
200個のAIエージェント開発が目標
Agent Cupを通じて市場を活性化
人材不足が深刻化する中で、人手を補う解決策としてAIエージェントへの期待が高潮している。商機が熟すとともにAIエージェントに必要な生成AIサービスや開発ツールがそろっており、いつでもAIエージェント市場に参入できる環境も整っている。しかし参入が遅れている企業が少なくない。そこでダイワボウ情報システム(DIS)は日本マイクロソフトと協力し、AIエージェント開発促進に向けて「Microsoft Copilot DIS Agent Cup 2025 夏」を今年8月19日に開催した。本稿では3回にわたって同イベントをレポートし、AIエージェントのソリューション開発とビジネス展開の具体例を紹介する。
他社と競い合うコンテストで
AIエージェント開発のスキルを磨く

業務執行役員
コーポレート
ソリューション事業本部
チャネルパートナー
技術本部
本部長
内藤 稔 氏
マイクロソフトはローコード/ノーコードでAIエージェントが開発できるツール「Microsoft Copilot Studio」(以下、Copilot Studio)を提供している。Copilot Studioは業務を自動化するAIエージェントやAIチャットボットなどが、GUIによる直感的な操作で容易に作成でき、Microsoft TeamsやPower Platformと連携して容易に社内展開できるなどの特長を持つ。
またMicrosoft 365 Copilotの契約があれば一部機能制限はあるが回数無制限に利用できるほか、同契約がなくても単独で利用でき、2万5,000メッセージ単位のパック購入あるいは使った分だけ支払うAzure課金の従量制で利用できるなど、導入のハードルが低いことも魅力となっている。
そこで日本マイクロソフトではCopilot Studioを実践的に使いこなすためのハンズオンセミナーを開催するなど、パートナーのAIエージェント開発の支援やAIエージェント市場の活性化に取り組んでいる。
さらに日本マイクロソフトの業務執行役員 コーポレートソリューション事業本部 チャネルパートナー技術本部 本部長 内藤 稔氏は「AIエージェント市場でビジネスを成長させるには、開発ツールであるCopilot Studioを使うスキルだけではなく、顧客のニーズを捉え、それをソリューションに反映できるスキルも必要です。より競争力の高いソリューションを生み出すには単なるトレーニングよりも、他社と競い合うコンテストの方が成果を期待できると考え、Copilot Studioを使った技術コンテスト『Microsoft Copilot DIS Agent Cup』(以下、Agent Cup)に協力することにしました」と説明する。
単なる技術コンテストではなく
ビジネスの可能性も重視して評価
Agent Cup 2025 夏はDISの全国のパートナーを対象に実施された。参加対象にDISのパートナーを選んだ理由について内藤氏は「DISさまは全国に拠点を置き、各地域のあらゆる業種・規模のお客さまとつながっているパートナーと連携しています。そうしたDISさまのパートナーに参加いただくことで、さまざまな視点でバラエティー豊かなソリューションが発表されることを期待しました。Agent Cup 2025 夏で発表される幅広いソリューションを市場に紹介することで、それを参考にしたCopilot StudioによるAIエージェント開発が活性化すると考えています」と説明する。
Agent Cup 2025 夏にはDISを含む合計10社が参加し、今年8月19日に日本マイクロソフトの品川本社で開催された。各チームはあらかじめ想定する顧客ターゲットや適用する業務、ソリューションの機能等の仕様などを決めておき、開催当日にCopilot Studioを使って制限時間内にAIエージェントを作成して発表した。
そして内藤氏を含む合計4名の審査員による審査の結果、「営業サポートアシスタント」を発表したピーピーティーが特別賞を、「災害時の避難所案内エージェント」を発表したエーティーエルシステムズが優秀賞を、「推薦状エージェント」を発表したティーケーネットサービスが最優秀賞を獲得した。
審査について内藤氏は「参加10社のソリューションはいずれも実際に顧客が直面している課題を取り上げており、商材として説得力がありました。技術的にも全体的にレベルが高く、テーマが重複しなかったことに驚きました」と振り返る。そして「受賞した3社の発表はビジネス化という観点で優れていました」と説明する。
成果の共有や認知拡大も支援
商談につながる成果も出ている
Agent Cupは実際のビジネスにつながるAIエージェント開発のスキルを磨き、成果を発表する場を提供するだけではなく、参加チームの発表内容を公表することでAIエージェント開発の知見を開発者に広く共有したり、会場で作成したAIエージェントの商談獲得につなげたりする支援も実現している。
さらにティーケーネットサービスとピーピーティーには特典として今年10月16日と17日に東京国際フォーラムで開催されたAIエージェント展示会「日経クロステック NEXT 東京 2025」のマイクロソフトブースへの出展が招待され、2日間で400名以上が訪れた。現在、同社の推薦状エージェントは導入を検討する顧客との商談が進んでいる。次回はティーケーネットサービスの推薦状エージェントの紹介や開発の経緯、ビジネス展開について詳しくレポートする。
Agent Cupの今後の展開について内藤氏は「初回のAgent Cup 2025 夏でさまざまな成果が得られたので、今後も開催をお願いしたいと考えています」と話す。
また次の開催に向けて「Copilot Studioの機能を軸にソリューションを作るのではなく、ニーズをAIエージェントに反映するアプローチで作ったソリューションを期待しています。Copilot Studioで実現できないことがあれば、Copilot StudioはMicrosoft 365だけではなくAzureなどマイクロソフトのさまざまなテクノロジーと連携できますので、それらを連携させて機能を実装してください」とアドバイスする。
最後に内藤氏は「AIエージェントはさまざまな業務を社員に代わって行ってくれますので、たくさんのAIエージェントを開発・提供して顧客の人材不足対策に貢献してください。Agent Cupを通じてAIエージェント開発を促進し、できるだけ早期にDISさまのパートナーに200個のAIエージェントを作っていただくことを当面の目標としています。それがユースケースとなりAIエージェント開発を加速させ、市場拡大につながると考えています」と意気込みを語った。
そしてDIS 販売推進本部 クラウド・アプリケーション販売推進部 部長 塚本小都氏は「今回のMicrosoft Copilot DIS Agent Cup 2025 夏ではパートナーさま独自の視点で多種多様なAIエージェントを発表いただき、実際のビジネスにつながる成果を感じることができました。今後も日本マイクロソフトさまと連携し、 Copilot Studioをはじめとする最新テクノロジーの普及と、AIエージェント開発の知見・ユースケースの拡大を推進していきます」と意気込みを語った。
今後は九州エリアでのハンズオントレーニングや、大阪会場でのDIS Agent Cup の開催を企画している。また今回のイベントのように実施後にパートナー自身の案件創出につながるような場を設け、継続的に全国のパートナーと共に日本市場のAIエージェント活用を加速させていく計画だ。






