顧客のAI環境を守るためにAIを活用する
トレンドマイクロの取り組みとは

7月3日、トレンドマイクロはサイバーセキュリティカンファレンス「TrendAI Spark 2026」の開催に合わせ、報道向けのランチセッションを開催した。AIの高度化が進むにつれて、サイバー攻撃も高度化してきている。そうした中で同社は、グローバルおよび日本でどのようなビジネスを展開するのだろうか。顧客のAI環境を守るために、AIを活用する同社の取り組みを詳しくレポートしていく。

各分野に特化した企業やブランドで
全般的にセキュリティを届ける

同社の概要を語るトレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏。

 会見の序盤はトレンドマイクロ 取締役副社長 大三川彰彦氏が登壇し、トレンドマイクロの概要を次のように話す。「当社は37年間、日本の会社として存在しています。今現在トレンドマイクログループは、五つの特化した分野で活動しています」

 五つの特化した分野について、大三川氏はこう説明を続ける。「五つの分野とは、OTに特化したセキュリティ企業『TXOne Networks』、自動車用途のセキュリティ専門企業『VicOne』、AI全般のコンサルティング業務をする企業『Magna AI』、コンシューマービジネスに特化したブランド『TrendLife』、そしてAIエンタープライズ・デジタル世界を守る法人向けサイバーセキュリティブランド『TrendAI』です。このように当社は、さまざまなレイヤーに専門のセキュリティ企業やブランドを作り、混沌とするAI時代の中でも全般的にセキュリティを届けているのです」

トレンドマイクロが特化している五つの分野。各分野に企業やブランドを持ち、セキュリティを全般的に届けている。

2桁成長の売り上げを記録
デジタルツイン技術も活用

TrendAIの売り上げを話すトレンドマイクロ 最高プラットフォーム責任者(CPO) 兼 最高TrendAI事業責任者(CBO) レイチェル・ジン氏。

 大三川氏に続いて、トレンドマイクロ 最高プラットフォーム責任者(CPO) 兼 最高TrendAI事業責任者(CBO) レイチェル・ジン氏と、トレンドマイクロ 執行役員 TrendAIマーケティング本部 本部長 エバンジェリスト 福田俊介氏が登壇し、グローバルと日本におけるビジネスのアップデートを話した。 まずはジン氏が、TrendAIの売り上げのハイライトをこう話す。「TrendAIは今年の第一四半期に、グローバルで13億ドルの年間経常収益を上げました。2桁成長の売り上げとなり、前年比11%の成長を記録しています。各地域の売り上げも、全ての地域でプラス成長でした。その中でも特に、AI時代を安心して勝ち抜くためのセキュリティプラットフォーム『TrendAI Vision One』が最も戦略的な製品になっています。国別の年間経常収益では日本が第2位になり、第一四半期では前年比100%の成長となりました。そしてお客さまが利用するTrendAI Vision Oneの拡張ソリューションでは、サイバーリスクエクスポージャー、AI SOC、エンドポイント、クラウド、サービス、メールが主要なものとして挙がりました」

日本におけるビジネス状況を語るトレンドマイクロ 執行役員 TrendAIマーケティング本部 本部長 エバンジェリスト 福田俊介氏。

 続いては福田氏が、日本におけるビジネス状況を次のように説明する。「TrendAI Vision Oneは、さまざまなレイヤーに向けてソリューションを提供しています。グローバルでは四つ以上のソリューションを利用するお客さまが多い一方で、日本は2~3個使用するお客さまが多いです。その理由として、サイバーセキュリティを主管する部門の体制が、日本とグローバルで異なっていることがあります。米国やヨーロッパのように、トップに最高情報セキュリティ責任者(CISO)がいる体制が取れている場合は、さまざまなソリューションを一つのプラットフォームへまとめることが合理的に進みます。そのため、四つ以上のソリューションを利用している割合が多くなります。一方日本は、長年エンドポイントビジネスをやってきた流れがあります。その流れを踏まえ、単一製品から始まり、2~3個のソリューションへ広げていく動きが非常に強くなっています。大きな傾向は変わりませんが、日本ではまだ四つ以上のレイヤーでソリューションが採用される割合が、やや少なくなっています」

 また福田氏は、TrendAI Vision Oneのテクノロジーについてこう話す。「我々はエンドポイント向けやクラウド向けなど、それぞれに向けてバラバラのサービスを提供してきました。ですがそれはもうやめて、今は一つのコンソールにあらゆるものを集め、統合管理していく発想をプラットフォームとして提供しています。AI環境を守るのはもちろん、我々自身がAIをふんだんに活用し、お客さまのサイバーセキュリティを守ることに力を入れて投資しています」

 さらに福田氏はテクノロジー面のアップデートとして、TrendAI Vision Oneに組み込まれているデジタルツイン技術に触れる。「お客さまの環境のデータを取り込み、デジタルツインを作っています。このデジタルツインを使い、攻撃者の視点から外部に暴露しているポイントを検証します。お客さまの本番環境で脆弱性のテストを行わないので、本番環境に影響を与えることなく、セキュアな状態になっているかを確認可能なのです」

TrendAI Vision Oneではデジタルツイン技術が使われている。本番環境に影響を与えず、脆弱性に関するテストが行える。

 ジン氏も、TrendAI Vision Oneのテクノロジーについてこう話す。「TrendAI Vision Oneはオープンなプラットフォームです。そのため、現在900以上のサードパーティーのログを取り込んでいます。こうしたデータをベースに、私たちは適切なAIインテリジェンスを作っています。また、2024年に発見された脆弱性のうち、73%はTrendAIが発見しています。なぜこれが可能かというと、TrendAIは内部と外部で2万人以上のリサーチャーを抱えているからです。さらに我々は、お客さまを正規パッチ公開の96日前から保護できます。これは、我々が20年にわたって運営しているハッキングコンテスト『Pwn2Own』によって実現しています」

内部と外部に2万人以上のリサーチャーを抱えている。これにより2024年に発見された脆弱性のうち、73%はTrendAIが公表している。

AnthropicやAWSと強力な
パートナーシップを構築

 ジン氏は同社のグローバルにおけるパートナーシップの取り組みとして、Anthropicとの協力について触れる。「今年はAnthropicと積極的に交流を行っています。しかしこのパートナーシップは、今年だけで終わるものではありません。我々はAnthropicが提供するAIモデル『Claude Opus 4.8』を導入したり、同社が立ち上げたAI活用サイバーセキュリティプログラム『Project Glasswing』に参加したり、同社が提供する『Claude Compliance API』をTrendAI Vision Oneに統合したりといった取り組みを進めています」

トレンドマイクロはAnthropicと緊密な協力関係を築き、AIセキュリティの強化に取り組んでいく。

 最後に福田氏は、日本におけるパートナーシップの取り組みをこう話した。「AWSさまとは非常に強力に連携しています。例えば2026年4月24日には、AWSを活用してコスト削減、俊敏性の向上、イノベーションの加速を実現しているトップAWSパートナーを表彰する『Regional AWS Partner Award』を受賞しています。AWSさまとの協業は引き続き拡大・強化をする予定ですので、注目していてください」