テレワーク時の電話応対を省力化したい

新型コロナウイルスが感染拡大と縮小を繰り返す中、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッドワークが定着した。しかし、ハイブリッドワークの実施に当たり、課題の一つとなるのがオフィスの固定電話の応対だ。ハイブリッドワークでは、電話応対の機会がオフィスワーカーに偏ってしまいがちだ。出社している従業員が不公平感を感じないよう、テレワークでの電話応対業務を省力化できる製品が求められている。

業務の集中と品質管理が課題

 テレワークでの電話応対の課題は固定電話の対応だ。当然だが会社宛ての電話を直接取れない。顧客との電話応対が滞れば、ビジネスに支障を来す可能性がある。従来ではこの課題を解決するため、電話番として一部の社員が出社するケースも見られた。

 またコンタクトセンターでもコロナ禍を契機に、テレワーク勤務にシフトする動きがある。一方で、コンタクトセンターの職員がテレワークを実施する課題もある。一つ目は、現場マネジメントの難しさだ。オペレーターが管理者の近くに在席していないため、様子を把握することが困難になっている。二つ目は、品質管理だ。電話応対のリモート化は、業務内容が不可視化されオペレーターの手腕頼みとなるため、業務が属人化し、品質低下を招く恐れがある。

 こうした課題を解決するほか、営業活動など幅広い分野で活用できる電話応対関連ツールの需要は拡大している。音声認識の活用で電話応対の効率化や自動化を実現し、業務の負担を軽減できるのだ。音声認識ツールはアイ・ティ・アールの調査によると、2021〜2026年度の年平均成長率は23.6%、2026年度に市場は300億円規模に達する予測だ。

 これを踏まえ、テレワーク時の電話応対を省力化しつつ質を向上させる関連ツールの提案を検討したい。

通話中でも端末の切り替えが可能

 それでは、テレワーク時の電話応対を省力化しつつ質を向上させる関連ツールの機能をチェックしていこう。

 オフィスから外出する用事がある場合は、通話中に端末を切り替えられたら便利だ。通話中のまま、固定電話からスマートフォンにシームレスな切り替えが可能だ。外出しながら通話を続けられる。

 固定電話にかかってくる電話の件数が多い場合は、音声自動応答機能を有した製品を使うと良いだろう。混雑時のあふれ呼や時間外呼などを迂回着信して受け付け、折り返しの情報を取得する。取得した情報を基にアウトバウンドすることで、集中する注文受付などの機会損失の防止や、顧客対応の品質向上に活用できる。

 通話の内容を評価する機能を持つ電話応対関連ツールもある。特にコンタクトセンターでは通常の電話応対よりも顧客に寄り添った丁寧な対応が求められるため、通話の内容の評価機能は有用だ。話すスピードや発話のタイミング、クッションワードの使用などを設定したテンプレートに基づき、点数として自動で数値化する。同一基準で客観的に評価し、正確なフィードバックを実現することで、通話の品質の向上につなげられる。

 今回は、シスコシステムズ、NTTテクノクロス、アドバンスト・メディアに製品を提案してもらった。

クラウドサービスでどこからでも固定電話を発着信

Webex Calling

シスコシステムズ
個別見積

 IP電話で使用される050番号だけでなく、市外局番も発着信可能なクラウド電話サービス「Webex Calling」を提案する。

 Webex Callingは電話設定に必要なPBX機能をクラウド上に備えている。そのため、インターネット環境があれば、オフィスの移転や組織変更に伴う人員の増減、デスクのフリーアドレス化の際でも、電話工事不要で即時かつ柔軟に変更を反映できる。また、その即時性を生かして災害発生時のBCP対策としても有効だ。

 Webex Callingは外線番号と内線番号へ、自宅や外出先など場所を限定せずに発着信ができる。PC、スマートフォン、固定電話と対応するデバイスも選ばない。

 またWebex Callingは、KDDI・NTT東日本の公衆網回線とクラウド接続されているため、企業内の追加機器設置工事が不要だ。従業員宅内にインターネット環境が整っていればPBX環境の利用ができるため、テレワークにも柔軟に対応する。さらにノイズキャンセル機能により、掃除機などの個人宅特有の雑音も抑えられるのだ。

