学習と校務のDX

児童生徒1人に1台の学習者用端末と、高速大容量のネットワーク環境が整備されたGIGAスクール構想。そのGIGAスクール構想第2期における端末更新も2025年度にピークを迎え、教育現場のICT活用は次のフェーズへと進みつつある。校務DXや生成AI活用など、学びと働き方改革を支える最新施策を整理する。

2025年度にピークを迎えた端末更新

文部科学省
初等中等教育局
学校情報基盤・教材課
課長補佐
小林美陽

 1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークの整備を一体的に行うGIGAスクール構想。国策として実施された本取り組みによって、教育現場のICT環境整備は大きく進み、1人1台の学習者用端末は鉛筆とノートのように、子供たちの学習環境に不可欠の存在となった。

 GIGAスクール構想第1期(以下、GIGA第1期)に当たる2020〜2021年度に大きく進んだこれらの端末整備だが、時がたち端末更新が求められたことで、2023年度補正予算では学習者用端末更新のための経費を補助するため、2,661億円が計上された。公立学校の端末整備においては、これらの予算を基に都道府県ごとに基金の造成や共同調達によって、計画的かつ効率的な端末整備が求められている。この「GIGAスクール構想の推進〜1人1台端末の着実な更新〜」の事業では5年程度の時間をかけた計画的な端末更新を行うため、2024年度補正予算として234億円、2025年度当初予算として3億円が計上されている。

 このGIGAスクール構想の推進における端末更新事業は、2026年度も引き続き実施される。2025年度補正予算において685億円、2026年度予算案において3億円が計上されており、学習者用端末の更新を継続して支援していく。文部科学省 初等中等教育局 学校情報基盤・教材課 課長補佐 小林美陽氏は「2023年度の経済対策において、1人1台の学習者用端末の計画的な更新を行うことや、都道府県に基金を設置して、5年間同等の条件で支援を継続する方針が示されました。これを受けて各都道府県は基金を造成し、GIGAスクール構想第2期(以下、GIGA第2期)における端末更新を着実に実施しています。この端末更新のための基金は、2023年度補正予算および2024年度補正予算で、更新に必要な約8割の金額が計上できており、2025年度は多くの自治体で端末更新のピークを迎えています」と語る。

 一方で、2026年度以降に端末更新を実施する都道府県も存在する。また、日常的に学習者用端末を利用する中でバッテリーが消耗したり、故障したりといった端末トラブルが発生することで、地方公共団体の調達計画が前倒しになる可能性もある。これらの端末整備予算に対し、2025年度補正予算では685億円、2026年度予算案では3億円を計上することで、引き続き端末更新を進めていくという。

 公立学校および国私立、日本人学校の端末整備における補助基準額は1台当たり5.5万円、補助率は3分の2であり、これまでと変更はない。これらの金額はあくまで補助基準額のため、自治体において実践したい学びに合わせて自治体ごとに予算を確保し、この基準額を上回る端末を購入しても問題ない。

「GIGA第2期に向けた端末更新のための基金造成の予算は、2026年度予算案および2025年度補正予算で残りの2割をカバーできました。これにより、端末更新に必要な予算を確保できましたので、本事業については本年度でいったん終了を予定しています。一方で、メモリーの価格高騰に伴いPC単価の上昇が予想されるなど、取り巻く環境も変化していますので、方針に変化が生じる可能性もあります」と小林氏は語った。

校務支援システムを次世代へ

 GIGA第1期で整備されたICT機器は、子供たちの学力にも大きな効果をもたらしている。2025年7月31日に公表された「令和7年度 全国学力・学習状況調査」の結果を見ると、ICT機器を活用する自信のある児童生徒ほど、各教科の正答率・スコアが高い傾向がある。また、探究的な学びに取り組んだと回答する傾向にもある。ICT機器の導入は、児童生徒の学力向上や探究的な学びに確かな効果をもたらしている。また不登校の児童生徒や、特別な支援を要する児童生徒の学習活動の支援にICT機器が積極的に活用されており、誰一人取り残さない学びの保証の実現にも寄与している。

 一方で、地域や学校間での活用格差や通信ネットワークの改善など、課題も存在している。これらの課題に対し、文部科学省ではこれまで、GIGA第2期に向けた端末更新をはじめ、ネットワークアセスメントを行い、通信ネットワーク速度の改善を支援するなど、さらなる学校DXに向けた事業に取り組んできた。こうした学校DXの取り組みは学習環境ばかりでなく、教員の校務環境にも及んでいる。

 文部科学省は「GIGAスクール構想支援体制整備事業」として、2025年度補正予算に33億円、2026年度予算案に3億円を計上している。本事業では「次世代校務DX環境の全国的な整備」「学校の通信ネットワーク速度の改善」「学校DXのための基盤整備」の三つに取り組む。

 小林氏は「2025年6月13日に閣議決定された『デジタル社会の実現に向けた重点計画』内でも示されている通り、2026年度から4年間かけて、次世代校務DX環境への移行を順次進めていきます」と語る。

 次世代校務DX環境とは、パブリッククラウドを前提とした校務支援システムであり、ロケーションフリーでの校務実施やダッシュボード上で各種データの可視化を行うことで、細やかな学習指導を可能とするインフラ環境を指す。本環境の活用により、教員は児童生徒に向き合う時間を確保しつつ、働き方改革の実現を目指せる。

