今月のテーマは……
AIでデータ分析と業務自動化を加速
進化を続ける「 Google スプレッドシート 」
「 Google スプレッドシート 」は、誰でも手軽に使える表計算ツールとして親しまれてきました。データの整理や集計だけでなく、チームでの共同作業などにも活用され、ビジネスの現場に欠かせない存在です。そして今、その役割は“表計算”の枠を超え、AIアシスタント「 Gemini 」との融合によって、データ活用と業務自動化を誰もが手軽に実現できる強力なプラットフォームへと進化を遂げています。
業務自動化を次のレベルへ
日々、多くの現場で使われている「 Google スプレッドシート 」。使い勝手の良さと柔軟性の高さから、業務の中核を支える存在となっています。2025年9月、その進化をさらに加速させる次の三つの重要なアップデートが発表されました。
1. 複雑な業務プロセスも自動化する「条件付き通知」のルール数大幅アップ
2. Gemini がさらに賢くなった!「会話」するだけで複雑な数式生成からデータ整理まで一括で実行
3. グローバルな共同作業を促進する「AI関数」の多言語対応
これらの新機能は、私たちの働き方をどのように変えてくれるのでしょうか。それぞれのアップデート内容を具体的な活用シーンと共に詳しく解説していきます。
特定のセルの値が変わったら、関係者に自動でメール通知を送りたい――このニーズに応えるのが「条件付き通知」機能です。プロジェクトの進捗管理や在庫数の監視など、さまざまな場面で活用されてきました。
これまで、この条件付き通知機能は「一つのスプレッドシートに付き、設定できるルールは10個まで」という制限がありました。しかし今回のアップデートで、この上限が20個に倍増しました。「たった10個増えただけ?」と思うかもしれませんが、これは業務プロセスの自動化において非常に大きな意味を持ちます。例えば、一つのシートで複数のプロジェクトを管理している場合を考えてみましょう。
・Aプロジェクト:「ステータス」列が“完了”になったら、マネージャーに通知
・Bプロジェクト:「期限」が3日以内になったら、担当者にリマインド通知
・Cプロジェクト:新しいタスクが追加されたら、チーム全体に通知
これまでの10個の制限では、シートを分けたり、通知を諦めたりする必要があった複雑なワークフローも、20個まで設定可能になったことで、一つのシート上で完結できるようになります。在庫管理、顧客管理(CRM)、人事評価など、複数のトリガーとアクションが絡み合う業務であればあるほど、このアップデートの恩恵は大きいでしょう。単純作業を自動化することで、人はより創造的な業務に集中できるようになります。

関数はもう不要に?
A列の顧客データから“東京”在住者だけを抽出して、B列に名前、C列に年齢を表示し、新しいシートにまとめたい――このような複雑な作業、あなたならどうしますか? FILTER関数やQUERY関数を駆使して、数ステップかけて作業する方が多いのではないでしょうか。
Google スプレッドシート に搭載されている「 Gemini in Sheets 」の数式生成機能が、この常識を覆します。今回のアップデートで、 Gemini は複数ステップに跨る複雑な指示(プロンプト)を一度に理解し、実行できるようになったのです。
・複数タスクの同時実行:「データを抽出して、並べ替えて、新しい列を追加して計算し、結果をグラフにして」といった一連の流れを、一度の指示で完結させられます。
・自己修正と提案:指示が曖昧な場合や、数式でエラーが発生した場合、 Gemini は原因を説明し、修正案を提示してくれます。これにより、ユーザーはトライ&エラーを繰り返しながら、自然とデータ分析のスキルを高めることが可能です。
・数式の解説:生成された複雑な数式が「どのようなロジックで動いているのか」を、自然な言葉で段階的に分かりやすく解説してくれます。
これまで専門知識が必要だったデータ分析や可視化の作業が、まるで優秀なアシスタントに話しかけるかのように実行できるのです。これは、データ活用の民主化を大きく前進させる画期的なアップデートと言えるでしょう。
グローバルチームのコラボレーションを加速
スプレッドシートのセルに=AI(“日本の首都は?”)と入力するだけで、AIが答えを返してくれる――そんな未来のような機能が、「AI関数」です。セルに関数を入力するだけで生成AIが利用できます。このAI関数が、これまで対応していた英語に加え、新たに日本語を含む7言語に対応しました。
・多言語でのブレインストーミング:各国のメンバーが、母国語でアイデアやキーワードをセルに入力し、AI関数で関連情報を即座に引き出し、シート上での共有が行えます。
・簡易的な翻訳リストの作成:=AI(“‘Hello’を日本語に翻訳して”)のように指示すれば、簡単な翻訳テーブルをスピーディーに作成できます。
・海外市場のリサーチ:=AI(“ドイツで人気の電気自動車トップ3は?”)といった指示を日本語で入力し、調査結果を直接シートに反映させることが可能です。
この機能は言語の壁を越えたシームレスなデータコラボレーションを実現する大きな可能性を秘めているだけではありません。数百ある関数を覚えなくても、自然言語で「こんな数字を得たい」と指示するだけで答えが得られるため、関数に苦手意識のある社員でも、これまで以上に Google スプレッドシート の活用が期待できます。
Google スプレッドシート はもはや、入力されたデータを計算するだけのツールではありません。ぜひ、日々の業務に取り入れて、その圧倒的な業務効率の変化を体感してみてください。
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