製造業のエッジデバイスの管理の負担を軽減したい

製造業において、エッジコンピューティングによるデータ活用の需要が高まっている。エッジコンピューティングはデータの生成元であるエッジ側でデータを処理するもので、データの活用に即時性があり、通信料を削減するといった利点がある。こうした利点が評価され、近年エッジコンピューティング市場は拡大傾向にある。しかし、エッジコンピューティングは運用が複雑で課題が生じがちだ。そのため、エッジデバイス管理の負担を軽減する製品が求められている。

工場のIoT化が進む一方で管理も煩雑に

 近年、製造業においても活用が進むエッジコンピューティング。その利用シーンを見ていこう。例えば、工場においてはエッジデバイスの一つであるIoTの活用が広まっている。工場の生産設備・機器の保全やライン稼働監視などでの次世代型のメンテナンスとして、IoT・クラウド・AIなどを用いて収集したデータの活用が始まっているのだ。活用の背景として、近年の大型の製造装置・生産機械などの高額な設備にIoT機能が組み込まれていることがある。矢野経済研究所の調査によると、2022年度の工場デジタル化市場規模は前年度比101.7%の1兆7,040億円と好成長を見込んでいる。

 しかし、エッジコンピューティングには課題もある。一つ目が、エッジデバイス管理の煩雑さだ。工場のIoT化が進めば、PCやIoT機器などエッジデバイスの数と種類が増加する。当然だがエッジデバイスの数や種類が増えるほど、管理や保守に手間がかかる。二つ目は、IT専任者の不在だ。エッジデバイスを設置する工場などの現場に、IT専任者が常駐しているケースはまれだろう。三つ目は、セキュリティだ。セキュリティの設定がないリスクがあるエッジデバイス一つ一つに、サイバー攻撃を受ける可能性がある。

 これを踏まえ、エッジデバイス管理の負担を軽減するツールの提案を検討したい。

エッジデバイスをグループごとに管理

 それではエッジデバイスの管理の負担を軽減するエッジプラットフォームをチェックしていこう。

 工場には部門や業務目的が異なるエッジデバイスが設置されている。多様なエッジデバイスの管理のためには、エッジデバイスをグループ化して資産管理ができたら便利だ。自動収集したエッジデバイスの構成情報を基に、部門、業務目的などグループごとに資産を管理できるデバイス管理ソフトウェアがあると良いだろう。

 エッジコンピューティングは、エッジデバイスから収集したデータを処理するエッジサーバーを分散配置している。そのため、エッジコンピューティングのセキュリティを確保するには、ゼロトラストセキュリティに対応した製品がお薦めだ。アクセスに対して常に正当かを検証するゼロトラストセキュリティは、エッジサーバーを分散配置するエッジコンピューティングと相性が良いのだ。

 エッジプラットフォーム上で動作するアプリを用いて、収集したデータを活用できたら効率的だ。エッジプラットフォーム上で動作するAIがネットワークカメラの収集した映像を分析することで、作業員のヘルメット未着用といった異常を検知できる。

 今回はNEC、デル・テクノロジーズ、NTTコミュニケーションズに製品を提案してもらった。

エージェントレスで構成情報を収集

CONNEXIVE Edge Device Management

NEC
115万5,000円(管理エッジデバイス台数:100台)

 管理項目を手動で追加登録可能なエッジデバイス管理ソフトウェア「CONNEXIVE Edge Device Management」を提案する。

 CONNEXIVE Edge Device Managementは管理対象となるエッジデバイスのハードウェアやソフトウェアの構成情報を包括的に管理する。エッジデバイスのハードウェアやソフトウェアの構成情報の収集はエージェントレスで可能なため、エッジデバイスにソフトウェアを新規に導入する手間だけでなく、エッジデバイスの構成情報の収集にかかる導入コストを減らせる。さらに構成情報を自動収集することで、現在の資産情報を正確に把握。設置場所や部門、業務目的などグループごとに資産を管理でき、予備設備の効率的な管理や調達計画立案を支援する。

 CONNEXIVE Edge Device Managementはオンプレミス上に構築して利用するパッケージ版と、クラウド上に構築されたサービスを利用するSaaS版の二つの形態で提供している。インターネット接続によるセキュリティリスクを抑えたい場合にはパッケージ版を、製造現場でシステムの管理を行える専任のシステム管理者が不在の場合にはSaaS版を用いるなど、環境に合わせた使い分けが可能だ。