 こうした次世代の校務DX環境を実現するための次世代型校務支援システムだが、現状その整備率は6.1%にとどまる。その環境を改善するため実施するのが、次世代校務DX環境の全国的な整備であり、都道府県域での共同調達・共同利用を前提とした次世代校務DX環境の整備に向けた経費の一部(3分の1)を支援する。「都道府県域の共同調達を前提としている背景には、教員の県内異動があります。市区町村単位で別の次世代校務システムを導入すると、市区町村を跨いで異動した場合、別の校務支援システムの操作に慣れるための負担が発生します。都道府県単位でまとめて調達することで、働き方改革の支援につながります。また、校務系ネットワークと学習系ネットワークが分離されている自治体もまだまだ多くありますが、そのネットワークを統合することで学びの高度化も実現できますので、これらのネットワーク統合にかかる費用やクラウド化を図るための経費などの初期費用を補助します」と小林氏。

次世代校務DX環境は、教員が同じ県内で異動しても同一のシステムを使えるよう、都道府県域一体となって共同調達・共同利用を推進する。

二つの柱で校務DXを加速

 校務DXに関しては本事業のほか「校務DX等加速化事業」として2025年度補正予算において3億円を計上している。

「本事業は『今の環境でできる校務DX』と『環境整備を伴う校務DX』の両輪で校務DXを加速化させていくものです。例えば、保護者の方に対するお知らせを、紙からメール配信に変えたり、紙のアンケートをWebアンケートに変更することで集計を簡単に行えるようにしたりといったように、クラウドサービスを活用することですぐに実現できる校務DXは多々ありますが、取り組んでいない学校はまだたくさんあります。こうした取り組み事例を集めて、横展開するような取り組みや、教育委員会間で役立つ情報を共有するためのイベントを実施することで、校務DXを加速させていきます。また文部科学省では『校務DXチェックリスト』を公開し、各自治体にはそのチェックリストに基づき、校務DXを推進していただいています。本事業では、効果検証を踏まえた校務DXチェックリストの改善および周知にも取り組みます」と小林氏は語る。

 また、教育データを活用した指導・支援や教員の働き方改革に向けて「教育データ利活用の加速化に向けた実証研究・伴走支援等」の事業も実施する予定で、2025年度補正予算に1億円が計上されている。

上記事業のほか、「個人情報保護の徹底を含めた教育現場の情報セキュリティ対策」も実施し、校務DX実現に当たって適切な情報セキュリティ対策も講じられるよう支援

 環境整備を伴う校務DXは、前述した次世代型校務支援システム整備に伴う、仕様書の作成や調達プロセスなどについて、教育委員会が常に相談できる窓口を設置するとともに、技術的な知見を有した専門人材を派遣し、教育委員会の職員と一緒に仕様書を作成するような取り組みを実施する。

 これらの二つの取り組みに加え「個人情報保護の徹底を含めた教育現場の情報セキュリティ対策」として、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」や「教育データの利活用に係る留意事項」の改訂を進めることで、校務DXに向けて適切な情報セキュリティ対策を講じられるよう、支援を進めていくという。

 前述したように、学校の通信ネットワーク速度の改善も進めていく。本事業ではネットワークアセスメントの結果を踏まえたネットワークの課題解決に係る機器の入れ替えや設定変更などの初期費用を支援する。前年度まで行われていたネットワークアセスメントへの支援については、多くの自治体で実施されたことから本事業での補助は行われない予定だ。

生成AIで教育DXを加速させる

 2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」において「子供たちの個別最適な学びと協働的な学びの一体的な実現及び教職員の負担軽減に向け、国策として推進するGIGAスクール構想を中心に、生成AI活用も含めて教育DXを加速する」と示されたように、教育現場での生成AI活用もより一層加速化させていく。

 2025年度補正予算では「生成AI活用を通じた教育課題の解決・教育DXの加速」に対し、8億円を計上しており、「学校や教育委員会における実証研究」に6億円、「生成AIの利活用に関する調査研究」に2億円、それぞれ割り当てられている。

「学校や教育委員会における実証研究では、『生成AIパイロット校を通じた利活用事例の創出』『教育課題の解決に向けた生成AIの実証研究事業』の二つに取り組みます。前者の生成AIパイロット校での実証は、教育利用と校務利用、それぞれで生成AIを活用する指定校を採択して生成AIの事例創出を行います。後者の教育課題の解決に向けた生成AIの実証研究事業では、教育分野の特定課題に対して生成AIを活用することで課題解決の可能性を検証します。取り組む課題は今後検討を進めていきますが、例えば外国にルーツを持つ児童生徒への多言語対応や、時間割編成などの業務効率化に生成AIが活用できないか、といった視点から、実証研究に取り組みます」と小林氏は語る。

 生成AIの利活用に関する調査研究では、生成AI利活用に関するワークショップのようなイベントを実施したり、事例の発信を行うWebサイトを運営したりする「生成AI利活用に向けた事例収集・Webサイトの運営等」や、校務での生成AI活用を行っている好事例や課題の収集および分析を収集し、教育委員会向けの手引きを作成する「校務での生成AIの利活用推進のための調査研究」を実施する。

 文部科学省では2024年12月26日に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表し、教育現場において生成AIを活用する上での基本的な考え方などが示されている。こうしたガイドラインに加え、2025年度補正予算で行われるこれらの事業によって、生成AIを活用した教育DXをさらに加速化させていきたい考えだ。