2025年8月、日本各地で40度を超える猛暑が続き、熱中症による救急搬送者数も1万人を超えるなど、深刻な状況となっている。このような事態を踏まえ、熱中症に関する正しい知識と予防策を身に付けることは、健康を守る上で不可欠だ。さらに、2025年6月に施行された「労働安全衛生規則」の改正により、職場での暑さ指数管理や緊急対応体制の整備が義務化され、従業員の健康と業務の継続性を守ることが経営課題となっている。厳しい残暑が予測されるこれからの季節に備え、これらの書籍を読むことで熱中症対策を万全にしよう。
熱中症からいのちを守る

1,540円(税込)
評言社
本書は医師である著者が「これ以上すずしくなることはない未来に備えて、熱中症から命を守る」という思いを胸に執筆した一冊だ。世の中にあふれる熱中症に関する情報を整理し、マスメディアによって繰り返し発信される予防法についても取り上げ、それらが本当に有効かどうかを医学的根拠に基づいて分かりやすく解説している。本書は三つのPartから構成されている。Part1では、熱中症が起こる仕組みや初期・中期・重篤といった症状の段階、熱中症によって引き起こされるリスク、そして熱中症にかかりやすい年齢層など、熱中症に関する基本的な知識が紹介されている。Part2では、熱中症を防ぐための効果的な予防策が示されている。著者は、熱中症対策は夏に限らず、年間を通して取り組むべきものであると述べている。そのためには、脱水症にならない体づくり、筋肉量を維持する生活、自律神経を整える生活という三つの柱が重要だ。これらの予防策を実践するための具体的な方法も解説されている。Part3では、熱中症の対応方法がまとめられている。病院に行くべきかどうかの判断基準や、自己対処が可能な場合に求められる「暑さを避ける」「体を冷やす」「水分を補給する」という三つの基本行動、経口補水液の基礎知識などが紹介されている。熱中症に関する情報を分かりやすく、網羅的に紹介する本書は、酷暑の夏を乗り切る助けになってくれるだろう。
熱中症の謎となぜ

4,400円(税込)
日本医事新報社
本書は、熱中症の基礎知識から病態、将来の展望までを、29項目にわたりQ&A形式で分かりやすく解説している。著者は、酷暑や熱中症に立ち向かうためには、まず科学的に正しく理解することが重要であると考えており、その思いの基に本書は執筆された。そのため、最新のガイドラインや臨床研究など信頼性の高い科学的知見に基づいて構成されている。例えば「暑い日にマスクをしたほうが良いのか?」といった日常的な疑問にも、「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(第2版)」を基に、著者の見解が示されている。医療従事者向けの専門書ではあるが、文章は明快で読みやすく、医療現場に限らず、暑さ対策が求められるさまざまな業種にとっても有用な一冊だ。
熱中症を科学する

1,980円(税込)
竹書房
本書は、主にスポーツ現場における熱中症の予防と対応を科学的に分析した、実践的な一冊だ。第1章では熱中症の基本を押さえ、第2章では熱中症対策に最適な、全体的な方針である「戦略」と、戦略を実行するための「戦術」を紹介している。続く第3章から第9章では、熱中症への対応に焦点を当てている。暑さに徐々に体を慣らしていくことで耐性を高める「暑熱順化」をはじめ、クーリング水分補給、塩分タブレット、食事、睡眠など、多角的な対策に加え、現場での具体的な対応方法までを詳しく解説している。イラストや図表、写真を豊富に用いて、項目ごとにまとめも設けられているため、専門的な内容ながら非常に分かりやすい構成となっている。本書を通じて、科学的知見に基づいた熱中症対策を学べるだろう。