昨年夏、ダイワボウ情報システム(DIS)がAIエージェント開発促進に向けて日本マイクロソフトと協力して開催した技術コンテスト「Microsoft Copilot DIS Agent Cup」の第二弾となる「DIS × Microsoft Agent Cup in KANSAI」が2月18日に大阪TKPカンファレンスセンターで開催された。

今回は5チームが参加し、Microsoft Copilot Studioを使ってAIエージェントのビジネスアイデアと、それを実現する技術力を競い合った。

事業化を目指す5チームが参加
発表順はAIエージェントが決定

 DIS × Microsoft Agent Cup in KANSAI(以下、Agent Cup)は、AIエージェントのビジネスアイデアを発想し、それを「Microsoft Copilot Studio」(以下、Copilot Studio)を使って実際に稼働するAIエージェントを開発する技術コンテストだ。

 Copilot Studioは業務を自動化するAIエージェントやAIチャットボットなどが、ローコード/ノーコードでGUIによる直感的な操作で容易に作成できるツールだ。またTeamsやPower Platformとの連携も容易で、これらを組み合わせることで多様なAIエージェントアプリケーションを開発できる。

 こうしたCopilot Studioの特長が参加チームのメンバーに反映されていた。今回はユニバーサルコンピューター、カコムスホールディングス、ASAHI Accounting Robot 研究所、NDIソリューションズ、エービーケーエスエス(発表順)の5チームが参加したが、いずれのチームもエンジニアではないメンバーが中心となって構成されていた。

 参加者からは「技術力も大切ですが、実際のビジネスにつなげられるアイデアがより重要だと考えており、他社がどのようなアイデアを発表するのかに興味があります」という声が多く聞かれた。

 ちなみに参加5チームの発表順は、司会を務めたDISの関口和人氏がCopilot Studioを使って作成したAIエージェントアプリケーション「Agent Cup 順番抽選エージェント」によって決められた。プロンプトに「最初の発表チームを決めてください」と入力するとチームの社名が回答されるシンプルなアプリケーションだが、AIエージェント開発が身近に感じられる、良いデモンストレーションとなった。

 発表に先立ち審査員から審査内容が説明された。審査を担当したのは日本マイクロソフトからは業務執行役員 コーポレートソリューション事業本部 チャネルパートナー技術本部 本部長 内藤 稔氏とコーポレートソリューション事業本部 チャネルパートナー技術本部 シニアクラウドソリューションアーキテクト 曽我拓司氏、DISからは西日本営業本部 副本部長 吉川晃平氏と販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部 部長 塚本小都氏の4名だ。

 審査基準は「イノベーション」「ビジネスモデル」「ビジネスインパクト」「実行計画と技術的な実装」「ユーザーエクスペリエンス」の五つの項目で、各項目において5段階で評価される。イノベーションではアイデアの創造性と競合他社との差別化、ビジネスモデルでは明確性や成長性、持続可能性、競合優位性などが評価されることに加え、ビジネスに与えるインパクト(効果)やアイデアを実現する技術力、ユーザー視点での利便性や効果も重視される。

DIS × Microsoft Agent Cup in KANSAIの審査員

日本マイクロソフト
業務執行役員
コーポレートソリューション事業本部
チャネルパートナー技術本部
本部長
内藤 稔
日本マイクロソフト
コーポレートソリューション事業本部 チャネルパートナー技術本部
シニアクラウドソリューション
アーキテクト
曽我拓司
ダイワボウ情報システム
西日本営業本部
副本部長
吉川晃平
ダイワボウ情報システム
販売推進本部
クラウド・アプリケーション販売推進部
部長
塚本小都

案件と要員のマッチング
事業計画と整合した人材配置

 発表は開発したAIエージェントの紹介が10分程度、デモンストレーションが5分程度、審査員との質疑応答が5分程度の持ち時間で進められた。発表はユニバーサルコンピューターのチームから始まった。

 同社は1973年創業の老舗独立系SIerで、金融・製造・流通業向けの基幹システム開発や、自動車・FAロボットの制御ソフトウェア開発、ICTインフラの設計・構築・運用をワンストップで手がける。

 同社では顧客からシステム開発の依頼があると、社内だけではなく協力会社から要員を集めてプロジェクトチームを編成する。その際に顧客の案件情報と協力会社の要員情報をマッチングさせて適切な人材を選抜する。

