テレワーク環境下でもスムーズにマニュアルを共有したい

コロナ禍によってテレワークが推進されたことに伴い、非対面かつ、場所・時間に制約のない「非同期型のコミュニケーション」が企業の働き方の一つとして確立した。その結果、業務のルールやノウハウが共有されず、正しい業務の遂行や人材育成に課題を抱えている企業が増加している。こうした課題を解決する手段として、テレワーク環境でのマニュアル作成や共有を支援するツールが求められている。

テレワーク課題の解決にマニュアルを

 働き方の主流がハイブリッドワークにシフトした現在でも、テレワークを実施していた際の課題が解決したわけではない。ハイブリッドワークは働く場所が自由なため、従業員同士のつながりが薄れ、業務ノウハウなどが共有できない課題は継続しているのだ。

 こうした課題の解決方法として、クラウドでのマニュアルの活用が有効だ。アイ・ティ・アールのマニュアル作成支援市場規模推移の調査でも、業務の標準化や効率化を目的にマニュアル活用の需要が高まっていると指摘されている。さらに近年、各種業務でSaaSの導入が増加しており、その利用の促進や定着化を支援する目的でもマニュアル作成支援製品・サービスの導入が進んでいる。これらを背景として、マニュアル作成支援製品・サービス市場の2021〜2026年度の年平均成長率は16.8%と見込まれている。

 マニュアル活用の需要が高まっている一方で、分かりやすさを考慮したマニュアルの作成には多大な時間と人員が必要となる。しかし、日々の通常業務に追われてしまい、それらを捻出できないのが現状だ。

 これを踏まえ、上記の要素をカバーするためには、どのようなテレワーク環境でのマニュアル作成や共有を支援するツールが必要かを検討したい。

マニュアル内にチェックシートを配置

 それでは、テレワーク環境でマニュアル作成や共有を支援するツールの機能をチェックしていこう。

 管理するマニュアルの種類が増えるほど、その管理は煩雑になる。5階層のフォルダーを備える製品であれば、マニュアルを管理しやすいだろう。加えて、フォルダーごとに管理者、編集者、閲覧者の権限を設定すれば、事業や部門業務に応じた閲覧制限も可能になって扱いやすい。

 マニュアルを作成する時間や人員のリソースが少ない場合は、マニュアルを自動作成できるツールを使うと良いだろう。PCの画面上でマニュアル化したい操作を一度行うだけで、マニュアルとして取り込める。自動で作成されたマニュアルを基盤として編集し、出力すれば誰でも簡単にマニュアルや動画が作成できる。

 マニュアルの利用者が気付きや記載に関する質問・意見などをコメントとしてマニュアルに記録できるツールもある。マニュアルを作成者から閲覧者への一方通行の伝達手段にせず、双方向のコミュニケーションが行えるため、現場の意見や気付きをマニュアルに反映可能だ。

 今回は、コニカミノルタジャパン、Blue Port、富士通ラーニングメディアに製品を提案してもらった。

シンプルなUI/UXで属人化を解消

COCOMITE(ココミテ)

コニカミノルタジャパン
初期登録費用:7万1,500円
スモールパック:44万8,800円/年(編集者3人、閲覧者15人、データ利用量25GB)
※上記は年間一括払いのパッケージプラン価格。そのほか、月額や従量課金プランもあり。

 タグでの絞り込みや全文検索といった検索機能で目的のマニュアルをすぐに探せるオンラインマニュアル作成・運用サービス「COCOMITE(ココミテ)」(以下、COCOMITE) を提案する。

 COCOMITEはシンプルなUI/UXによって、マニュアルの作成・管理・運用が直感的に行える。テンプレートに沿って入力するだけでマニュアルが完成するため、誰でも簡単にマニュアル作成を行えるのが特長だ。

 またCOCOMITEは5階層のフォルダーでマニュアルを一元管理する。さらにフォルダーごとに管理者、編集者、閲覧者の権限を設定できるため、部署や役職に応じた閲覧制限も可能だ。

 COCOMITEはPCだけでなくタブレットやモバイル端末からもマニュアルの作成、閲覧、更新ができるため、外出頻度の高い営業職のナレッジ共有といった用途にも利用しやすい。またHTTPS通信による暗号化やIPアドレス制限、SSO認証などセキュリティ面も充実しており、社外からでも安全にマニュアルを利用できる。

