スパコンで使われているテクノロジーが
CPU、GPU、ソフトまでAI PCでも使える
日本AMDのAI市場への取り組み
日本AMDは2026年6月17日、報道関係者向けのラウンドテーブルを開催し、AMDのAI領域への取り組みの説明やAMDプロセッサーを搭載したAI PCでのローカルAI処理の実演などを行った。同社はAIへの取り組みに最も力を入れており、その取り組みはプロセッサーにとどまらずソフトウェア領域にも拡大していることをアピールした。
最大60TOPSのNPUを内蔵する
AMD Ryzen AI 400シリーズ

コマーシャル営業本部
セールスエンジニアリング
担当マネージャー
関根正人 氏
日本AMD コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング 担当マネージャー 関根正人氏は「AIの利用が企業での日々の日常業務をはじめ、ゲームや製造業での開発など、あらゆる領域に拡大しています。AIの利用を実感していなくても、気づかないうちにAIを使っているケースがあるほど、AIが浸透してきています」とAIの普及について説明する。
そして「こうした状況の中でAMDはAI市場に最も力を入れています」と強調し、データセンターやサーバー、そしてAI PCなど、AIが使われるあらゆるハードウェアにプロセッサーを提供していることをアピールした。
その中で最新の話題となるのが「AMD Ryzen AI 400」(以下、Ryzen AI 400)シリーズだ。Ryzen AI 400はCPUに「Zen 5」、GPUに「RDNA 3.5」、NPUに「XDNA 2」と、それぞれAMDの最新アーキテクチャを採用しており、しかもこれらを一つのチップに統合している。AIの処理性能の指標の一つであるNPUの処理能力は最大60TOPSを誇り、マイクロソフトのCopilot+ PCにも対応する。
ラインアップの中からRyzen AI 400シリーズの最上位となるRyzen AI 9 HX 475/470を取り上げてスペックを紹介した。関根氏は「Ryzen AI 9 HX 475/470のCPUコアは12個で24スレッドとなっており、これはスーパーコンピューターに使われているスペックと遜色ありません」と強調する。
CPUに関しても「RDNA 3.5のRadeonグラフィックスが16ユニット内蔵されています。16ユニットと言われてもピンとこないかと思いますが、これは外付けのグラフィックスボードと同等のリソースが内蔵されているというイメージです」と、AMDが得意とするグラフィックス処理に関してもプロセッサー内蔵であっても非常に高いパフォーマンスを発揮すると説明した。
そしてNPUについても最大60TOPSの処理性能を発揮し、プロセッサー全体でのAI処理能力の高さについてAMDプロセッサーの優勢を改めて強調した。


GPU市場はもはや一強ではない
ローカルAI向けソフトも提供
またデータセンター向けのビジネスについて関根氏は「データセンター向けのGPUはNVIDIAが一強というイメージが浸透しているようですが、実はAMDも非常に元気があります」と説明した。AMDはデータセンター向けのGPUとして「AMD Instinct アクセラレーター」(以下、Instinct)シリーズを提供している。
InstinctシリーズはAIやディープラーニング、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)のワークロードに特化して設計されたデータセンター向けのGPUアクセラレーターで、PC向けのRadeonとは異なる製品となる。
AMDはInstinctシリーズなど同社のGPUでAI処理やHPCなどの大規模計算を高速化するためのオープンソース・ソフトウェアスタックである「AMD ROCm(Radeon Open Compute)」(以下、ROCm)を提供している。ROCmはドライバーやコンパイラ、開発ツールなど全てがオープンソースで提供されており、特定の環境に依存しない。同様のプラットフォームとしてNVIDIAの「CUDA」があるが、ROCmはCUDAとの互換性も備えている。
関根氏は「データセンター向けGPUが使っているROCmによるソフトウェア資産を、そのままクライアント(PC)上でも動かせます」と説明し、Ryzen AIを搭載するAI PCでのローカルAIアプリケーションの開発、利用に関する優位性をアピールした。
なおInstinctシリーズは現在、CDNA 4アーキテクチャを採用したInstinct MI350シリーズが提供されているが、次世代のCDNA 5アーキテクチャを採用するInstinct MI400シリーズが2026年に登場すると見られている。
ユーザーが意識して選ばなくても
AI PCがPCのスタンダートになる

営業推進統括部
町田優祐 氏
AMDプロセッサーの説明に続いて、AI PCを開発、提供するメーカーである富士通パーソナルズの営業推進統括部 町田優祐氏が登壇し、AI PC市場の見通しについて話をした。
町田氏はPCのCPUプラットフォームのトレンドについて「現在は各プロセッサーメーカーからAI PCに非対応のCPUも提供されていますが、その供給量は段階的に減少していきます。一方でCopilot+ PC対応CPUの供給量は増加を続け、2027年度ごろには主流となる傾向が強まり、2028年度ごろには安定的な選択肢として定着すると予想しています」と語った。
町田氏はAI PCあるいはCopilot+ PCが主流に貼るのは2027年度から2028年度と予測したが、実際の導入は「今」すべきだと強調する。その理由は「AIの進化とPC性能」と「AI人材育成」の二つの観点にあるという。
まずAIの進化とPC性能について、現在はクラウドAIの利用が主流だが、ローカルAIが進化して普及が急速に進み、AIの実行に最適化されたPCが求められるようになる。またクラウドAIも同様に進化を続けるが、一方でクラウドAIの利用に伴う通信コストやトークンコストがかさみ、ローカルAIの活用が必要になる。その際に非AI PCでは、業務の生産性が低下してしまう。それに備えて今からハイスペックなNPUを搭載するAI PCを導入しておくべきだという。
また進化を続けるAIを使いこなせる人材の育成も欠かせない。AI PCがPCのスタンダートになるころにAI PCを導入してAI利用を本格化しても、すぐにAIを使いこなすことはできない。そのため今からAI PCを導入して早期にAIに触れる必要があるという。
町田氏は「AI PCの導入には、他社に対して一歩先に進んだ取り組みのように感じるかもしれませんが、本格的にAIを活用するにはどのAIを使うか、AIにどう向き合うのかなど事前に検討すべき事柄がたくさんあり、時間がかかります。2028年にはAI PCを使う企業が半分以上になると見られますが、そこに向けて今からAI PCを導入して(ツールとスキルの両面で)備えておくべきです」とアドバイスした。



