物流の2024年問題とは何か?
問題解決に向けたTIソリューションを一挙紹介

Introduction

昨今注目が集まっている「物流の2024年問題」。その背景には、EC市場の拡大や労働力不足など、さまざまな要因が複雑に絡み合っている。まずは現在の物流業界の課題をおさらいしよう。

「生活と経済のライフライン」として、日本の物流を支えるトラック輸送。国土交通省が発表している国内貨物輸送量の2020年の数値を見ると、トラックの輸送分担率はトンベースで約9割、トンキロベースで約5割と非常に高い割合だ。日用品、金属鉱、食料工業品などの営業用トラックの活用割合が多い傾向にある。特にEC市場が拡大している中で、宅配便の取り扱い個数も右肩上がりで増えており、国土交通省の「令和3年度宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、宅配便の取扱個数は5年間で約9.3億個(+約23.2%)増加している。

 コロナ禍による外出自粛の影響で再配達率は一時的に8.5%(2020年4月調査)まで減少したが、その後11%台まで戻り、以降横ばいが続いている。今後もEC市場の拡大が見込まれることから、再配達を削減し、物流を効率化することが求められている。

 一方で近年、物流分野における労働力不足が顕在化している。トラックドライバーの有効求人倍率は2倍前後で推移しており、募集しても人が集まらないという環境が続いている。その背景にあるのは全産業平均と比較して約2割長い労働時間や、1〜2割低い賃金といった厳しい労働条件がある。高齢化も進んでおり、全産業平均と比較して平均年齢が3〜6歳程度高い傾向にある(厚生労働省調査)。

 こうした労働環境を是正するため、2024年4月より物流業においても働き方改革関連法が施行され、トラックドライバーに年960時間の時間外労働の上限規制が適用される。また、同時に「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)も適用され、1年の拘束時間が改正前の3,516時間から3,300時間(最大3,400時間)以内、1カ月の拘束時間が改正前の293時間(最大320時間)から284時間(最大310時間)以内に変更される。1日の休息期間も改正前の継続8時間から、継続11時間を基本とし、9時間を下回らないようにするなど、拘束時間の基準も改められる。こうした取り組みによってトラックドライバーの労働条件の向上を図る。

 その一方で課題となるのが、労働時間が短くなることによる輸送能力の不足であり、「物流の2024年問題」と呼ばれている。政府による「持続可能な物流の実現に向けた検討会」では、この2024年問題に対策を講じなかった場合、2024年度には輸送能力の約14%、2030年度には約34%が不足する可能性があると推計されている。

 政府は、この問題に対応するため「物流革新に向けた政策パッケージ」を2023年6月2日に発表。具体的な施策として「商慣行の見直し」「物流の効率化」「荷主・消費者の行動変容」の3項目において、抜本的・総合的な対策を進めることを示した。

 その施策の一環として発荷主企業・着荷主企業・物流事業者が早急に取り組むべき事項をまとめた「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定し、発荷主事業者および着荷主事業者に対して、荷待ちや荷役作業などにかかる時間を把握した上、それらの時間を2時間以内とし、これを達成した場合には1時間以内を目標にさらなる時間の短縮に努めることや、物流への負担となる商慣行の是正や、運送契約の適正化について定めている。

 本ガイドラインではトラック予約受付システムなどの導入や、入出荷業務の効率化のためのデジタル化・自動化・機械化への取り組みが示唆されるなど、物流2024年問題の解の一つとしてデジタル活用が示された。

勤怠管理から始める運送業の人事DX

Attendance

2024年4月からトラックドライバーの時間外労働の上限規制がスタートする。これにより、時間外労働時間の上限は年960時間となり、遵守しない場合は罰則に課せられる可能性がある。一方で、トラックドライバーの勤務時間を管理することに対する課題もある。勤怠管理システム「 ジンジャー勤怠 」を提供しているjinjerに、その背景を聞いた。

柔軟な勤務形態に対応する勤怠管理

jinjer
大原颯斗

 勤怠管理による労働時間の可視化は、従業員の心身の健康を守るためにも欠かせないものだ。一方で、運送業におけるトラックドライバーの勤務形態は、ほかの業種と比較して多様であるために、依然として運転日報をベースとした勤怠管理にとどまっているケースも少なくない。しかし、こうした勤怠管理には課題もある。「日報にはドライバーの運転日時や走行距離、休憩時間などが記録されますが、基本的に自己申告の数値となるため、その勤怠時間が正しいかどうかの把握が難しいのです。こうした勤怠管理を効率化するためにも、勤怠管理システムの導入が必要でしょう」と語るのは、jinjer プロダクト統括本部 プロダクトデザイン本部 プロダクトデザイン部 PdMグループ 大原颯斗氏。jinjerは、そうした運送業の勤怠管理に提案できる「ジンジャー勤怠」を提供している。

