グループウェアの概念はコンピュータの黎明期から存在し、ネットワークの普及とパソコンが一般化した1990年代にはビジネスの現場で注目を集めた。そして2000年代に入るとクラウド型が登場し、導入もしやすくコストも抑えられることから様々な企業が利用するようになった。

国内外のベンダーが様々なグループウェアを提供しており、どうしてもビッグテックが手掛けるソリューションに目が行きがちだが、日本の企業風土にあったものとなると、純国産グループウェアのほうが使い勝手がよいことが多い。

ネオジャパンは1999年に国内初となる携帯電話対応グループウェア「iOffice」の販売を開始。2001年よりiOfficeの後継として中小・大企業向け「desknet's」を販売開始し、その後、よりインターフェースの改善と大規模環境にも対応できるよう機能強化された「desknet's NEO」が2012年にリリースされ今に至っており、20年以上も続く老舗グループウェアの1つだ。

そんな「desknet's NEO」の最新バージョン9.0が登場。今回は取締役の早馬一郎氏に長く愛され続けている秘密について伺った。

ノーコードツール搭載で毎年ユーザー数を伸ばす

早馬一郎氏
取締役であり営業事業部 クラウド営業部長 兼 カスタマーサクセス部長の早馬一郎氏

「desknet's NEOはグループウェアとして、標準で様々な機能を提供し、誰もが広く利用できるソリューションとして活用していただいています。2017年に『AppSuite』というノーコード業務アプリ作成ツールをオプションで追加し、標準の機能では補えなかったお客さま独自の業務用ツールを開発できるようにしたところ、毎年前年を大幅に超える問い合わせをいただくようになりました」と語る早馬氏。

ネオジャパンは、1992年に設立したビジネスユーザー向けの業務ツールを自社で開発している企業で、主力製品となる「desknet's NEO」は、前述の通りすでに20年以上の長きにわたって提供し続けている老舗グループウェアだ。

「リアルなITコミュニケーションで豊かな社会形成に貢献」という企業理念のもと、誰でもわかりやすい画面と操作性を売りに、スケジュールの管理・共有から、社内ポータル、ワークフロー、掲示板、日報、安否確認まで、企業の情報共有基盤として、業務改善と働き方改革に役立つ様々な機能を提供している。

「グループウェアには標準の機能がたくさんありますが、それはある特定のお客さまだけに特化したものではなくて、広く使っていただける機能になっています。そうすると、お客さまによってはちょっと合わないケースもあり、運用を変えていただくか、必要に応じて個別カスタマイズを承ってきました。しかし、最近はお客さまの要望やニーズが多様化しており、要求も細かくなってきたため、その解決策の1つとして、『AppSuite』というノーコード業務アプリ作成ツールをオプションで提供するようになりました」

「AppSuite」の概要
「AppSuite」の概要

社内の開発部門では、今も受託開発と標準機能の製品提供という両輪で事業を展開しています。そこに、コストを大幅に抑えながら顧客の個別ニーズに対応できるノーコードツールという新たなオプションを加えることで、これまでカスタマイズ費用や開発期間を懸念して導入に躊躇していた企業が、自社の課題解決に合致したツール利用を検討し始めています。

「実はこれまでクラウド版の導入ユーザー数の平均が70~80ユーザーだったのですが、「AppSuite」を組み合わせてご検討いただくと、一気に平均が150ユーザーぐらいに規模が跳ね上がっています。企業規模が大きいと要求が細かくなりますが、それに応えられてきた表れなのかと思っています」

売上もユーザー数も右肩上がりで伸び続けており、累計520万ユーザーの利用実績を持つ「desknet's NEO」。最近は「AppSuite」と一緒に新規導入するケースが非常に増えてきており、競合他社との差別化にもつながっているという。

グループウェアの市場は、成長率でいうとほぼ横ばいで推移しているが、市場規模は大きい。ただ、ノーコードツールに関しては、市場規模はまだ小さいものの、成長率は毎年10~20%程度で伸びているという。そのため、すでにグループウェアを導入している企業の採用も多く、リプレース市場と捉えており、他社との差別化は乗り換え需要のキーポイントとなる。