 管理コンソール「Control Hub」は電話応対業務の管理が行える。Control Hubでは新規ユーザーやデバイスの登録のほか、内線番号の変更などもできる。直感的な操作が可能なGUIを採用しているため、管理者の業務負担を減らすだけでなく、専門のエンジニアの手配も不要だ。さらにControl Hubでは、固定電話、モバイル、デスクトップクライアントを含む全ての通話の音声品質や、ユーザーごとの利用率や通話時間などの利用データをダッシュボードから確認できる。ダッシュボードを活用することで、利用レポートの作成時間を削減し、管理者の負担を軽減する。

 テレワーク用の電話といった部分導入から、全社PBXのクラウド化といった全社導入までサポートする。

高度な音声認識や音声合成で自動化を実現

VoiceMall

NTTテクノクロス
ベストエフォートタイプ(初期費用):16万5,000円〜
ベストエフォートタイプ(利用料):33万円/月〜
※パッケージや利用形態などにより変動。
※少量・大量回線、ギャランティタイプへの対応は別途相談。

 NTTグループの回線設備による高い安定性と信頼性を備えたクラウド型音声自動応答サービス「VoiceMall」を紹介する。

 本サービスはインターネットを介した通信に親和性の高いプログラム言語「VoiceXML(VXML)」を採用しているため、顧客のWebシステムと容易に連携できる。例えば、Webシステムのパスワード再発行窓口に、本サービスを連携させれば、問い合わせがあった際に、新しい仮パスワードの閲覧URLをショートメッセージで自動送付できる。利用者のニーズに沿った分かりやすい情報伝達の方法を選択可能だ。NTTテクノクロスによる自社開発・自社構築サービスであるVoiceMallは、顧客の要望に合わせた細かな対応や、メール、ファクスなどとの組み合わせも一気通貫で対応可能だ。

 音声認識や音声合成、意味推定といったAI技術やRPAと組み合わせることで、自然な会話による自動応答、自動処理などの高度な自動化にも対応している。自動化の活用例として、コールセンターで受け付けている大量かつ定型化された電話応対がある。24時間対応のボイスボットを用いて自動化することで、オペレーターは不定形かつ高度な応対に集中できるようになるのだ。利用者のCX(Customer Experience:顧客経験価値)を実現しつつ、近年のオペレーターの人材不足にも対応する。

 また、クラウド型のサービスのため、オンプレミス型のような設備導入の多大な初期コストやハードウェアコストは不要だ。さらに、必要な機能・要素を選択して、1カ月単位から利用でき、CX調査やコールバック予約などの利用希望が多いサービスをパッケージとしても提供している。

 高い信頼性と高度な機能を備え、設備維持に必要な保守やメンテナンス、資産管理も不要なサービスだ。

顧客の要望に合わせて柔軟なシステム構成

AmiVoice Communication Suite4

アドバンスト・メディア
オンプレミス:個別見積
クラウド:12万円〜/月

 通話状況をテキスト化して一目で把握できるAI音声認識ソリューション「AmiVoice Communication Suite4」を提案する。

 AmiVoice Communication Suite4はリアルタイムでの高精度な全通話テキスト化に対応している。高い認識率を実現するのがディープラーニングの発展技術「Bidirectional Long Short-Term Memory」を実装したAI音声認識エンジン「AmiVoice」だ。AmiVoiceは25年以上にわたって研究、開発、収集した学習データを基にしているため、専門用語や独自表現も高精度に認識する。ニーズに応じた個別のチューニングも可能だ。高精度な全通話テキスト化により、応対履歴作成作業の削減などの業務効率化につながる。さらに、自然言語処理によって通話内に含まれる頻度の高いワードをリアルタイムで抽出する「AI話題抽出」機能を併用することで、オペレーターや管理者がテレワークを実施していても、通話状況を一目で把握できる。

 また、AmiVoice Communication Suite4は顧客の要望に合わせた柔軟な構築が可能だ。オンプレミスかクラウドでのサービス利用、リアルタイム処理かバッチ処理での処理方式と四つの形態を用意している。さらに、さまざまな外部システムや他社クラウドサービスとも連携が可能だ。

 オペレーターの対応状況を可視化する「座席表画面」を搭載している。業務ごとの色分け機能によって、管理者が通話内容や稼働状況を把握し、社内と同様に業務支援ができるため、テレワークを促進する。説明資料の自動表示機能なども合わせて活用すれば、テレワークでも窓口時間を短縮させず、応答率も低下させることがない。利用者のCXの向上を実現しながら、オペレーターのテレワークを促進するサービスだ。

※価格は全て税込