マイナンバーカードを健康保険証として利用する「マイナ保険証」など、徐々に生活に浸透しつつあるマイナンバーカード。すでにAndroidスマートフォンでは、マイナンバーカードの機能がスマートフォンで利用できるようになっていたり、デジタル庁から「デジタル認証アプリ」のリリースが予定されていたりするなど、マイナンバーカードの社会インフラ化に向けた動きが進んでいる。2024年度末には運転免許証との一体化もスタートする予定だ。そのマイナンバーカードを活用した本人確認は、現時点では自治体の利用が主だが、金融機関をはじめとした民間事業者にも広がりつつあるのだ。マイナンバーカード活用の現在と、これからの可能性について紹介していこう。

デジタル庁
行政機関から民間事業者まで活用進む
マイナンバーカードによる本人確認技術とは

Society 5.0時代の本人確認ツールとして政府が普及を進めているマイナンバーカード。2024年3月末時点でのマイナンバーカード保有数は9,216万枚。身分証明書として良く利用されている運転免許の保有者数は2022年12月末時点で約8,184万人(枚)であり、マイナンバーカードはそれを上回る保有者数と言える。健康保険証としてマイナンバーカードを利用する「マイナ保険証」をはじめ、利用用途が拡大するマイナンバーカードの今とこれからについて、デジタル庁に聞いた。

公的個人認証サービスで
オンライン上の本人確認を効率化

デジタル庁
上仮屋尚

 マイナンバーが記載された顔写真付きのマイナンバーカードは、対面での本人確認のほか、オンライン上で安全かつ確実に本人を証明するための電子的な本人確認ができるツールだ。

 マイナンバーカードのICチップは、電子証明書、空き領域、その他(券面情報など)で構成される。電子証明書はe-Taxの確定申告など、文書を伴う電子申請などに利用される「署名用電子証明書」と、マイナポータルのログインなど、本人であることへの認証手段として利用される「利用者証明用電子証明書」に分かれている。

 空き領域には、例えばオフィスへの入館証などの機能をカードアプリケーションとしてマイナンバーカードに搭載できる。電子証明書も含め、行政機関のほか内閣総理大臣および総務大臣が認める民間事業者が活用できるようになっている。

デジタル庁
青木若菜

 マイナンバーカードを活用した本人認証のメリットについて、デジタル庁 国民向けサービスグループ 参事官 上仮屋尚氏は「例えば、金融機関などの口座を開設する場合、従来であれば対面による本人確認もしくは本人確認書類の写しを郵送して提出する必要がありました。しかし、マイナンバーカードを利用すれば、カードをリーダーにかざしてオンライン上で本人確認が行えるため、従来のような郵送コストやタイムロスがなくなります」と語る。

 このオンライン上の本人確認を実現しているのが「公的個人認証サービス」(JPKI)だ。従来行われてきた郵送による本人確認のほか、運転免許証と本人の顔写真を撮影して本人確認を行ういわゆる「自撮り方式」と比較しても、入力内容した本人確認書類の真贋をチェックする事務作業が削減され、活用効果が大きい。

オンライン上で行政手続きを完結
市町村で進むカード活用事例

 こうしたマイナンバーカードの機能を活用した取り組みが、行政や民間で広がっている。特に活用が進んでいるのが行政だろう。デジタル庁では、マイナンバーカードの行政利用シーンについて、二つの構想を掲げている。

 一つ目は「オンライン市役所サービス」構想だ。マイナンバーカードを基盤とすることで、さまざまな手続きがスマホでスピーディにできたり、住所地の自治体から本人に必要な情報が通知されたりするような仕組みだ。例えば2023年2月から全ての市区町村でスタートした「引越し手続オンラインサービス」は、引っ越し時の転出届をマイナポータルから転出先の市区町村へオンラインで提出できるサービスだ。転入手続きのために役所へ来庁する手間を削減でき、住民の利便性が向上できるだけでなく、事務処理をデジタル化することにより、市区町村側の事務効率化につながる。2023年2月6日から2024年1月31日の期間で、約59万件の申請実績がある。また子育て・介護など31手続きのオンライン化に向けた取り組みや、マイナンバー制度を活用した各種免許や国家資格などのオンライン・デジタル化によって、マイナポータル経由で国家資格の開示や資格登録申請などが行えるようになる予定だ。