 協力会社からの要員情報はさまざまなデータ形式があり、調達担当者は手作業でこれらの情報を確認して案件情報に応じた要員を探している。そこでこの作業を効率化するためのAIエージェント「非定型な情報を活用できる資産に変える スキルマッチングエージェント」を開発した。

 Outlookで協力会社から受信したさまざまなフォーマットの要員情報をAIエージェントが定型データに整理し、SharePointに保管する。また受け取った要員情報とSharePointに保管されている要員情報の重複を推測する。こうして整理された情報を一覧で検索・照会したり、面談結果を追記したりするなど要員情報を一元管理する。そして登録された要員情報から案件ごとにふさわしい要員をチャット形式でマッチングするという仕組みだ。

 このAIエージェントは試用を通じてチューニングが進められており、今年6月から要員調達部門に展開する計画だという。

 続いてカコムスホールディングスが「全社員のスキルを可視化 人材の“適材適所”をAIエージェントで実現します」のタイトルで発表した。同社は1971年創業の老舗独立系SIerで、企業の基幹システム(生産・販売・在庫管理など)のコンサルティングから設計・開発、運用・保守までをワンストップで提供している。近年はMicrosoft 365の導入・運用やVR・MR技術を活用した独自のビジュアルコンテンツ事業も展開している。

 同社では人材データに関してデータがサイロ化しており、事業計画と要員計画の不整合が恒常化しているという。また人材評価が職務経歴書や場長評価など定性的・属人的になっており、人材の配置検討に膨大な工数がかかり、意思決定の遅れから機会損失や人材と職場のミスマッチも生じているという。

 ただし同社は以前よりiCD(iコンピテンシ ディクショナリ)に準拠した約500項目の詳細スキル定義を採用しており、データが蓄積されている。そこで全社員のスキル、経歴、組織データを統合し、AIがクロス分析をすることで、将来予測に基づいた配置シミュレーションを実現するAIエージェントの実現を発表した。またUIを一つの入力窓から操作できるようにすることで、アプリケーションを開くだけで必要な情報に即座に到達するUXも実現する。

 現在はスキル診断登録とアプリケーションの中核となるiCDデータのAI分析までが開発されており、PoCを進めている最中だ。今後は最適配置提案、研修・スキル向上に向けた提案、事業計画と整合した要員計画の提示へと開発を進めていく計画だ。

Copilot Studioを使い開発に取り組む参加チーム。今回参加した5チームのメンバーは、いずれもエンジニアではないメンバーが中心となって構成されたという。

Microsoft 365の運用業務と
情報シスのユーザー対応を効率化

 ASAHI Accounting Robot 研究所は「メッセージセンターのことなら俺に聞け」というAIエージェントを発表した。同社はあさひ会計グループのRPA専門企業だ。士業事務所や中小企業向けにRPAやクラウド会計の導入を支援しているほか、Power PlatformやAIを活用した業務効率化コンサルティング、さらにロボット開発を行っている。

 発表において着目したのはMicrosoft 365管理センターのメッセージセンターから通知されるメッセージの管理を支援するAIエージェントだ。Microsoft 365管理センターのメッセージセンターではMicrosoft 365のサービス変更や追加された新機能、計画メンテナンスのスケジュールなど重要なお知らせをユーザー企業の管理者に通知する。

 このメッセージセンターに投稿された通知(メッセージ)は、過去90日間のメール情報を確認できる。メッセージセンター自体は全履歴を確認可能だが、目的の情報を探し出すのに手間がかかるという。そこでメッセージセンターのメッセージの蓄積と検索性を改善し、多言語対応で利用できるAIエージェントを開発した。

 このAIエージェントではメッセージセンターのメッセージをMicrosoft Dataverseに蓄積し、AIエージェントに目的の情報の抽出を指示する。その際に使用する言語を指定できる。このAIエージェントは用途が絞り込まれたものだが、Microsoft 365管理センターのメッセージセンターからのメッセージの管理とその対応に手間をかけている管理者が多く、ビジネスチャンスは大いにあるとアピールしている。

 NDIソリューションズはTeamsでやりとりされる社員から情報システム部門への質問と、情報システム部門からの回答を収集してナレッジ化し、質問に瞬時に回答するAIエージェントを発表した。同社は日本電通グループのSIerとして、製造、流通、サービス業など多様な業種で大企業から中小企業まで、基幹システムを中心にDX推進を支援している。また業務効率化やデータ活用を目指す企業に対し、AIやRPAを活用したシステム基盤の企画・開発・構築から運用・保守までを一貫してサービス提供している。