 ジンジャー勤怠の最大の特長は、多様な端末から利用できる点だ。PCのWebブラウザーからの勤怠打刻はもちろん、従業員が所持しているスマートフォンからでも打刻が可能だ。直行直帰の多いトラックドライバーも、運転席で自身のスマホから出退勤を打刻できるのだ。「GPS機能により、打刻した場所も記録できるため、走行距離の情報と照らし合わせた勤怠管理が可能です。また、打刻時の顔写真を撮影する機能を使えば、打刻した場所の背景のロケーションも把握できます。顔写真の撮影では笑顔の判定もでき、100点満点による点数化が可能です」と大原氏。

給与や人事と連携した攻めのDXを

 ジンジャー勤怠は、同じジンジャーシリーズの「ジンジャー給与」と連携することで、給与の自動計算が可能となる。手動による計算やCSV加工、他社給与システムへの連携が不要になり、バックオフィス業務の負担軽減も期待できる。

「実際にトラックドライバーの出退勤打刻に、当社のジンジャー勤怠が採用された事例もあります。現在は残業時間の管理や月ごとの労働時間の集計などを把握することに活用されていますが、将来的にはほかのジンジャーシリーズとも連携し、人事データベースを統合することによって、デジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めてほしいと考えています。労働時間の可視化は、あくまで守りのDXです。こうした活用にプラスアルファする形でバックオフィスの効率化を進め、『ジンジャー人事労務』とも組み合わせて活用いただくことで、ペーパーレス化に加え、最適な人材配置に生かすなど、攻めのDXに取り組んでほしいですね」とjinjer プロダクト統括本部 プロダクトデザイン本部 プロダクトデザイン部 PMMグループ 堅田康太氏。

jinjer
堅田康太

 ジンジャー人事労務のオプション機能には従業員のコンディションを管理・解析する「ジンジャー人事労務 サーベイ」も用意されている。従業員にアンケートを送付して回答してもらうだけで、従業員のコンディション変化を定点観測でき、早期のケアにつなげることも可能になる。ジンジャー勤怠から導入し、ジンジャー給与、ジンジャー人事労務とシリーズでデジタル化を進めていくことで、運送業のDX化を力強くバックアップできるのだ。

ジンジャー勤怠とジンジャー給与を連携すれば、給与の自動計算が可能になる。
ジンジャー人事労務のサーベイオプションを使えば、従業員のコンディションの管理・解析が可能だ。

配送計画から倉庫管理までを
トータルサポート

TMS & WMS

業務の効率化を実現する上では、これまで人手で行われていたアナログの作業を、デジタルに置き換えることが求められる。それは物流の現場でも変わらない。トラックの配送計画から倉庫管理までを連携してサポートできるソリューションで、物流の効率化を実現したいところだ。

自動配車で輸配送を効率化

NECソリューションイノベータ
猿渡大介

 物流の2024年問題解決に向けて、物流の効率化が求められている。特に時間外労働の上限規制によって、ドライバー1人当たりの労働時間が減少するこれからの物流の現場においては、デジタルを活用した輸配送の効率化が求められるのだ。例えばトラックの配車は、ベテランの配車担当スタッフが経験に基づき、Excelで管理しているケースがある。こうした属人化した配車管理では、担当者の異動や退職などで配車ミスや配車漏れなどのトラブルが発生する可能性がある。また物流の効率化を実現する上では、配車だけでなく倉庫の情報とも連携する必要がある。こうした配車や倉庫管理の効率化を実現するためには「TMS」(輸配送管理システム)や「WMS」(倉庫管理システム)の導入が望ましい。

 そのTMSやWMSだけでなく、受発注や物流までの現場業務をトータルでサポートする物流ソリューション「ULTRAFIXシリーズ」を提供しているのが、NECソリューションイノベータだ。

