下水道管路のDXに関する連携協定
下水道管路の老朽化に端を発した、人命を落とす事故が複数発生している。痛ましい事故を再発させないためにも、自治体は早急に安全な下水道の維持管理方法を見つける必要があるのだ。下水道管路内で起きる事故を防ぐには、作業員が内部へ侵入せずに点検が可能な方法を探さねばならない。そこで今回は過去に起きた事故を契機に、NTT東日本と下水道管路のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する協定を結んだ、埼玉県行田市を取材した。
埼玉県行田市

埼玉県の北部に位置する人口7万7,104人(2026年6月1日時点)の都市。関東七名城の一つ「忍城」、9基の大型古墳が群集する「さきたま古墳公園」、行田蓮が約10万株、世界中の蓮41種類約2万株が咲き誇る「古代蓮の里」、行田市の総鎮守神社とされる「行田八幡神社」が開始した「行田花手水」といった観光スポットがある。 写真提供:行田市
下水道管路内での事故再発を防ぐ
下水道インフラの老朽化とそれに伴う維持管理は、全国的な問題になっている。2025年8月2日には埼玉県行田市において、下水道管路内の清掃作業中に4名が命を落とす事故が発生した。同市はこの事故を受け、二度とこのようなことが起こらないよう、さまざまな方向から検討を重ねた。
そうした中で再発防止の観点の一つとして、作業員が管路内に入らず点検を行う方法に着目したのだ。そこでNTT東日本の技術を活用した、ドローンによる下水道管路の点検に至った。このような流れを踏まえて行田市は、2026年2月5日に、NTT東日本の埼玉事業部と「下水道管路のDXに関する連携協定」を締結した。
行田市役所 都市整備部 下水道課 工務担当 大池武史氏は、本協定について「NTT東日本さまと当市が相互に連携・協働し、行田市域における下水道管路のデジタル化を推進して、維持管理業務の安全性の確保や業務の効率化などを図っていきます。市民の安心安全な生活環境の維持向上を目的とした協定です」と締結の目的を話す。
NTT東日本 埼玉事業部 まちづくり推進担当 岡本 理氏も、締結の背景をこう語る。「下水道管路の老朽化により維持管理の重要性が増す一方、点検では狭くて暗い場所を移動するため、作業員の安全確保と作業負担が課題になっていました。そこで、DXで『安全×省人化×予防保全』へ転換することを目的に、協定を締結しました。ドローン点検・AI解析・データ管理を組み合わせ、人手に依存する点検から効率的かつ安全な管理手法へ転換し、予防保全型の維持管理の実現性を検証していきます」

DXで維持管理業務の安全性を確保
下水道管路のDXに関する連携協定の締結期間は、2026年2月5日〜2027年3月31日となる。協定内容は、安全性確保・業務効率化・市民の安全安心に資する、行田市域の下水道管路のデジタル化推進だ。なおNTT東日本は、NTT e-Drone Technology、NTTインフラネットとの連携によりDX推進に関する取り組みを進めていく。
では、具体的にどのような取り組みを進めるのだろうか。その内容は二つある。一つ目は、AIを活用したデータ解析手法の検討だ。ドローンなどで取得したデータをAI解析技術で自動解析し、点検作業員による点検内容のばらつきの解消を目指す。これにより、点検精度の向上および効率化を図っていく。
この取り組みでは、NTT e-Drone Technologyの産業用ドローン「ELIOS 3」を利用する。ELIOS 3のみで管路約3.8kmの点検調査を行い、飛行と同時に点群データを取得し、管路内を三次元で可視化していく。そしてそのデータを、同社が提供するインフラ点検向けAI画像解析サービス「eドローンAI」で分析し、ひび割れ・腐食を診断するのだ。
二つ目は、GIS(地理情報システム)を活用した管理台帳の高度化だ。ELIOS 3で取得したデータの一元管理方式と共に、点検記録との連携による地図表示および可視化手法を実現化するための検討を行う。この取り組みには、NTTインフラネットが提供する維持管理ソリューション「下水道スマートメンテナンスツール」を活用する。さらに本ソリューションにて、点検表の自動作成も実施する。また、そのほかの資産管理の効率化やデジタル化を目指した仕組みの検討も併せて行っていく。
これら二つの取り組みで使用するELIOS 3、eドローンAI、下水道スマートメンテナンスツールを連携させ、一気通貫の点検・診断・管理を実証していくのだ。ちなみに本協定において、行田市はドローンによる点検データの提供・実証実験に対する効果検証のフィードバックを、NTT東日本はプロジェクトの全体統括を行う。そのほかNTT e-Drone Technologyはドローンによる現地点検、AI解析技術の提供・分析結果の提供、比較検証、実用性評価を、NTTインフラネットは下水道スマートメンテナンスツールの提供・検証・運用支援に取り組む。
“管内ノーエントリー”を目指す
岡本氏は本実証について、「ノーエントリーによる点検を起点に、解析・データ管理まで実装が行えることを検証します」と今後の目標を語る。
大池氏も、今後の展開を次のように話す。「今回の連携協定ではNTT東日本さまの技術を活用し、危険な下水道管路の人的作業を減らして、AI画像解析で調査の品質を落とさずに現場作業を改革する運用を実証します。本実証で得られた成果を基に、下水道点検をはじめとしたインフラ設備の維持管理について、安心・安全な新スタンダードを目指します」
続けて大池氏は、本協定を踏まえた行田市の展望をこう語る。「市民の生命と財産を守るという責務を果たすべく、技術革新を積極的に取り入れながら、安心・安全で持続可能な下水道施設の管理と運営に全力で取り組んでいきます。また、安全な下水道管路点検を推進するための“管内ノーエントリー”の実現に取り組みます」
岡本氏も、NTT東日本の展望を以下のように話した。「当社は“地域のミライを支える価値創造”の観点から、通信インフラで培った保守・運用の知見を生かして、通信事業以外の社会インフラ分野にも取り組んでいきます。その中で下水道DXの分野では、安全確保と人手不足の課題に対して、維持管理の安全性・効率化に貢献します。また行田市での実証を起点に、自治体・事業者と連携しながら、安心・安全な維持管理モデルの社会実装を広げていきます」