 二つ目は「市民カード化」構想。例えばマイナンバーカードの電子証明書を活用して、図書館カードや診察券として使えるようにしたり、マイナンバーカードのカードアプリ(空き領域)を利用して避難所で避難者の把握や安否確認を行ったりするような活用だ。「特に図書館カードでの利用については、多くの自治体で導入されている図書館パッケージソフトがマイナンバーカードに対応していますので、先進自治体の例を参考に多くの自治体で横展開可能な例と言えるでしょう」とデジタル庁 国民向けサービスグループ 主査の青木若菜氏は指摘する。

金融機関からエンタメまで
広がる本人確認の需要

 民間サービスでの利用も広がりつつある。代表的と言えるのが証券会社や銀行、生命保険契約などのオンライン取引だ。口座開設時の本人確認など、約543の民間事業者が利用しているという。上仮屋氏は「ある証券会社では、オンラインでの証券口座開設にマイナンバーカードによるJPKIを活用した本人確認を導入したことで、本人確認にかかっていたコストが約6分の1(外注費用)に減少したそうです。そのほか銀行や資金決済行でも約3分の1に減少するなど事務負担が軽減されたほか、本人確認に要する時間も大きく短縮されたそうです」と語る。

 またエンタメ分野での活用に向けた実証実験にも取り組んでいる。イベント時の酒類提供のための年齢確認をマイナンバーカードで行うほか、チケットの不正転売を防止するためチケット購入時および会場入場時にマイナンバーカードで本人確認をして、エンタメ分野での本人確認需要や効果を検証している。「民間事業者がマイナンバーカードを利用しやすくなるよう、JPKIの電子証明書手数料を、当面3年間無料にするなどして、利用コストやハードルを引き下げるといった取り組みも実施しています。また、デジタル庁では民間事業者のマイナンバーカード利用を促進するため、『デジタル認証アプリ』の開発を進めています。これはマイナンバーカードの電子証明書読み取り機能を共通アプリ化し、組み込みやすいAPIを提供することで、マイナンバーカードによる利用者証明の活用を促進するものです。マイナンバーカードの民間利用をより拡大させていきます」と上仮屋氏。

 マイナンバーカードの本人確認(電子証明書)の機能は、今後スマートフォンに搭載できるよう取り組みを進めており、現在Androidスマートフォン向けにマイナンバーカードと同等の機能を持ったアプリケーションを提供している。また「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(2023年6月9日閣議決定)には非対面の本人確認の手法は原則JPKIに一本化することが盛り込まれており、十分な準備期間を設けた上で2025年度からの施行を予定している。「スマートフォンへのマイナンバーカード搭載は民間からの期待も大きく、今後iPhoneへの搭載実現を目指していきます。マイナンバーカードの活用に対して不安を抱く人もいますが、安全性を含め仕組みを丁寧に説明し、国民の理解を得ながら、利用拡大を目指していきます」と青木氏は展望を語った。

NTTデータ
公的個人認証サービスを活用したBizPICOで
信頼性の高い本人確認と業務効率化をサポート

マイナンバーカードのICチップに搭載された電子証明書を利用し、オンラインで利用者本人の認証などを行う「公的個人認証サービス」(JPKI)は、安全・確実な本人確認を行えるため、顧客サービス向上や事務コスト削減などの効果が期待されている。そのJPKIを活用した本人確認ソリューションとして、NTTデータが提供しているのが「BizPICO」だ。

多様な事業者への利用を促す
本人確認プラットフォーム

 JPKIを利用するためには、電子証明書の受け付けや有効性を確認するためのシステムが必要だ。しかし、こうしたシステムを各民間事業者が個別に整備・運用することは現実的ではない。そこで特定事業者がこのシステムを整備し、システムのセキュリティなど一定の基準を満たす者として総務大臣の認定を受けたプラットフォームを提供している。各民間事業者はそのプラットフォームを利用することで、マイナンバーカードを活用した本人確認が可能になる。この仕組みを提供する企業は「プラットフォーム事業者」と呼ばれており、NTTデータはその企業の一つだ。同社は、2015年12月からJPKIを活用した本人確認ソリューション事業を、2016年7月からBizPICOの本格提供をスタートしている。

