検索エンジンのトップに表示されることが最重要課題だった

検索エンジンによる検索数の減少という変化は、検索エンジンを前提に構築されてきたWebビジネスの構造を大きく揺るがしている。従来は検索結果の上位に表示されることが集客の鍵であり、そのためのSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)が重要施策とされてきた。検索結果のトップとそれ以降ではアクセス数に大きな差があり、多くの企業がコンテンツ制作や被リンク対策に注力してきた。検索順位を上げることが、そのまま売上や問い合わせ件数に直結していたのである。

もっとも、過去には検索順位を操作するための低品質コンテンツの量産といった問題も起きた。10年前に起きた「まとめサイト問題」がその代表例だろう。短期間で大量のページを生成し、キーワードを詰め込むことで検索上位を狙うといった手法である。1文字0.5円という超低価格で記事執筆を外部ライターに発注する。まじめに調べて原稿を書いていたら時給数百円になってしまうから、担当者にあらかじめ指示されたサイトを開き、その記事をコピーして切り貼りし、あたかもオリジナル記事のように仕上げて公開する。

専門家の監修も得ずに素人が書いた記事だから、ページの中で主張が食い違っているなどの問題が噴出し、大問題になった。だが、本質は勝手に記事をコピペした著作権侵害だった。メディアで大きく取り上げられ、DeNA、リクルート、サイバーエージェントなど大手企業がまとめサイトの縮小や閉鎖に追い込まれる事態となった。

この事件は、検索エンジンで高評価を得るためには、記事の質を上げることよりも、大量の文を短期間で次々と公開することのほうが効果があるという「伝説」が発端だった。

Googleをはじめとする検索エンジンは、これに対抗して「情報の質」や「ドメインの信頼性」を重視するようアルゴリズムを不断に進化させてきた。しかし、生成AIの登場は、こうした「順位の競い合い」というゲームのルールそのものを無効にしようとしている。ユーザーは複数のサイトを比較検討することなく、AIが要約した「結論」だけを最初から受け取るようになっているからだ。

LLMO――AIという名の「新たな審査官」への最適化

ここで登場するのが、本書のメインテーマであるLLMO(Large Language Model Optimization、大規模言語モデル最適化)である。

LLMというのは、膨大なテキストデータを学習し、人間のような自然な文章生成や理解を行うAI技術のこと。LLM=生成AIと言ってもいいので、簡単に言うと、LLMOとは生成AIに「選ばれる」ことを目的とした最適化の考え方だ。ユーザーがAIに特定のサービスや商品について尋ねた際、AIが参照する膨大な学習データの中から、自社の情報が正しく、かつ優先的に「引用・言及」される状態を目指す戦略である。

本書で非常に示唆に富んでいるのが、AIによる評価プロセスを「銀行の融資審査」に例えている点だ。

銀行が融資を行う際、決算書だけでなく、代表者の素性、事業計画の具体性、過去の取引実績などを多角的にチェックするように、AIもまたWeb上に散らばる、下記のような情報の一貫性を評価している。

・信用情報の整合性: 会社名やブランド表記が媒体ごとにブレていないか。
・情報の構造化: AIが読み取りやすい形で、サービス内容が論理的に整理されているか。
・継続的な発信: 公式サイトやSNSにおいて、情報の更新が止まっていないか。

これまでは「人間にどう見せるか」を最優先していたWeb制作が、今後は「AIという高度な知能を持つエージェントに、どう正しく理解させるか」という視点へとシフトしていく。これは単なるテクニックの変更ではなく、企業の「デジタル・アイデンティティ」を再構築する作業にほかならない。

解説不足に物足りなさを感じる箇所も

一方で、本書にはいくつか首を傾げたくなる部分もある。

例えば、AIを銀行審査と似ていると厳格さを説く際、AIは「株式会社○○」と「○○(株)」を別物と判断するという。1文字でもスペルが違っていたら搭乗できない、パスポートと搭乗券の名前チェックのような厳密さが求められると述べている。しかし、実際に現在のChatGPTや、検索特化型のPerplexityなどで試してみると、その挙動はもっと柔軟だ。

私の会社「株式会社エルデ」を例にとって調べてみた。前株と後株で同名別会社ということもあるので、あえて「エルデ株式会社はどんな会社か」と後株に変更して問いかけてみた。結果、AIは文脈から正しく個体を識別し、「新宿区にあるIT開発企業」と正確な回答を導き出した。表記のゆれを過剰に恐れる必要はないのかもしれない。CI的には統一すべきなのは間違いないが。

また、本書で推奨されている「Googleビジネスプロフィールの活用」といった施策は、実店舗を持つローカルビジネスには極めて有効だろうが、物理的な店舗を持たないオンラインショップやBtoBのビジネスを行う企業にとっては、ほとんど意味がない。Googleビジネスプロフィールが何なのか、どういった企業にとって対策すべきなのか解説して欲しかった。

