【特集】校務DXを支えるCopilot+ PC
今年も新入生が新しい制服を着て通学する姿が見られる季節を迎えている。コロナ禍を経て学校には1人1台のPCが導入され、教育のDXが大きく進展した。しかし教育の現場では解決すべき課題はまだあるという。今回は元高校教諭の栗原さんに、先生の立場から見た学校でのDX推進に関する課題を伺った。
教室では先生のPCで
生徒の個人情報が使えない
MOEKO●栗原さんは高校の先生からなぜIT企業に転身しようと考えたのですか。
栗原さん●高校で教師をしていた時に実感したのは、先生個人の努力だけではなく、ITの環境を変えるだけで働き方が大きく改善するということでした。
先生たちの働き方が良くなれば、その時間と余白は子供たちの学びの質向上につながるため、そうした変化をより多くの学校に広げたいと考え、IT企業への転職を決めました。
MOEKO●GIGAスクール構想によって生徒に1人1台のPCが配布されました。その効果はどうでしたか。
栗原さん●教室で1人1台のPCが使えるようになったことは、授業や指導の幅が広がるという点で、生徒にも先生にも大きなメリットをもたらしました。
一方で、より良いICT活用を目指していく中では、先生が校務用と学習用の2台のPCを使い分けなければならないといった課題も見えてきています。
MOEKO●先生は2台のPCを使っているんですか。
栗原さん●GIGAスクール構想実施後、多くの学校では現在もそうなっています。GIGAスクール構想が実施される以前から先生は校務にPCを使ってきました。そしてGIGAスクール構想が実施され、先生にも「学習用」のPCが配布されました。
しかし学習用PCには生徒の個人情報を入れてはいけないなどの制約があり、学習用PCと校務用PCの間でデータのやりとりができません。また多くの場合は校務用PCを職員室から持ち出すことができません。その結果、教室で学習用PCから生徒一人ひとりの学習の記録を参照、追記しながら指導をするといったことができませんでした。
MOEKO●職員室から持ち出せない個人情報など、授業に必要な情報をどのようにして教室で活用していたのですか。
栗原さん●通称、閻魔帳と呼ばれる教務手帳にメモするほかありませんので、情報量は限られますよね。
企業に置き換えると分かりやすいです。顧客情報を扱えるのは社内に固定されたPCだけで、外出時は顧客名も入っていない資料しか入れられない持ち出し用PCを使う、みたいな状況です。提案書を作るにも事務処理をするにも、結局オフィスに戻らないといけない。とても不便ですよね。
MOEKO●PCを活用すれば先生の仕事が効率化できそうなものですが、かえって負担が増えそうな状況ですね。

2台のPCを1台のCopilot+ PCへ
質の向上につながる効率化

日本マイクロソフト
Microsoft Elevate統括本部
初等中等教育戦略本部
ICTソリューション担当部長
栗原太郎 氏
栗原さん●先生には事務仕事がたくさんあるのですが、授業や部活など生徒と向き合う時間が長い上に職員室でしか校務ができないとなると、「いったいいつ仕事をすればいいのだろう?」という構造になってしまいます。
私も授業が終わると走って職員室に行って、10分しかない休み時間に校務用PCで細かい仕事を片付けるということを繰り返していました。ほかの先生も同じですから、職員室は殺伐としています。
さらに厄介なのが入力作業です。教室などで閻魔帳にメモした情報を、職員室の校務用PCに入力しなければなりません。また情報共有も口頭やメモでやりとりした内容を校務用PCに入力していました。
こうした膨大な繰り返し作業を積み上げていると、生徒と向き合う時間が削られてしまいます。
MOEKO●この状況はどうすれば改善できるのですか。
栗原さん●先生の校務用と学習用のPCを1台にまとめてしまえばいいだけです。実際に私が勤務していた高校で先生用のPCを1台にした結果、校務に費やす時間が削減でき、その代わりに先生同士のコミュニケーションの時間が増えました。
職員室は以前の校務の作業場から、「この生徒ってこんな良いところがあるよね」とか「この授業を面白くできないか」といった、先生の情報交換や議論の場へと変わりました。
MOEKO●先生のPCを1台にするには、校務と学習の両方に対応できるPCが必要になりますね。
栗原さん●その通りです。校務を効率よく処理し、学習を効果的にできるPCという点で、Copilot+ PCを使うメリットが大きいと考えています。
例えば絵を描くのが苦手な先生が、分かりやすく図解した教材を作りたいとなったとき、Copilot+ PCの「ペイント」アプリ内で使える「コクリエーター」が、簡単な手書きのスケッチやテキスト入力からAIが高品質な画像を生成・編集してくれます。
先生はたくさんのアイデアを持っています。それを具現化する手段として、Copilot+ PCのAI機能は最適です。
MOEKO●先生は教材作りも全部自力ですから、この使い方は効果的ですね。
栗原さん●また成績表に書く「所見」の作文にCopilot+ PCのリコール機能を活用できます。所見には生徒一人ひとりの学習の成果や課題などを書くのですが、テストの結果だけではなく生徒がどんな発言や行動をしたのかなどの記録を振り返る必要があります。
一人の先生が生徒一人ひとりの記録の全てを振り返るのは時間がかかりますし、見落としも生じます。記録を思い出す作業にAIを使えば作業時間を短縮できるとともに、生徒の良いところを忘れずに余さず伝えることができ、生徒も「先生はきちんと見てくれている」と喜んで学習意欲の向上につなげられます。
2台分の予算で1台の高性能PC
教育政策につながる提案を
MOEKO●先生用PCとしてのCopilot+ PCの価値は理解できます。しかし現実には予算が足りないという声もあります。Copilot+ PCは将来、先生用のPCとして広がりますか。
栗原さん●価格面は「2台を1台にする」発想に切り替えると見え方が変わります。そして私は教育委員会の方々に「AI搭載PCではないPCを今買うのは、5年後を考えるとリスクになり得る」と伝えています。PCは5年単位で使われます。すでにAI活用が日常的になりつつある時代となっていて、そこに向けた教育が語られています。しかしPCは今のまま変わらない、というのは筋が通りにくい。
自治体には教育政策とビジョンがあります。そこに「AIネイティブなPC」がしっくりくる。単なる作業端末ではなく、先生の働き方を変え、生徒たちのためになる環境を推進するツールと位置付けられたとき、動き出す組織は増えるはずです。
MOEKO●PCの更新を“リプレース”ではなく“教育の計画”とセットで考えるべき、ということですね。そして「先生のため」だけではなく、「生徒たちのため」に帰結するということも認識すべきですね。ありがとうございました。



