管理職にとって、育成やコミュニケーションといった部下に関する事柄は悩みの種だ。こうした管理職の悩みを解決する方法として、コミュニケーションを通して相手が目標達成に向けて主体的に行動することを支援する「コーチング」に注目が集まっている。コーチングによって、従業員一人ひとりの問題解決能力が高まり、最終的に企業の成長にまでつながるのだ。こうした背景の下、今回はコーチングに関する書籍を紹介する。
リーダーのためのコーチングがイチからわかる本

1,870円(税込)
すばる舎
コーチングに求められるスキルを解説した一冊。第2章では、聞くスキルを紹介している。1on1ミーティングの際は、部下が話す割合を増やすことが重要だ。リーダーが一方的に話してしまうと、「自分の話を聞いてくれない」という不信につながる恐れがある。さらに単なる聞き手に回るだけでなく、自分が話した内容を自分で聞くことで潜在的な考えに気付ける「オートクライン」が起こっていることを部下に意識させることが重要だと著者は述べる。部下が話し終わった後に、「自分で話してみてどう感じた?」など考えを整理できるような一言をかけてあげると良い。第7章ではフィードバックのスキルを紹介している。客観的事実を伝える客観的フィードバックと、主観的事実を伝える主観的フィードバックを使い分けることが重要だ。客観的フィードバックではあなたを主語にした「Youメッセージ」を用いることで、より客観的に意見を伝えられる。また主観的フィードバックでは私を主語にした「Iメッセージ」を用いて、相手が言葉以外で発している雰囲気を伝えると良い。相手が言語化できていない部分を気付かせられる。本書でコーチングのスキルを一から学ぶことで、自走する組織をつくる手助けとなるだろう。
管理職コーチング論

3,960円(税込)
東京大学出版会
本書では「マネージャーは、部下の成長を促すために、どのようなプロセスによって経験学習・リフレクションを支援し、どのような効果を与えているのか」を解説している。部下の成長を促すためには、経験学習・リフレクション支援の準備段階で、学習環境の整備が欠かせない。整備のためには、定期的にコミュニケーションを取ることによる心理的安心感の醸成、中堅社員の活用、キャリアビジョンを基に動機付ける、仕事の意味付けを行うことが重要だと著者は述べる。実証調査の定性的・定量的な分析を基に検討にした、高い信頼性を備える理論を解説する一冊だ。
アドバイスしてはいけない

深町あおい 訳
1,980円(税込)
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書は、「自分は他人より優れている」「この人では能力が不十分だ」という考えの下、アドバイスをし過ぎてしまう「アドバイス・モンスター」に焦点を当てている。アドバイス・モンスターにならないためには、前述の考えを「手なずける」ことが重要だ。手なずけるには、①きっかけを知る②自分のアドバイス・モンスター的な行動を認める③自分の行動に起因するメリットとデメリットを理解する④他者に共感できる謙虚なリーダーになることをイメージする、という四つのステップを踏めば良い。本書は自由記述のページもあり、自分がアドバイス・モンスターになっていないか確認もできる。