Citrix Platformで一貫したIT管理を実現
Google・NVIDIAとの連携で生成AI活用を支援

6月10日、シトリックス・システムズ・ジャパンは次世代エンタープライズ向けプラットフォーム「Citrix Platform」の国内初公開と、Google・NVIDIAとの戦略的提携について紹介する記者発表会を行った。シトリックス・システムズ・ジャパンはどのようなプラットフォーム戦略の上でCitrix Platformを展開するのか、Google・NVIDIAとの提携で生まれたメリットは何か、その詳細をレポートしていこう。

複雑なIT環境を改善するシトリックスの戦略

シトリックス・システムズ・ジャパンは6月10日に、同社のプラットフォーム戦略やGoogle・NVIDIAとの戦略的提携を説明する記者発表会を開催した。記事ではCitrix Platformの特長と共に、AI活用が活発化する時代での最新戦略を紹介していく。

VDIという強固な基盤の上で
プラットフォーム戦略を推進

デン・サリバン
シトリックス・システムズ 副社長 デン・サリバン氏はドバイからオンラインで参加。シトリックスのミッションや戦略についてを語った。

 会見の冒頭ではシトリックス・システムズ 副社長 デン・サリバン氏が、シトリックスの事業について「シトリックスの35年ほどの歴史の中で、常に活動の中核にあったのがVDIです。VDIは当社が新たな事業領域を展開する際や、お客さまやパートナーの皆さまにサービスを提供する際の大きな強みになっています。当社のプラットフォーム戦略は、VDIという強固な基盤の上に構築されています」と強みを語る。

 シトリックスは現在、主に二つのサブスクリプションモデルを展開している。一つ目が、従来のユースケースを最大限に活用する「Citrix Universal Hybrid Multi-Cloud」だ。オンプレミスとクラウドが混在する環境においても、柔軟でセキュアな運用を実現する基本構成となっている。仮想デスクトップ、仮想アプリケーション、ハイパーバイザー、ネットスケーラー、セキュアで高速なアプリケーションとデータアクセスを提供する「Citrix NetScaler」、リアルタイムセキュリティ、VDIの分析基盤、モバイル管理、シンクライアントOSなどを提供し、必要な機能を網羅する。

 二つ目は、新しい領域に拡大しながら価値の最大化を図る「Citrix Platform License」だ。Citrix Universal Hybrid Multi-Cloudで提供するソリューションを全て含みつつ、あらゆる技術革新に制限なくアクセス可能な統合型のライセンスとなっている。ゼロトラスト、エンタープライズ特化型のブラウザー「Chrome Enterprise Premium」、クラウド開発環境などの機能を全て追加費用なしで使えるのだ。ユーザー数やユースケースの増加があった場合でも、ライセンスの買い足しは必要ない。「シンプルで付加価値の高いサブスクリプションパッケージを通じて、自由な柔軟性を実現しています。あらゆるアプリやデバイスをサポートし、必要に応じたスケーリングも可能です」(サリバン氏)

ユーザーのセキュアなアクセスと
IT管理の手間・コスト削減を実現

 続けてシトリックス・システムズ・ジャパン ジェネラルマネージャー 平井恵介氏は、シトリックスのプラットフォーム戦略を話すに当たって以下のように切り出す。「現在はオフィスに限らず、自宅や外出先でも仕事をすることが当たり前になっています。使用するデバイスも会社から支給するPCだけでなく、個人使用のタブレットやスマートフォンなど多様化しています。加えて使用するシステムも社内システムだけにとどまらず、クラウドやSaaSなどさまざまです。こうした変化に対応するために、IT環境はかつてないほど複雑になっています。その結果セキュリティリスクも急速に増大し、個々のソリューションを個別に運用管理し続けることは、IT部門にとって大きな負担になっています」

 こうした課題に対してシトリックスは、統合的な利用と管理を実現する「Citrix Platform」を提供する。「セキュリティ、オブザーバビリティ、ユーザーエクスペリエンスを一元的に支える基盤として提供するのが、Citrix Platformです。ユーザーは場所やデバイスを問わず、必要な業務リソースへセキュアかつ快適にアクセスできます。IT部門は、統合されたプラットフォームで一貫した管理、運用の効率化、セキュリティリスクの最小化、コスト削減を同時に実現可能です」(平井氏)

 平井氏はシトリックスのプラットフォーム戦略の柱として、従来のVDIの価値をさらに進化させる「Expanding the core」、クラウドPCに高い付加価値を提供する「Optimizing PCs in the cloud」、柔軟かつ安全なアクセス環境を実現する「Secure Access Transformation」を挙げる。これらを踏まえて平井氏は「当社はVDIの枠を越えて、業務に必要な全てのアクセスを安全に、そしてスマートに支えるプラットフォームとして進化を続けています」と強調する。

Citrix Platformの概要

ブラウザーセキュリティを強化し
最適なAI開発・利用環境を提供

 続いては、シトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 Lead Account Technical Strategist 武石隆治氏が登壇した。武石氏は、2025年3月18日(米国時間)にシトリックスがGoogleとの提携関係を強化し、Chrome Enterprise PremiumがCitrix Platform Licenseに包含されたことに触れる。「Chrome Enterprise PremiumとCitrix Platformの統合により、Citrix PlatformはVDI、ゼロトラストの概念に基づいたネットワークセキュリティ『Zero Trust Network Access』(ZTNA)、ブラウザーセキュリティを一貫して提供可能なプラットフォームになっています。SaaSや生成AIの普及によって、Webブラウザーは新しい業務の窓口として使われています。だからこそ当社は、Chrome Enterprise Premiumを単なるオプションではなく、次の現場のニーズに応える戦略的な中核として採用しました」(武石氏)

 次に登壇したシトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 統括本部長 竹内裕治氏は、AI戦略を加速するNVIDIAとのパートナーシップについてこう語る。「当社とNVIDIAは10年以上前からパートナーシップを結んでいます。今までは仮想GPUを使ったVDIの強化が協業の軸でしたが、これからはNVIDIAのGPU『NVIDIA RTX』のテクノロジーをサポートする『NVIDIA RTX 仮想ワークステーション』と、当社が提供するアプリ・デスクトップの仮想化サービス『Citrix DaaS』の併用を展開していきます。まずはワークスペースに展開するAIをターゲットに、AIアプリの開発、実証、ユーザー利用のために最適化された環境を、仮想化の仕組みの下で提供していきます」

 最後に登壇したシトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 Principal Account Technical Strategist 國分俊宏氏は、顧客への高度なサポートなどを行う「Citrix Unified Services」を紹介する。Citrix Unified Servicesは同社の製品を多く利用している顧客や、戦略的な用途で活用する顧客に向けて、招待制で提供される無償サービスだ。同社製品の問題を優先的かつ迅速に解決する「Mission Critical Support」、インフラや戦略設計についての積極的なガイダンスなどを行う「専門家によるガイダンス」、技術支援を目的としたトレーニングや製品ロードマップの最新情報を提供する「Enablement&Readiness」といったサポートを実施する。

 國分氏は「Citrix Unified Servicesは、Citrix Platformでお客さまと一緒にいろいろなチャレンジをするための重要な取り組みです。当社の支援により、お客さまが成功することを目指して開始しました」と本サービスをアピールした。

シトリックス・システムズ・ジャパン
(左から)
シトリックス・システムズ・ジャパン ジェネラルマネージャー 平井恵介
シトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 統括本部長 竹内裕治
シトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 Principal Account Technical Strategist 國分俊宏
シトリックス・システムズ・ジャパン テクノロジー・ソリューション部 Lead Account Technical Strategist 武石隆治