それに加えて純国産ということで、日本企業風土に合った機能を備えており、検討の際の強みの1つとして考えている。

「競合としてもMicrosoftやGoogleのような巨大企業が存在するということは認識しております。しかし、弊社製品は日本企業のニーズに合致した機能も数多く備えており、両者の製品を併用利用していただくことで、それぞれの利点を最大限に活用できると推奨しています。特にMicrosoft 365とはスケジュールの双方向連携やシングルサインオンに対応といった仕組みを備えているので、両製品を組み合わせても違和感なくお使いいただけると思います」

Microsoft 365との連携のほか、他社製SAML認証製品・サービスとの同時利用における動作確認済み
Microsoft 365との連携のほか、他社製SAML認証製品・サービスとの同時利用における動作についても確認済みである

例えば、スケジュールや会議室の予約、ユーザーの組織管理などは、海外のツールだと日本特有の組織で業務をするという点が考えられていないケースが多い。スケジュールでも自分の部署のメンバーの予定を簡単に見たり、会議室の空き状況を確認したり簡単にアクセス権を設定できたりといった、日本のビジネスのやり方に近いものを、「desknet's NEO」では提供している。

サポート体制の充実も「desknet's NEO」が支持されている理由

「desknet's NEO」が多くの企業で導入されている理由は、機能の差別化だけではない。カスタマーサクセス部による活動によって、顧客との信頼を獲得し、新規導入のきっかけになっているという。

「導入後に90日間のオンボーディング(順応や促進の取り組み)を行っています。最初にお客さまが導入した目的を伺い、その目的を達成するまで専任の担当者が1人ついて支援します。例えば、申請業務を紙から電子化することが目的なら、その書式を作って、実際に運用が回るところまで、お客さまと画面を共有しながら支援させていただいています」

このオンボーディングは無償で行われるため、誰もが受けられるサービスだ。こうした取り組みを取り入れた結果、使いこなせずに解約されるケースがグッと減り、顧客も安心して採用するに至っている。90日間という期間を設定しているが、実際にはそれほど時間がかからずに目的は達成されているという。

その後も、メールでのサポートやバージョンアップのたびに説明会をオンラインで実施するだけでなく、個別相談会も無料で行っており、オンボーディング期間が過ぎても運用で悩んでいるところがあれば、担当者と1時間弱の相談を受けられるシステムも用意されている。

また、機能改善などの顧客要望も随時受け付けており、バージョンアップ時に採用された機能については、個別に電話連絡をしてフィードバックも行うという徹底ぶり。こうして様々な機会で顧客との接点を持つことで、信頼度を上げる努力をしている。

「実際、使い始めると様々な機能がマニュアルをそれほど見ずとも簡単に使いこすお客さまがほとんどです。ユーザーファーストで誰もが使いやすく使いこなせるよう設計していますので、ITリテラシーがそんなに高くない人でも利用できるのが特徴です。一応、製品を使いこなしていただけるよう管理者向けと利用者向けの教育サービスを用意していますがほとんど使われていません。それぐらい、導入して誰もが使いこなせるものだと考えています」

自治体や官公庁における豊富な導入実績があり、IT企業以外の職員の方々でも戸惑うことなく業務に活用されており、運用工数の削減にも貢献。「AppSuite」の活用により庁内業務連携の迅速化を実現したと評価されているという。

「desknet's NEO」を導入している企業・団体例
「desknet's NEO」を導入している企業や団体の一例。導入事例も多数サイトに掲載されているので、参考にしてほしい

新バージョンでファイル転送機能を追加

今回のバージョンアップは、基本的に顧客の要望を踏まえた機能改善が中心で新機能はファイル転送機能となる。

「かねてからお客さまの要望に上がっていたファイル転送機能を今回搭載しました。取引先とのファイルの受け渡しにおいて、一般のファイル共有サービスを活用していると、会社側としては、どんなファイルをどこへ送っているのか把握できません。最近話題のPPAP問題もあり、今回のファイル転送機能により管理者がきちんと把握できるようになっています」