 フォルダーやマニュアルの共有を行いたいときには「外部公開」機能が便利だ。誰でも閲覧できるリンクと、アクセスした際パスワードを入力する必要があるリンクの二つのパターンでの発行ができる。パスワードを設定しておけば、送付先を誤っても情報漏えいを防げるのだ。リンクはQRコードでも生成可能なため、装置や作業場所にQRコードを掲示するなど、その場で作業内容を確認できる運用も実現する。

 COCOMITEはセキュリティを担保した上で、小規模から大規模まで対応可能な拡張性を備え、卸売、小売、サービス、情報通信業界などを中心に幅広い業種の顧客へ属人化解消の課題解決を行うDXツールだ。

慣れ親しんだUIで誰でも簡単にマニュアル作成

iTutor

Blue Port
パッケージ版:99万円〜/1ライセンス
サブスクリプション版:3万8,500円/月(1ライセンス)
※最低利用期間12カ月

 誰でも簡単にマニュアルや動画、eラーニングコンテンツが作成できるマニュアル作成ツール「iTutor」を紹介する。

 iTutorのUIはOfficeソフトの「Microsoft PowerPoint」と同じような操作感で使え、誰でも簡単にマニュアル作成が行える。また、操作手順を自動でコメント化し、後から自由に加工、編集も可能だ。さらには、既存のテンプレートから選択するだけで全体のデザインを一括で変更可能な「テーマ&テンプレート」も多数用意しており、デザイン性の高い資料が時間をかけずに作成できる。

 iTutorは動画のマニュアル作成も可能だ。PC上で行った操作の録画だけでなく、ビデオカメラやスマートフォンで撮影した動画を取り込むこともできる。iTutorは、タイムライン上で範囲を指定するだけで動画の不必要な部分をカットしたり、エフェクトによって加工したりするなど、豊富な動画編集機能を備えている。別途動画編集ソフトウェアの購入や、専門知識・技術の習得が必要ない。

 社内研修用コンテンツの作成にも役立つ。習得させたい一連の操作をiTutorで記録し、操作手順を動画で確認する「デモンストレーション」、実操作を説明付きで体験する「チュートリアル」、説明なしで復習する「練習」、結果の確認も可能な「テスト」の最大四つのモードでコンテンツ化できる。研修内容を容易なステップでコンテンツ化することで、研修コストの大幅なカットを実現する。HTML5形式で出力でき、Webブラウザー上で研修用コンテンツを閲覧できるのだ。

 経済産業省が中小企業などのDXに向けたITツールの導入を支援する補助金「IT導入補助金2023」の対象となっている。iTutorは、近年社会問題になっている人手不足の解消や業務時間、無駄な作業の削減をし、生産性向上を高めてくれるマニュアル作成ツールだ。

現場の従業員のナレッジをマニュアルに的確に反映

KnowledgeSh@re

富士通ラーニングメディア
初期構築費用:11万円
基本プラン:11万円/月

「フィードバック機能」を搭載したクラウド型マニュアル作成・共有プラットフォーム「KnowledgeSh@re(ナレッジシェア)」を提案する。

 KnowledgeSh@reでは、見出しやテキスト、画像・表・動画などのマニュアルの構成要素(ブロック)を組み合わせて配置することで、Webブラウザー上で閲覧できるマニュアルを作れる。ドラッグ&ドロップでブロックを配置できるので、直感的な操作で会社独自のマニュアルを自由度高く作成できる。

 またKnowledgeSh@reは、チェックボックスなどを設定することでマニュアルの理解を促す「対話機能」を備えている。マニュアルを読んだだけで終わらせずに、利用者の業務定着を支援できる。

 マニュアルの完成はゴールではなくスタートである。利用者からもフィードバックを受け、常に最新化・最適化することが肝要だ。KnowledgeSh@reで公開されたマニュアルには、マニュアルを利用しながら気付いたことや、記載に関する質問・意見などをコメントとして記録できるフィードバック機能を搭載している。コメントはマニュアルの該当箇所にひも付けて管理されるので、現場の意見や気付きを反映し、現場に合わせたマニュアルの改善を実現する。

 マニュアル整備に関するオプションサービスが多いのも特長だ。マニュアル制作サービスを約45年にわたり提供しているノウハウを生かし、顧客に応じた最適なマニュアルの運用コンサルティングやマニュアル内製化支援などのサービスを提供している。

 KnowledgeSh@reは、業務内容やノウハウをマニュアルとして形式知化する導入期、それを現場に広げていく浸透・定着期、現場の気付きを生かして改善する成長期という、ナレッジ共有で企業が成長していく三つのステップで有効に活用できるツールだ。

※価格は全て税込