 その中でも輸配送管理システムを担うのが「ULTRAFIX/TMS」だ。NECソリューションイノベータ 営業統括本部 ビジネスソリューション営業部 主任 猿渡大介氏は「当社のULTRAFIX/TMSは現在1,000サイト以上に導入されています。当社のTMSの最大の特長は、自動配車の精度を向上できる点です。TMSは通常、ボタンを押せば最適な配車計画をコンピューターが自動的に決めてくれますが、本製品では配車計画の考え方をマスタ単位で設定し、物流制約を順守した柔軟で現実的な計画を立案します。この配車計画は人力による調整が可能で、ガントチャート表示によってルートごとに細かい時間管理や修正が行えます」と語る。自動配車で完結するのではなく、素早く自動配車の計画を立案し、修正が必要な部分は人手で行える余地を残しているため、非常に使いやすいシステムだ。

輸配送の進捗状況も可視化

 ULTRAFIX/TMSには、自動配車を行う際にトラックドライバーの仕事の平準化が行えるエンジンも実装しており、トラックドライバーごとに業務負担が偏らない配車計画が策定できる。「2024年4月からはトラックドライバーの累計残業時間や2日間の平均運転時間の規制が始まります。今後の機能強化ではこうした上限規制にも対応した配車計画が行えるようにしていきます」と猿渡氏。

 トラックが出発した後の配送状況を確認する動態/進捗管理システム「ULTRAFIX/輸配送進捗管理サービス」も提供している。これはULTRAFIX/TMSで作成した配送計画をクラウドへアップロードし、ドライバーのスマートフォンのGPS情報を基に輸配送の進捗状況をリアルタイムに実績に置き換えられるシステムだ。配送計画に対する現在の進捗が可視化できるため、顧客からの輸配送状況の問い合わせにも速やかに対応できるようになる。

 この輸配送進捗管理サービスを利用すれば、ドライバーの動態管理も行える。ドライバーからの納品時のステータス送信によって、管理PCで画像付きの簡易運転日報としても管理可能だ。「将来的には、この輸配送進捗管理サービスの機能を活用して、トラックドライバーの勤怠管理も本システムで一元的に管理できるようにしていくことを検討しています。異なる勤怠管理システムを導入すると、ドライバーも別途アプリを導入する必要があり負担です。この輸配送進捗管理サービスに勤怠管理を連携させることにより、ドライバーに負担をかけず、勤怠管理が実現できるようになるでしょう」と語るのは、NECソリューションイノベータ 営業統括本部 ビジネスソリューション営業部 プロフェッショナル 後藤浩次氏。

倉庫管理と配送計画を連携

NECソリューションイノベータ
後藤浩次

 物流センターでトラックが荷物の積み下ろしをするために停車する場所を「バース」と呼ぶ。しかし物流センターにはさまざまなトラックが利用するため、一度荷待ちが発生したり、トラックが早めに着いてしまうと、混雑が発生してしまう。そうした荷待ちの状態を解消するのが、入出荷バース予約/管理システム「バース予約サービス」だ。

 NECソリューションイノベータのバース予約サービスは、ドライバーのモバイル端末もしくは運行管理者のPCから、バースの到着予約が行えるサービスだ。ドライバーからの予約は、スマートフォンだけでなくフィーチャーフォンからも利用できる。トラックドライバーは運転席などからモバイル端末で空きバースを見つけて、ダイレクトに予約可能になるのだ。ドライバーから予約依頼が無くても、あらかじめ物流センター側で誘導先のバースを確定(指定)しておいて、トラックドライバー側に通知することで、トラックの行列解消につなげられる。実際、政府が閣議決定した「物流革新に向けた政策パッケージ」では、物流の効率化の施策の一つとして「即効性のある設備投資の促進」にバース予約システムを挙げるなど、注目度の高いシステムと言える。

 また、荷物を保管するDC(Distribution Center)型物流倉庫を管理するシステム(WMS)として「ULTRAFIX/WMS」も提供している。「WMSは世の中にたくさんのシステムが提供されていますが、当社のWMSは非常にシンプルでエントリー導入に最適です。入出荷の許容日数や割合を考慮した期限管理や切迫品管理機能、ロット逆転防止、シリアルナンバー管理機能などはもちろん、柔軟な外部システム連携が可能です。また、前述したULTRAFIX/TMSと連携して、配送計画の配車結果を活用した車種別ピッキングや車種別仕分けの指示機能をオプションで提供しています」と猿渡氏。ULTRAFIX/WMSでも6種類のピッキングリスト出力に対応しているが、配車計画と連携することで、そのトラックに積む物だけを仕分ける作業が行いやすくなり、より配送を効率化が可能になる。