 発表したAIエージェントでは社員からの質問に過去の情報から瞬時に回答し、情報が不足していれば情報システム部門に質問を転送する仕組みで、問い合わせ業務の効率化を実現する。こうした問い合わせ業務や情報検索の効率化は全ての企業に共通した課題の解決に対応でき、情報システム部門に限らずさまざまな部門・部署の業務に対応できるビジネスの可能性があるとアピールした。

システム開発プロジェクトにおける要員調達の作業効率化を図るAIエージェント「非定型な情報を活用できる資産に変える スキルマッチングエージェント」を発表したユニバーサルコンピューター。
Teamsでやりとりされる社員から情報システム部門への質問と、情報システム部門からの回答を収集してナレッジ化し、質問に瞬時に回答するAIエージェントを発表したNDIソリューションズ。

建築業での施工リスクの予見警告
受賞2チームがイベントに出展

 エービーケーエスエスは「設計AI田中部長」というユニークな名称のAIエージェントを発表した。同社は製造業や建設業を対象に、CAD/CAM/CAE/BIMソフトの提供、システムインテグレーション、ITインフラ構築および技術サポートなどを展開しているIT系商社だ。

 建築業界では過去の施工トラブルや設計変更の経緯が属人的になりやすく、社内ナレッジとして蓄積されていない企業が多い。その結果、若手担当者が過去と同じミスを繰り返したり、膨大な類似書類をゼロから作成したりすることで長時間労働や品質がバラつくなどの問題が生じる。

 そこで過去の情報を蓄積して、その情報から実務者の業務を支援するAIエージェントとして「設計AI田中部長」が開発された。このAIエージェントでは過去の情報をSharePointに蓄積する。AIエージェントに新規案件の条件(立地・構造・用途)を入力すると、過去の類似案件で発生した設計変更やトラブル、有効だった対策を回答してリスクを予見警告する。

 また特定の地域や建物条件に基づいて「なぜその設計変更が必要だったか」という背景を含めた過去事例を瞬時に抽出できるナレッジ検索や、過去の類似案件で使用した帳票類のデータが入ったフォルダー情報を提示し、書類作成の効率化と品質の均一化するなどの機能も実装する。

 これら5チームの発表が終了し、審査員による最優秀賞と優秀賞、そして特別賞の審査が別室で行われた。審査の結果、審査員の満場一致でカコムスホールディングスが最優秀賞を獲得した。

 審査員を務めた日本マイクロソフトの内藤氏は「独自に蓄積したデータを生かしたAIエージェントである点と、業務のシナリオ、実装のレベル、プレゼンテーションの内容など審査員の全員が高く評価しました」と説明をした。

 優秀賞はエービーケーエスエスが受賞した。評価についてDISの吉川氏は「業務の課題と利用効果のシナリオが明確で、営業としても売りやすく、すぐに商材化できそうな完成度の高さを評価しました」と説明した。

 そしてASAHI Accounting Robot 研究所が特別賞を受賞した。発表について日本マイクロソフトの曽我氏は「このAIエージェントは私も使いたいと思いました。この用途に限らず一時的に提供されて消えてしまう情報というのはたくさんありますから、さまざまな用途に応用できると期待しています」とコメントした。

 最優秀賞と優秀賞を獲得したチームには2026年6月11日から12日の2日間、大阪のグランフロント大阪 コングレコンベンションセンターで開催される「日経クロステックNEXT 関西 2026」(主催:日経BP)のAIエージェントパビリオンの日本マイクロソフトブースに出展する権利が授与された。

 DISの塚本氏は「日経クロステックNEXT 関西は規模の大きなイベントで来場者数が多く、日本マイクロソフトのブース内に出展できるため集客も期待できます。前回の受賞チームは会場で多くの引き合いを獲得し、商談につながった案件もありました」と説明した。

DIS × Microsoft Agent Cup in KANSAI 受賞企業

最優秀賞を獲得したカコムスホールディングスのメンバーと審査員。審査員の満場一致で最優秀賞が決まった。
優秀賞を獲得したエービーケーエスエスのメンバーと審査員。
特別賞を受賞したASAHI Accounting Robot 研究所のメンバーと審査員。