索といったAIを活用した高度な仕事の効率化が可能となるのだ。こうした非構造化文書の情報をAI活用可能なデータとするために活用しているのが、リコーに在籍する300名のAI技術者と、1990年ごろからAI・人工知能・深層学習に投資・研究を行ってきたAIに対する豊富なノウハウを生かしたリコーのAI技術だ。

 最後に入佐氏は「natif.aiの買収によって、当社はインテリジェントキャプチャーの領域を強化しました。この買収によって、業務のタスクゼロを実現できる世界がすぐそこまで来ています」と力強く語った。