「物流における配送計画はこれまで、トラックをどう動かすのかがメインであり、そこに誰が乗るか、誰が残業をして配送をしているかといった情報は意識されてきませんでした。しかし、2024年問題を乗り越えるためには、こうしたドライバーの情報を加味して配車計画を行う必要があります。当社のULTRAFIXシリーズを活用することで、配車計画がスムーズに行えるだけでなく、配車効率が良くなり、ドライバーの拘束時間も短縮できるようになるでしょう。ULTRAFIXシリーズの中には積付計画システムの『ULTRAFIX/積付計画』も用意されており、経験やノウハウが少ない作業員でも、短時間でベテラン並の積付業務が行えるようになります。積付効率が上がれば、いわゆる“空気を運ぶ”ような積載率の悪いトラック運行がなくせますので、トラックドライバーの人手不足の解消にもつなげられるでしょう。当社では2024年問題に向けて、今後も提案を強化していきます」と後藤氏は語った。

先端技術が実現する物流の効率化とは

IoT &ロボット

物流業界全体の負担を軽減するためには、物品管理を効率化することも求められる。特に配送拠点におけるパレット運用には積年の課題がある。そうした課題を解決するのがIoT技術だ。また、ドライバー不足の中、ラストワンマイルの効率化にもテクノロジーの活用が期待されている。京セラコミュニケーションシステムは、多様なテクノロジーの提供で、そうした物流業界への課題に応えている。



パレット紛失による負担

京セラコミュニケーションシステム
川合直樹

 物流現場では、荷物を載せるための荷役台として「パレット」が活用されている。このパレットに荷物を載せてフォークリフトなどで荷役作業を行えば、人力で荷物を運ぶ場合と比べて大きく効率化でき、負担が低減できるため、多くの物流現場で導入されている。一方で、このパレットを運用する中で生まれた課題もある。実はこのパレットは紛失や流出が非常に多いのだ。

 そうしたパレットにセンサーを取り付けることで、物流現場のパレット運用を効率化させる「パレット位置管理ソリューション」を提供しているのが、京セラコミュニケーションシステムだ。同社のICT事業本部 ワイヤレスソリューション事業部 副事業部長 川合直樹氏は「工場や倉庫などに勤めている人に『パレットが紛失したり戻ってこなかったりしたことはありませんか?』と聞けば、100人中100人が『あります』と答えると思います。それくらい頻発するトラブルなのです。配送拠点が大量にある場合、滞留しているパレットを電話で探すなどの手間がかかります。また戻ってこない分のパレットは、当然買い足す必要があり、年間で非常に大きなコスト負担になっているとも言われています」と語る。

LPWAを活用したパレット管理

(上)パレット位置管理ソリューションで活用するSigfox対応のセンサーは、物流資材位置管理デバイスとして多様なメーカーの製品がそろっている。
(下)京セラコミュニケーションシステムが開発したSigfox対応の開封検知センサー「SeeGALE」は、在庫管理から売れ筋の可視化までをトータルで実現できる。

 そうしたパレット運用の課題を解決するのが、パレット位置管理ソリューションだ。本ソリューションではパレットにセンサーを取り付け、LPWAネットワークの「Sigfox」で定期的に位置情報を送信しクラウドで管理することで、パレットが今ある場所を可視化する。SigfoxはフランスのUnaBiz SASが開発したLPWAネットワーク技術で、日本国内では京セラコミュニケーションシステムが公衆網としてサービスを展開している。国内人口カバー率は約95%と広域で利用可能だ。資材管理を行う手段として、RFIDやBLEビーコン、バーコード、3G/LTEなどが考えられるが、スキャン作業に手間がかかったり、設備コストや消費電力が高いといったハードルが存在した。Sigfoxのセンサーを活用したパレット位置管理ソリューションでは、センサーをパレットに取り付けるだけで運用をスタートでき、読み取り機の設置や人手によるスキャン作業は不要だ。また導入後5〜10年と長期にわたって、電池交換や充電をせずに運用できるため、従来のIoTによる資材管理の課題を解消してくれる。

「実際に本ソリューションを活用し、パレット運用を効率化させた事例はいくつもあります。例えばAGCさまの事例では、ガラスを工場から建設現場に運ぶ際に使用するパレットにセンサーを取り付けることで、紛失を半減してコスト削減を実現しています。またパレットの位置や在庫、滞留情報を輸送計画に反映させることで、輸送効率を向上させています。これにより、CO2排出量を1〜5%削減できたそうです。また物流用のレンタルパレットを提供している日本パレットプールさまでは、物流用レンタルパレットにセンサーを取り付け、お客さまにレンタルしたパレットの紛失や流出を抑止しています。レンタルしたお客さまもWeb画面上でパレットの現在位置を確認できるようにし、効率的な運用を実現したそうです」と川合氏。空港で貨物運搬を行う東京国際エアカーゴターミナルも本ソリューションを活用しており、空港の広大な敷地内で航空機地上支援車両(GSE)の位置を把握することに役立てている。