さらに、現場の人間として最も知りたいのは「外注コストと優先順位」である。SEOには確立された相場観があるが、LLMOはまだ海のものとも山のものともつかない。どの程度の工数を割き、どの外部パートナーを信頼すべきかという「発注側の視点」に立った具体的な指針が不足している点は、実務書としてはやや物足りなさを感じる。

ビジネスパーソンが今、備えるべきこと

それでもなお、本書を推奨する理由は、私たちが置かれている現状の危機感を言語化してくれるからだ。

今、私たちが向き合うべきは「SEOの小手先のテクニック」ではない。生成AIというブラックボックスが、どのようなアルゴリズムで情報を抽出し、どのようなバイアスを持って回答を生成しているのか。そのメカニズムを理解しようとする姿勢こそが、次世代の集客戦略の根幹となる。

まだまだあります! 今月おすすめのビジネスブック

次のビジネスモデル、スマートな働き方、まだ見ぬ最新技術、etc... 今月ぜひとも押さえておきたい「おすすめビジネスブック」をPC-Webzine.comがピックアップ!

『60分でわかる! LLMO超入門』(株式会社PLAN-Bマーケティングパートナーズ 出田晴之 著/技術評論社)

検索エンジンでの上位表示を目指す「SEO」は、生成AIの登場によって大きく変わろうとしています。いまやユーザーはGoogle検索だけでなく、ChatGPTやGeminiといったAIに直接質問し、答えを得る時代に突入しました。本書で解説する「LLMO(Large Language Model Optimization)」は、その新しい検索体験に対応するための考え方です。生成AI時代のマーケティングにおいて最も重要なポイントは、自社ブランディングの確立です。Web担当者だけではなく、広報や開発、カスタマーサポートなど、さまざまな部門を巻き込む全社的な戦略としてのLLMOについて、初心者でも理解できるよう基礎から実例までをわかりやすく紹介し、これからの集客・情報発信の武器となる知識をお届けします。(Amazon内容解説より)

『強いLLMO AI検索で選ばれるためのマーケティングガイド』 (竹内渓太 著/エムディエヌコーポレーション)

LLMO(大規模言語モデル最適化)を体系的に理解し、実践するための本。本書は、AIでの検索時「自社の製品やサービスがAIに推薦される」状態を目指して、そのための戦略と戦術(施策)を解説したものです。「自社の商品やサービスの価値を、必要とする人に届ける」——そのカギは、AI検索で「選ばれるブランド」になることだと考えます。本書には、それを実現するためのヒントとノウハウが詰まっています! (Amazon内容解説より)

『これからはじめるAIO AI最適化の教科書 AEO・GEO・LLMOがこれ1冊でわかる』(瀧内賢 著/技術評論社)

GoogleのAI OverviewsやAIモードの登場により、ユーザーは「検索結果を見る」のではなく「AIの答えだけを見る」流れが加速しています。本書は、こうした生成AI時代のWeb集客とコンテンツ戦略を体系的に解説した1冊です。さらに、2026年以降にAI検索が本格的に普及し、Google検索と併存・競合していくシナリオを踏まえ、「今、何から着手すべきか」「既存のSEO施策はどう見直すべきか」を、AIO×PDCAのフレームワークとして提示します。マーケティング担当者、Webディレクター、ライター、コンサルタント、経営者など、「生成AI時代でも成果を出し続けたい」すべての人に向けた、実践的AIO/AEO/GEO/LLMOの入門かつ実務ガイドです。(Amazon内容解説より)

『はじめての生成AI NotebookLM「超」活用術』(大城一輝 著/ソーテック社)

NotebookLMは、社内資料や議事録、PDF、Webページ、音声、画像などを読み込ませて、根拠付きで答えを引き出せるGoogleのAIリサーチアシスタントです。本書は、その基本から実践活用までを体系的に解説しています。NotebookLMがアップロードしたソースだけを情報源として回答する仕組みや、引用元をたどって原文を確認できる特長、Googleドライブやモバイルアプリを活用した始め方まで、初めて使う人からNotebookLMを使いこなしたい中級者まで幅広く対応します。ハルシネーションの見極め方、情報漏洩を防ぐ共有設定、著作権や利用規約の注意点まで押さえており、NotebookLMを安全かつ実務的に使いこなしたい人に最適の一冊です。(Amazon内容解説より)

『生成AI投資の教科書[Gemini実践編]』(ジョン・シュウギョウ 著/ソーテック社)

本書では、Googleドライブを「脳」とし、Gemini Gemsを「眼(監視員)」とし、最新ツールGoogle Opalを「手足(アプリ)」として、投資に必要な情報、判断を得るための具体的な手法をすべて公開しました。そのインプットやアウトプットを使っての分析や蓄積もすべて一つの世界で完結します。世界最高峰のAIと、あなたが普段使い慣れているインフラが完全に融合したとき、あなたのスマートフォンは文字通り、世界に一つだけの「投資専用デバイス」へと変貌します。本書は、単なるツールの使い方を教える本ではありません。あなたをAIのオペレーターから解放し、投資という冒険を楽しむ「艦隊の司令官」へと変えるための招待状です。 (Amazon内容解説より)