今年8月21日、VAIOは同社の独自基準で整備・再生したPC「Reborn VAIO」を法人向けに販売開始した。Reborn VAIOは「リファービッシュPC」と呼ばれる、中古PCをメーカーであるVAIOが新品同様に再整備した製品で、1年間のメーカー保証が付く。中古PCのビジネス展開は既存の新品製品販売への影響が気になるところだろう。法人向けリファービッシュPCビジネスの狙いと展望をVAIOに伺った。
リプレース時期を迎えた
ハイスペックなPCが対象
中古PC市場には「リユース」や「リビルト」、そして「リファービッシュ」といった製品カテゴリーがある。一般的にリユースは中古PCのストレージに記録されているデータやアプリケーションを消去し、基本的には中古PCをそのまま販売する。
そしてリビルトは中古PCを分解し、消耗や破損した部品を交換するなどして再構築(リビルト)したPCを販売する。さらにリファービッシュは短期間使用された中古PCを対象に部品交換やクリーニング、品質検査などを行い、新品に近い外観に仕上げる。
Reborn VAIOはリファービッシュPCであり、今年8月に販売が開始されたReborn VAIOは2021年10月に発表された「VAIO Pro PK(VJPK21)」の使用済み品を再生したもので、新品と同等の見た目、性能、機能に仕上げられている。
VAIOでReborn VAIOビジネスの責任者を務める事業開発グループ Reborn VAIO事業室 室長 花村英樹氏は「Reborn VAIOは(新品で)導入してから3年から4年が経過したリプレース時期を迎えるVAIO PCを対象に、その中でも現在の用途に対応できるスペックや機能、品質に基準を設けて(使用済みVAIO PCを)Reborn VAIOとして再生しています」と説明する。
Reborn VAIOに再生される使用済みVAIO PCにはCPUやメモリー、ストレージなど、比較的ハイスペックな製品が選ばれている。これは現在も通用する性能を確保するという目的に加えて、メモリーやストレージをアップグレードして再生するとコストがかかるという事情もある。

VAIO 事業開発グループ Reborn VAIO事業室 プロダクトマーケティングマネージャー 東 昌作 氏
VAIO 事業開発グループ Reborn VAIO事業室 室長 花村英樹 氏
VAIO 法人営業本部 広域営業統括部 第1法人営業部 田中稔浩 氏
バッテリーなどを新品に交換
個別対応で延長保証も可能
ユーザーから回収された使用済みVAIO PCはVAIOロゴの入った天板と、常にユーザーの手に触れるキーボードやタッチパッド、パームレスト、電源ボタン、さらに外から見えるビスなどの外装部品は新品と交換される。その際、外装色は黒に統一される。カラーバリエーションを用意しないことでコストを抑え、手ごろな価格で提供するためだ。また天板の色に関わらずVAIO PCの底面には黒のパネルが使われており、外装を黒に統一しても違和感はない。
使用済みのモバイルPCで気になるのはバッテリーの消耗具合だろう。使われ方によってはバッテリーの消耗が進み、駆動時間が短くなるという懸念がある。しかしReborn VAIOではバッテリーは新品と交換されるので安心して利用できる。さらにReborn VAIOは1台ずつ動作試験を実施しており、その結果が新品と同様の1年間のメーカー保証付きを実現している。
メーカー保証の期間についてVAIOでReborn VAIOビジネスを推進する事業開発グループ Reborn VAIO事業室 プロダクトマーケティングマネージャー 東 昌作氏は「個別のご相談で延長も対応可能です。ただし部品の提供が新品の製造打ち切り後から5年程度となっているため、その範囲内ということになります」と説明する。
再生品ということで気にかかるのが製品固有のシリアルナンバーの扱いだ。新品販売時のシリアルナンバーをそのまま利用すると、端末の認証・認識などで過去の履歴とひも付いてしまい、新しいユーザーの利用に妨げが生じてしまう。そこでReborn VAIOでは全ての製品に新しいシリアルナンバーを付与し、過去の履歴とひも付かないようにしている。


取り逃していた需要への対応と
新品販売の促進への貢献も期待
Reborn VAIOは再生したVAIO PC発表時の価格に対して40%程度安く購入でき、しかも1年間のメーカー保証が付く。数年前のモデルとはいえハイスペックなVAIO PCを再生したReborn VAIOは一般的な事務での使用ならば十分機能しそうだ。しかも当時の定価よりも安く購入できる。そうなるとより高価な新品の販売と競合してしまい、Reborn VAIOを積極的に提案しづらくなる。
こうした懸念に対して、VAIOで法人営業を担当する法人営業本部 広域営業統括部 第1法人営業部 田中稔浩氏は「新品とReborn VAIOとでは想定している顧客が異なります」と強調し、「最新の性能と機能は不要という用途に対して、Reborn VAIOには十分な性能と機能を備えたPCを導入しやすい価格で販売できる強みがあります。例えば複数のユーザーが共用利用する環境への提案に有効です」と説明する。
また顧客の環境保全への取り組みにも役立つ。今年8月に販売が開始されたReborn VAIO(VJPK21)は同モデルの新品と比較すると二酸化炭素換算で1台当たりCO2を約137kg、新品比約60%を削減できるという。東氏は「商社などCO2を削減する対象業務が少ないお客さまに対して、Reborn VAIOは部品原材料における温室効果ガス(GHG)排出量の削減に貢献できます」とアピールする。
さらにReborn VAIOは新品のVAIO PCの販売促進にも寄与するという。花村氏は「新品のVAIO PCを販売する際に例えば3年後に使用済みVAIO PCを買い取る契約を組み合わせることで、お客さまは新品のVAIO PCの導入コストを抑えられ、パートナーさまはお客さまに多様な提案が行え、当社はReborn VAIOに再生する使用済みVAIO PCを確保できる“三方よし”のビジネスが展開可能です。PCのリプレース時期を早め、ビジネスの頻度を増やすことも期待できます」と説明する。
なおReborn VAIOは使用済みPCを再生した製品だが、その販売に古物商の許可は必要ではないことが確認できており、ディストリビューターを通じて既存のPCビジネスと同じ商流で販売することが可能だ。