 本人確認を必要とする事業者は、主に「契約手続き等における本人確認」と「契約時の証跡確認・契約者情報の有効性確認」の二つを求めている。BizPICOは、マイナンバーカードに格納されている公的個人認証アプリケーションを利用して、前述の本人確認ニーズに応える四つの機能をクラウドサービスで提供する。

 一つ目が本人確認機能だ。マイナンバーカードに含まれる署名用電子証明書を利用し、対面・非対面を問わずオンラインでの確実な本人認証を実現する。例えば決済サービスに登録する場合に、この本人確認機能を活用することで、マイナンバーカードをかざせば利用者本人の銀行口座への認証が行える。公的個人認証アプリケーションを利用した本人確認、犯罪収益移転防止法、携帯電話不正利用防止法といった法令でも認められている手段だ。

 二つ目が利用者認証機能だ。マイナンバーカード内の利用者証明電子証明書を利用することで、利用者本人であることを証明する。例えばケーブルテレビのSTBの外付けリーダーからマイナンバーカードを読み取り、ケーブルテレビプラットフォームを通じて利用者の認証を行うことで、テレビ画面でヘルスケア情報を閲覧したり、自治体の施設予約を可能にしたりするサービスが受けられる。

基本4情報の取得によって
住所の移動にも対応する

 三つ目が証跡データ保管機能だ。本人確認を行った結果を、証跡として安全に保管する。この証跡はいつでも参照可能だ。

 四つ目が証明書失効通知管理機能だ。保管している署名用電子署名、利用者証明用電子署名について、JPKIに失効の有無を問い合わせて、その有効性が認められない場合には通知を行う。

 NTTデータ 第三公共事業本部 デジタルソサエティ事業部 営業統括部 営業企画担当 課長 伊東 敦氏は「2023年5月に、この証明書失効通知に関する機能追加がありました。電子証明書失効確認時に、本人同意を前提に氏名、生年月日、性別および住所といった最新の基本4情報を取得することが可能となり、BizPICOでも2023年10月からこれに対応しています。本機能の追加によって、サービス提供者は、利用者の基本4情報に変更が生じた場合、本人から変更の届け出なしに利用者情報を最新化できます」と語る。

 例えば引っ越しなどで住所の移動があった場合、利用者側で変更をしなければ郵便物は以前の住所に届いてしまう。しかし、事業者側で最新の基本4情報が取得できるようになれば、住所変更があった場合でも認証局(地方公共団体情報システム機構)から最新の基本4情報を取得することで、新しい住所へ郵便物を届けることができるのだ。

 上記のような機能により、安心かつ安全な本人確認、利用者認証が行えるBizPICOは、多くの自治体や民間事業者で活用が進んでいる。例えば、地域の活性化のため、自治体や商工会などが「プレミアム付商品券」を発行しているケースは多い。その商品券を電子化するサービスを提供しているのが、まちのわという企業だ。まちのわは、利用者が専用アプリでプレミアム付き電子商品券を購入する際に、基本4情報を用いた申請者の居住地確認や、マイナンバーカード所持確認を、BizPICOによる本人確認で行っている。

 民間事業者では、マイナンバーカードに特化したデジタルIDアプリ「xID」でBizPICOが活用されている。xIDは、JPKIを用いてマイナンバーカードと連携した独自のIDを生成することで、デジタル身分証が作成できる。「xIDをデジタル身分証として使えるようになると、本人確認のためマイナンバーカードや運転免許証を使用しなくても、スマートフォン上で本人確認を完結できます。またxIDをサポートしている金融機関のサービスなどは、パスワードレスでログインできるようになります」とNTTデータ 第三公共事業本部 デジタルソサエティ事業部 営業統括部 営業企画担当 主任 津曲香星氏は語る。デジタル時代の身分証、鍵、はんこがオールインワンになったアプリとして、今注目を集めているのだ。