 セキュリティの脆弱性対応を行いたいときにもCONNEXIVE Edge Device Managementが便利だ。リモートでのパッチ適用やソフトウェアアップデートはもちろん、ソフトウェアコンポーネントやそれらの依存関係、ライセンスといった構成情報を一覧化した「SBOM」(Software Bill of Materials)を参照することで、より細かい単位で脆弱性を把握しセキュリティリスクを軽減できる。

 CONNEXIVE Edge Device Managementは、要件に合わせた柔軟なエッジデバイス管理とエッジデバイスのメンテナンスの効率化を実現するエッジデバイス管理ソフトウェアだ。

ゼロトラストセキュリティでデバイスを保護

Dell NativeEdge

デル・テクノロジーズ
個別見積

 シンプルなコンソールで大規模なエッジ環境でも集中管理が可能なエッジプラットフォームソフトウェア「Dell NativeEdge」を紹介する。

 Dell NativeEdgeは、現地に専任のIT管理者が不在でもエッジ環境の構築から展開まで可能な「ゼロタッチ」でエッジデバイスの現場への導入を実現する。Dell NativeEdgeと、同社が提供するゲートウェイ「Dell Edge Gateway」や「Dell PowerEdgeサーバー」といったNativeEdge対応デバイスの電源を入れ、ネットワークに接続するだけでエッジ環境を構築できるようになるのだ。さらに、従来利用していたアプリケーションやコンテナをブループリントとして作成、配布するソフトウェア「NativeEdge Orchestrator」によって、各エッジデバイスに自動配布できる。これらによって、エッジデバイスが設置される現地にIT専任者が不在でも、エッジ環境の構築から運用までを完了可能だ。

 エッジデバイスが多数導入されている場所として、工場が挙げられる。工場にはPCやIoT機器など多種多様なデバイスが配置されている一方で、セキュリティの設定がないデバイスや、セキュリティのアップデートを適用できないデバイスが存在するなど、リスクもある。さらにエッジコンピューティングは分散配置のため、境界線防御の破綻もリスクとして挙げられる。Dell NativeEdgeはゼロトラストセキュリティを実現する技術を導入している。顧客のエッジ資産全体にわたって、アプリケーションとインフラを保護することで、セキュリティリスクを軽減するのだ。

 Dell NativeEdgeは、運用の簡素化や自由度の向上だけでなく、安全性の確保までを単一で実現するエッジプラットフォームソフトウェアだ。

顧客の要件に応じた柔軟性のある環境を実現

Smart Data Platform Edge

NTTコミュニケーションズ
5万3,570円〜

 運用一体型の月額定額制エッジコンピューティングサービス「Smart Data Platform Edge」を提案する。

 Smart Data Platform Edgeは、NTTコミュニケーションズがデータ利活用に必要な収集・蓄積・管理分析における全ての機能を、ITインフラも含めてワンストップでサポートするプラットフォーム「Smart Data Platform」上で提供するエッジコンピューティングサービスだ。エッジサーバー上でデータ処理を行うため、ネットワークでデータを転送する時間を短縮し、よりリアルタイムな処理ができる。

 Smart Data Platform 上でデータ利活用を行うために提供されるサービス群「Apps on SDPF」内のAI、IoT、セキュリティなどのアプリケーションとの連携にも対応している。例えば、Webブラウザー上からノーコードでAIモデルを開発できるアプリケーション「Node-AI」で作成したAIを動作させることなどが可能だ。そのAIを活用すれば、エッジサーバー上でヘルメットの未着用者の検知などを実現する。

 エッジ環境はサーバーを分散配置しているため、システムの維持管理が懸念される。Smart Data Platform Edgeは運用一体型での提供のため、不具合時の現地駆け付けによるサーバー交換や、オンプレミスサーバーを運用する際に煩雑となるセキュリティ対策や遠隔による復旧作業などの運用業務をNTTコミュニケーションズが対応する。そのため、維持管理における高度なノウハウや人材が不在の場合でも安心して導入可能だ。

 Smart Data Platform Edgeはリアルタイム処理、通信効率化といったエッジの特長を生かしつつ、アプリケーション連携によって、顧客独自の業務環境にも広く適応するサービスだ。

※価格は全て税込