片手で跳ね上げられるVRゴーグル

エレコム
VRG-TL01BK

自由に視点を変えて視聴できるVR動画配信サービス「360Channel」や、VR・パノラマ動画共有サービス「ハコスコストア」など、スマートフォンで手軽に楽しめるVRサービスが増えている。VRコンテンツはヘッドマウントディスプレイ(HMD)で視聴すると没入感の高い体験が可能になるが、頭部を大きく覆うため周囲の確認などがしにくいという難点がある。生活空間での使いやすさを考慮し、HMDに代替できる手段として提案できるのがVRゴーグルだ。エレコムが提供するVRゴーグル「VRG-TL01BK」は、そうした手軽さが売りのガジェットだ。
text by 森村恵一

利用者の行動観察を踏まえて誕生

「VRG-TL01BK」は、ヘッドバンドを頭に装着したままでレンズと併せてゴーグル部分を跳ね上げられるチルトアップ機構が大きな魅力の“らくちん”なVRゴーグルだ。ヘッドバンドは、額の部分に固定される構造で、長時間の装着でも目元が圧迫されず痛くなりにくい。主にゴーグルとヘッドバンドで構成するVRG-TL01BKは、スマートフォンを差し込んで装着するフロント部分と、肌が当たるフェイスパッド部分に分かれる。フロント部分にはVR専用設計の非球面光学レンズが二つ装備されている。この専用レンズは、ゆがみが少なく視野角が広い。ゴーグルの上部にあるダイヤルで、レンズの左右の視野の幅やピントを調節可能だ。ちなみに、ゴーグルは眼鏡を装着したままでも利用できる。

 一方のフェイスパッド部分は、広い面積でしっかりとホールドする「ひたいパッド」と、光漏れを防ぎ優しく顔にフィットする「フェイスパッド」のダブルパッド構成だ。ヘッドバンドは、額の部分に固定される構造なので、長時間の装着でも目元が圧迫されず痛くなりにくい。実際の着け心地も軽く柔らかい。

 こうした跳ね上げやすさや着け心地の良さにこだわった背景には、VRゴーグルを使用するユーザーの使い方にある。エレコムが開発にあたり、既存のVRゴーグルを使用しているユーザーを対象に使い方を調査したところ、VRゴーグルは使用中に頻繁に一時停止してゴーグルを外すシーンが多いことが分かった。使用中に飲み物を飲んだり、周囲を確認したりするためだ。こうした動作は、従来のHMDのような構造だとゴーグルの着脱に手間がかかる。そこで、ヘッドバンドを頭に装着したままで周囲の確認などができる機構を備えたVRG-TL01BKが開発された。

 エレコムではVRG-TL01BKのほかにも、ヘッドホン一体型のVRゴーグル「VRG-EH03BK」を提供している。VRG-EH03BKは音も含めたVR体験ができるように、3点式のヘッドバンドで頭にしっかり固定される構造になっている。ゴーグル部分がヘッドホンと一体型なので、チルト機構はない。では、VRG-TL01BKはどうか。

 VRG-TL01BKでは、本体を着けたまま周囲が確認できる。ヘッドホン一体型のVRG-EH03BKも便利だが、昨今のBluetoothのワイヤレスイヤホンは高性能なものが多い。一例としてGoogle Pixelシリーズで利用できる空間オーディオに対応したワイヤレスイヤホン「Google Buds Pro」があり、イヤホンが別途必要な場合はそちらで十分代用できるだろう。純粋に使い勝手の面で見れば、チルト機構のあるVRG-TL01BKの方が、手軽さと音響体験における自由度が高いと言える。

(左)柔らかい手触りのひたいパッドとフェイスパッドはゴーグルのずれを防ぎながらしっかりとホールドする。
(右)スマートフォン装着時に頭に着けても、重さで頭部がぐらつかず比較的軽量だ。ゴーグルは片手で跳ね上げられる。

オムニバースやデジタルツインにも

 もう一つのビジネスへの市場可能性として、筆者はNVIDIAの提唱する「NVIDIA Omniverse」に期待している。NVIDIA Omniverseは、メタバースアプリケーションの作成および運用するための新たなプラットフォームだ。

 その活用事例の中に、自動車の生産ラインや実際の街を再現したデジタルツインの仮想空間がある。企業は、仮想化された空間で、実際の生産ラインをシミュレーションしたり、通信キャリアが基地局やアンテナを設置したりする場所を検証する。こうした仮想空間をレビューする際に、VRゴーグルが活躍する機会がある。手軽に視聴できるVRゴーグルは、企業へのオムニバース導入やデジタルツイン構築の提案に結び付けやすい。

 VRテクノロジーが見据える先には、リアル空間では困難な模擬操作や地球規模のシミュレーションなど、社会やビジネスの課題を解決する取り組みがある。そうしたVRの目指す先を伝えることで、新しいビジネスチャンスが生まれる。“らくちん”なVRゴーグルの存在は、仮想空間を新たなビジネスへと発展させる起爆剤になるだろう。