NTTデータ
伊東 敦
NTTデータ
津曲香星

BizPICOとアプリの組み合わせで
事業者の参入ハードルを下げる

 NTTデータは民間事業者向けスマートフォンアプリとして「マイナpocket」も提供している。BizPICOと機能連携を行っているマイナpocketは、マイナンバーカード読み取りに使えるアプリで、金融機関の口座開設や保険関連の各種手続きなどに活用できる。

 津曲氏は「今、業界全体の課題となっているのが、マイナンバーカードの読み取りがWebブラウザーからできないという点です。そのため専用のアプリが必要になりますが、現在そうしたアプリを持っていない事業者が新しく作るとなるとコストがかかります。そうした導入ハードルを下げ、多くの民間事業者でマイナンバーカードによる本人確認を行えるようにするためにマイナpocketも併せて提供しています」と話す。

 伊東氏は「昨年11月から、マイナポータルの『引越し手続オンラインサービス』とAPI連携し、引っ越しに伴う行政手続きや、電気・ガスなどの民間事業者の手続きをまとめてオンラインで実施できる引っ越しワンストップサービス『BizMINT 引越』も提供しています。このような形で、官民が連携しながらマイナンバーカードの本人確認サービスによって世の中を便利にしていきたいですね」と展望を語ってくれた。

東京ガールズコレクション
チケットの高額不正転売を防止する
マイナンバーカードの活用事例

マイナンバーカードを活用した本人確認は、現在主に市町村などの自治体が活用している。民間事業者も金融機関での活用が多い。一方で今後活用の広がりが見込まれているのが、エンタメ領域だ。デジタル庁はエンタメ領域におけるマイナンバーカードの利用シーン拡大に向けて、関係団体と連携して実証実験に取り組んでいる。その中でもライブエンタメ業界の喫緊の課題として存在するチケットの不正転売に対して、マイナンバーカードを活用した実証実験事例が存在する。本実証実験が実施されたイベントについて紹介していこう。

チケットの高額転売を
主催者側がどう防止する?

「日本のガールズカルチャーを世界へ」をテーマにした「東京ガールズコレクション」(TGC)。2005年8月から年2回開催しており、来年20周年を迎える本イベントは、モデルやタレント、インフルエンサー、芸人、クリエイターなどの出演者が一堂に会するファッションイベントであり、ファッションショーという枠組みを超えて、コンテンツ開発やブランディングのラボラトリー機能を担うブランディングプラットフォームへと発展している。

 2013年からはリアル開催に加えてオンライン配信も断続的に実施しており、リアルとオンラインを通じた総体感人数は1開催につき400万人以上という。そうしたノウハウを生かし、コロナ禍ではいち早く無観客ライブ配信を行ったり、AIモデルを起用して身長別のコーディネイト提案を行ったりするなど、先端テクノロジーも積極的に取り入れている。またTGCの発信力を生かし、国際連合や政府、官公庁と連携してSDGs推進や地方創生なども取り組んでいる。

 一方で課題も抱えていた。チケットの不正転売だ。東京ガールズコレクション実行委員会であるW TOKYOの執行役員 プロデュース事業局 局長 東京ガールズコレクション実行委員会 チーフプロデューサーを勤める池田友紀子氏は、これまで抱えていたチケットの不正転売に対する課題を次のように語る。

「もともと多くのお客さまに注目されるイベントではありましたが、特にコロナ禍を経てリアルイベントが復活するようになったタイミングから、一気にライブエンターテインメント市場へのモチベーションが高まり、チケットの販売スピードが非常に速くなりました。それに伴って目立つようになったのが、SNSなどにおけるチケットの高額な不正転売です」

 TGCでは、そうしたチケットの不正転売を防止するため1〜2年前から1人当たりのチケットの購入上限を4枚から2枚へ変更したり、公式のリセールサイトでチケットの取引をしてもらったりするなど、対策を行っていた。池田氏は「とりわけSNS上で取引されることが多いのは、ランウェイ周りの前方の席のチケットです。それを防ぐため、前方エリアのチケットを持つお客さまには専用のリストバンドを事前に巻いてもらい、会場での席の時間貸しを防止するといったことも行いました。また今年から、会場内にQRコードを設置し、お客さま同士で座席を交換していたり、盗難が発生したりする場合は、そのQRコードのフォームからスタッフに通報できる仕組みを導入しています」と語る。