ファイル転送機能の概要
新たに搭載されたファイル転送機能の概要

また、「desknet's NEO」にはクラウド版のほかオンプレミスで利用するためのパッケージ版も用意されている。中小企業の多くがクラウド版を利用しているが、まだまだ規模の大きな企業ではパッケージ版を利用しており、クラウドへの移行を促進するため、これまでどちらも同等の機能を提供してきたものを差別化し、クラウド版をより導入しやすい環境を整備するべく、新たな取り組みに挑戦している。

「弊社には創業以来、新しいものにいち早くチャレンジするという会社の風土があり、その精神は、iモード対応版の早期開発や、安否確認機能の迅速な搭載などに表れています。最近では生成AIの活用が注目されていますが、現状ではビジネスチャット「ChatLuck」からChatGPTを起動できるという簡易連携に留まっています。今後の展開としましては、2024年12月に業務提携いたしましたneoAI社との連携を通じて、お客さまにとってどのような機能を提供すると活用が促進されるかを模索している段階です」

実は、生成AIはノーコードによる開発の手助けになると考えている。ノーコードとは言え、多少の知識は必要で、開発するのにもそれなりに時間を取られる。

「生成AIに『AppSuite』のテクニック情報を溜め込んでいくことで、アプリ作成のハードルを下げられます。すでに社内の実践では、『AppSuite』の関数を使って、自分がほしい情報を抽出したいとき、どうすれば結果を出せるかを生成AIが導いてくれるところまできています。こうしたノーコードに限らず、自分がやりたいことをグループウェアの中に蓄積された情報に対して指示すれば、応答が返ってくる仕組みは早いうちに実現可能だと考えています」

ノーコード関連では、ネオジャパン主催の「AppSuite AWARD」を開催している。これは、ノーコード業務アプリ作成ツール「AppSuite」を活用してお客様の業務にどのように貢献できたか、作成されたアプリを応募いただき、その成果を評価し表彰するアワードだ。

「ノーコードツールを使って業務アプリを開発するのはパワーがいるため、作成した担当者をねぎらってあげたいっていうのが元々の趣旨で、開催を企画しました。我々から表彰すれば、お客さまの社内評価も日の目を見るのではないかと。ただ、それだけでなく、ノーコードによるアプリを開発したことで、直接的なコストや間接コストを含めて業務時間が何パーセント削減できたという声が多数寄せられており、そういった声とともに「AppSuite」を使えば業務の一部を置き換えられるというメリットを多くの方に伝えられる機会にもなったと感じています」

最後に今後どのようなグループウェアにしていきたいのか伺った。

「情報技術が益々進化していく中、それらをいち早く取り入れてお客さまが使いやすく安全な形で提供することを今後も挑戦し続けていきます。開発チームはすべて内製で行っており、新しいものを開発するチームと既存の製品に反映するチーム連携を取りながら開発サイクルを回しています。今後のdesknet's NEOの展開に期待してください」と早馬氏は語った。

関連サイト

desknet's NEO

業務の入り口となるポータルや、社内掲示板、回覧、スケジュール、申請管理、文書管理など、情報共有に必要な機能を網羅しており、企業・組織内のあらゆる情報を集約した、全社共通の情報共有基盤を作るグループウェア。日本の企業向け設計で誰もが使いやすく、利用者・管理者の負担を軽減し、ノーコード業務アプリ作成ツールによるカスタマイズもオプションで対応。

iKAZUCHI(雷)


「iKAZUCHI(雷)/いかづち」はサブスクリプション管理ポータルです。DISの販売パートナーは、「iKAZUCHI(雷)」をご利用いただくことで、多様化するサブスクリプション型のクラウドサービスの注文工数が削減され、月額や年額の継続型ストックビジネスの契約やご契約者様の一元管理が可能になります。