近年、LLM(大規模言語モデル)の性能向上や労働力の不足に伴う自動化ニーズの高まりなどを背景に、AIエージェントへの関心が急速に高まっています。AIエージェントとは、ユーザーの指示に応じて、必要なプロセスをエージェントが判断して自律的に実行してくれるシステムです。データの収集・分析をはじめ、社内問い合わせ対応、顧客サポート、スケジュール調整、さらには市場調査など、業務のさまざまな場面で活用が広がっています。こうした注目の高まりを受けて、今回はAIエージェントに関する書籍を紹介していきます。

AIエージェントの教科書

小澤健祐(おざけん)
1,980円(税込)
ワン・パブリッシング

 本書ではAIエージェントを、部門間の情報共有の欠如や内部コミュニケーションの壁、経営戦略と現場業務の乖離といった「分断」を解決する技術であると位置付けている。こうした位置付けを踏まえ、AIエージェントの基本構造や中核技術となるRAG、成功に必要なデータの種類とその活用方法といった技術的な知見を解説する。加えて、企業への導入を成功へと導くために欠かせないデータ戦略や組織改編、人事制度改革といった経営戦略の側面からも、AIエージェントの全体像を明らかにしている。こうした技術的・戦略的な知見を、第1章から第5章にかけて体系的に整理した上で、第6章では、それらが実際のビジネス現場でどのように活用されるのかを具体的にイメージできるよう、架空の企業「みらいファクトリー」におけるAIエージェント導入プロジェクトをシミュレーション形式で収録している。このプロジェクトを追体験することで、AIエージェント導入のプロセスや課題をよりリアルにつかめるのだ。さらに本書では、AIエージェントを企業向けに展開する日本マイクロソフトやGoogle Cloudなどの担当者へのインタビューも掲載。実際に企業向けに用意されたサービスや導入事例について語られており、ビジネス展開する際の理解に役立てられる。AIエージェントの導入を検討する企業にとって、理論と実践をつなぐ実用的なガイドとなってくれる。

いちばんやさしい
AIエージェントの教本

古川渉一
1,980円(税込)
インプレス

 本書は、これから新しいことを始める人に向けた入門書「いちばんやさしい教本」シリーズの中でも、AIエージェントに特化した一冊だ。AIエージェントに対して「興味はあるがよく分からない」「どうやって導入すればよいか分からない」といった人達に向けて、AIエージェント開発者でもある著者が平易な言葉と図版を活用しながら、分かりやすく解説している。AIエージェントの定義や注目される背景、導入のポイント、活用事例などが2〜4ページ単位でコンパクトにまとめられているため、通勤時間や休憩中などの隙間時間にも読みやすい。ツール選定のフローチャートや活用チェックリストも付属しており、読後すぐにAIエージェントの活用を始められる点も魅力だ。

AIエージェント革命

シグマクシス
2,310円(税込)
日経BP

 本書は、AIエージェントの全体像を体系的に理解し、未来へのアクションにつなげるための「羅針盤」となることを目指している。読者層をビジネス層と技術者層の二つに分け、それぞれに適した読み方を提案している点が特長だ。ビジネス層向けには、第1章と第2章でAIエージェントの定義、市場動向、活用事例を紹介し、第5章では未来予測と第一人者のインタビューを通じて、AIエージェントが社会や働き方にどのような変化をもたらすかを示している。一方、技術者層向けには、第1章、第2章、第5章に加え、第3章と第4章を読むことが推奨されている。第3章と第4章では、AIエージェントの技術的な背景や導入準備など、専門的な要素が詳しく解説されている。ビジネスとテクノロジーの両面から、AIエージェントについて解説する一冊だ。