 川合氏は「物流現場ではパレットの流出リスクを避けるため、発着間で無駄な積み替えを行っているケースもあり、トラックドライバーや作業員の負担にもなっています。積年の課題となっているパレット運用の課題をパレット位置管理ソリューションで解決することで、物流の効率化を実現してほしいですね」と語った。

公道を走る自動配送ロボット

緑苑台で実施されたロボット配送の実証実験では、ロッカー搭載型とホットショーケース型の二つのロボットが運行し、地元住民への個人配送や、商品の移動販売を行った。個人配送ではヤマト運輸と連携しており、地元住民は自宅近くの停車場などで自動走行ロボットから荷物を受け取ることが可能だ。

 トラックドライバーの人手不足が進む中で深刻化が懸念されているのがラストワンマイル問題だ。最終拠点から消費者に届くまでの配送区間を意味するラストワンマイルだが、物流2024年問題や高齢化によるドライバー不足や再配達の増加といった課題により、今後消費者に対して十分な配送サービスが提供できなくなってしまう可能性がある。

 そうした課題解決を実現する手段として、自動走行ロボットやドローンの活用が注目されている。京セラコミュニケーションシステムでは公道(車道)を走る無人自動走行ロボットを活用したモビリティサービスの開発に取り組んでいる。

 同社が開発している無人自動走行ロボットは2種類ある。一つ目はロッカーを搭載したタイプ、二つ目は冷蔵と保温の切り替えが可能なホットショーケースを搭載したタイプだ。「自動走行ロボットの多くは歩道を走るタイプですが、当社の自動走行ロボットは公道を走ります。ミニカー(高さ2.0m以下×幅1.3m以下×長さ2.5m以下)に準拠したサイズ感で、最高速度は15km/hです。実証実験を行った地域では車と一緒に公道を走行しましたが、問題なく運用できました」と語るのは、京セラコミュニケーションシステム 経営企画室 モビリティ事業開発部 マーケティング課 副課長 村上宙也氏。

 実証実験はこれまで三つの地域で実施してきた。最初の実証は、北海道石狩市石狩湾新港地域において、2021年8〜9月にかけて行われたロボットシェアリング型配送サービス、二つ目の実証は2022年3月に、千葉県千葉市幕張新都心でロッカー搭載型を利用して行われた買い物支援サービス実証と、2022年7〜8月に実施された、ホットショーケース型を利用した無人移動販売サービス実証だ。そして三つ目に、2022年11月に北海道石狩市緑苑台で実施された、配送ロボットによる複合的地域ラストワンマイル物流の実証だ。前述した2種類の自動走行ロボットを併用し、地域物流の支援と移動販売を複合的に行っている。

 実証地域となっている石狩市緑苑台東都区内は約1,100世帯が暮らす住宅地で、東京ドーム約8個分となる約38ヘクタールの区域だ。その区域の6カ所に停車場所を作り、地域物流の支援を行った。ロッカー搭載型のロボットはヤマト運輸が荷物をロッカーに詰め、個人向け配送の効率化を行い、ホットショーケース型ロボットはセイコーマートの商品を移動販売したという。

 京セラコミュニケーションシステム 事業開発 シニアディレクター 吉田 洋氏は「地域の方々からの声は非常にポジティブで、こういったサービスはあったらうれしいとか、早く実用化してほしいといった声がありました。こうした自動走行ロボットによる配送はドライバー不足によるラストワンマイル対策への効果も大きいですが、なによりカーボンニュートラルへの効果が大きいでしょう。CO2の排出をできるだけ削減するためにトラック輸送の効率化が求められる中で、バッテリー交換式で電動走行するこのような自動走行ロボットは高い需要があります。ロボットならではのサービスが設計できるのではと期待しており、今後も実証を続けていきます」と語る。

 緑苑台における実証は2022年度にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「自動配送ロボットによる配送サービスの実現」における研究開発項目に参画しており、3年間の実証が予定されている。今後の実証では停車スポットを増やしたり、ロボットオペレーターの担当台数を増やしたりするなど、より効率的な自動配送に向けた検証を進めていく。

京セラコミュニケーションシステム
村上宙也
京セラコミュニケーションシステム
吉田 洋