チケットの大量購入を
マイナンバーカードで防ぐ

W TOKYO
池田友紀子

 そうした取り組みの一つとして、TGCではマイナンバーカードを活用した不正転売防止を目的とした実証実験をデジタル庁と共に取り組んだ。デジタル庁が実施するエンタメ領域におけるマイナンバーカードの活用可能性を検証する実証だ。対象となったのは、2024年3月2日に国立代々木競技場第一体育館で実施された「第38回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2024 SPRING/SUMMER」のチケット販売だ。

 実証実験では2024年1月12日から、一般販売に先駆けてマイナンバーカードで本人確認を実施する先行抽選販売を行った。実証実験発表段階で、すでにTGC Premium会員先行などのチケット販売は終了しており、マイナンバーカード先行は数あるチケット先行販売の一つとして実施された。マイナンバーカード先行では、チケットの購入時にマイナンバーカードによる本人認証を行い、会場ではマイナンバーカード先行の専用レーンを設け、そこで本人確認を行った。専用レーンではチケットの購入画面に表示された購入者の氏名と、マイナンバーカード券面の氏名、そして顔写真を目視で確認した。マイナンバーカードで本人確認を行うことにより、複数アカウントによる大量購入や、高額での不正転売防止につながる可能性などを検証する。

「マイナンバーカードによる本人確認を行うことで、主催者側としても安心感がありました。チケットの高額な不正転売はTGCだけでなく、ライブエンタメ業界全体で問題になっており、このような確実性の高い本人確認が行えることは非常にメリットが大きいです。一方で、今回は実証実験で購入者数が限られていることもあり、入場時の本人確認は目視で行いましたが、この対象人数が拡大すると目視での確認は負担が大きくなるでしょう。今後マイナバーカードの機能がスマートフォンに搭載されるという話も聞いていますので、そのスマートフォンをかざしたら照合が完了するくらい簡単になるとうれしいですね」と池田氏。

©マイナビ TOKYO GIRLS COLLECTION 2024 SPRING/SUMME
第38回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2024 SPRING/SUMMERの受付では、マイナンバー先行でチケットを購入した参加者用の「マイナンバー認証者専用レーン」が用意され、マイナンバーカードによる本人確認が実施された。今回は購入枚数が多くなかったこともあり全て目視での確認だったという。

不正転売を防止する手段として
マイナンバーカードの認証が有効に?

 マイナンバーカードによる本人確認の安心感は、チケットの購入者側も得られたようだ。マイナンバーカードを所有している人のみが購入できる枠があることに対する不満の声も一部存在したようだが、多くは「不正転売への対策に取り組むことで安心感がある」といったポジティブな意見が占められた。購入者側も不正転売によって、チケットの入手が困難になっていることが背景にあるといえる。

「ニュースなどを見ていると、人気のライブチケットを高額転売で購入したけれど、実際はチケットがないといった詐欺被害にあったケースもあるようです。イベントを楽しみにしている方々の手に、正規の価格できちんとチケットが行き渡る仕組みが求められており、その手段の一つとして今回のマイナンバーカードの活用は効果的でした。今回は実証実験ということで、限られた枚数での販売となりましたが、今後マイナンバーカードを活用したチケット販売がライブエンタメ業界のチケット購入における選択肢の一つとして普及することは、お客さま自身はもちろん、私ども主催者も非常にポジティブに受け止めています。今後、実用化が進んでいく中で、チケットの販売サイト(プラットフォーム)がマイナンバーカードの本人認証に対応してくれるようになれば、ライブエンタメの主催者側もマイナンバーカードを活用しやすくなるでしょう。マイナンバーカードの認証を付ける、付けないといった選択肢も選べると良いですね」と池田氏。

 東京ガールズコレクションでは今後も、来場者が楽しめるコンテンツ作りを進めると同時に、不正転売防止に向けた取り組みを進めていく。