Amazonが展開する「Amazon Think Big Space」STEMの学びの拠点となる新たな教室で小中高が連携

Amazonは、地域コミュニティに対しSTEM※教育を支援するスペース「Amazon Think Big Space」の展開をグローバルで進めている。その100カ所目となるスペースが、相模原市立弥栄中学校に開設された。国内では2023年9月に開設された千葉県印西市立原山小学校に次いで2カ所目となる。その弥栄中学校でThink Big Spaceの寄贈式と公開授業が2025年5月20日に実施された。その公開授業の様子と、本スペース開所によって実現するSTEMの学びを見ていこう。
※STEM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の四つの分野を統合的に学ぶことを指す。

「Amazon Think Big Space」が弥栄中学校にオープン

Amazonは、STEM教育スペース「Amazon Think Big Space」を2025年5月20日に相模原市立弥栄中学校に寄贈した。同社が取り組む教育への投資と、それによって生まれるSTEMの学びの在り方を紹介していく。

日常的な課題解決に
STEMの知識を活用する

 Amazonは教育現場のSTEM教育充実を支援するため、世界各地で「Amazon Think Big Space」の展開を行っている。弥栄中学校に寄贈されたAmazon Think Big Spaceには、プログラミング教材の「レゴ エデュケーション SPIKEプライム」(以下、SPIKEプライム)や教育向けマイコンボード「micro:bit」をはじめ、アクションカメラ「GoPro」、Web会議用カメラ「ミーティングオウル」、3Dプリンター、プロジェクター、電子黒板、ペンタブレットなどの最新IT機器が整備されている。また可動式の机や椅子、ホワイトボードなども整備され、協働的な学びや探究活動が行いやすい空間にリノベーションを行った。

 弥栄中学校はこのAmazon Think Big Spaceを2025年度当初から運用しており、寄贈式の前には公開授業として3年生技術の授業で本スペースを活用した。授業ではSPIKEプライムと3Dプリンターなどを活用し「生活や社会の問題を解決する自動で動く製品の製作」を実施。10グループに分かれ「作業時にもゴミを捨てやすいゴミ箱」「自動で止まる車」などをテーマにものづくりを行った。

 SPIKE プライムにはブロックのほか、センサーやモーター、ハブが含まれるため、生徒たちは「手を近づけるとモーターが動いてフタが開く」というような自動化のプログラムを行い、目的の動作が行えるように工夫している姿が見られ、実際に動作すると歓声が上がっていた。

SPIKEプライムを活用し、自動で動く製品の製作に取りかかる生徒たちの姿。
3Dプリンターも活用されており、制作物と組み合わせて使うであろうアイテムの出力が行われていた。
手を近づけると自動で開くゴミ箱のふたを制作している生徒たち。実際に動作すると生徒同士でハイタッチして喜ぶ姿が見られた。

地域社会に密接に関わる
Amazonの教育支援

 公開授業後の寄贈式は2部構成で実施された。寄贈式の第1部では、AWSジャパン 代表執行役員社長 白幡晶彦氏や相模原市 市長 本村賢太郎氏、相模原市立弥栄中学校 校長 古屋礼史氏が登壇し、AmazonがAmazon Think Big Spaceの展開を進める目的や、相模原市が取り組むSTEM教育の意義が語られた。本寄贈式は弥栄中学校の代表生徒のほか、Zoomを活用することで全校生徒が教室から参加した。

 AWSジャパンの白幡氏は「当社は、データセンターをはじめとしたインフラ投資はもちろんのこと、教育への投資にも力を入れています。背景には、Amazonグループ自体が学ぶという文化を非常に大切にしていること、そして日本のデジタル競争力を上げるという意味でも、デジタル教育が非常に重要だと考えているためです。“Think Big”は、Amazonが大切にしている行動指針の一つです。既存の常識を壊し、想像力を広げ、新しい未来を大きな視点から見据えて、大きなアイデアを出すといったことを、私たちは常に考えながら仕事をしています。弥栄中学校の皆さんが、このThink Bigの視点を持ちながら学ぶお手伝いができたらと考えています」と語りかけた。

 Amazonは相模原市に同社の物流拠点を持つほか、地域の清掃活動や祭りにボランティア参加をしているという。また2024年11月4日には女子中高生を対象としたSTEMイベント「AWS Girls’ Tech Day 2024」を相模原市で開催するなど、地域社会とのつながりも深く、「今後も相模原市の教育活動に長くコミットしていきたい」と白幡氏は締めくくった。

 白幡氏のスピーチを受けた相模原市 市長 本村賢太郎氏は「現在、相模原市の行政は前例踏襲型ではない、チャレンジする姿勢へと変革を進めています。このチャレンジの姿勢に、Think Bigという考え方はふさわしいと感じています。このAmazon Think Big Spaceは日本では2例目の開設ですが、中学校では全国初です。さまざまな公立中学校に行っていますが、こういったスペースがある学校はなかなかありません。将来、このAmazon Think Big Spaceで学んだ経験は生徒の皆さんにとって大きな価値になるでしょう」とメッセージを送った。

白幡晶彦
寄贈式第1部でスピーチを行ったAWSジャパン 代表執行役員社長 白幡晶彦氏。
本村賢太郎
相模原市 市長 本村賢太郎氏は、相模原市のチャレンジしていく姿勢とThink Bigの考え方の相性の良さを語った。
古屋礼史
小中高の連携を語る相模原市立弥栄中学校 校長 古屋礼史氏。

小中高が連携して学ぶ
STEM教育スペースへ

 弥栄中学校 校長の古屋礼史氏は「Amazon Think Big Spaceは子供たちの可能性を広げてくれるスペースです。本校の周辺には弥栄高校や弥栄小学校もあり、それらの学校と連携を図りながらこのAmazon Think Big Spaceでさまざまな取り組みを進めていきたいと考えています。すでに本校の生徒はAmazon Think Big Spaceで技術や理科、保健体育などの授業を行っていますが、その時に見せてくれる子供たちの目の輝きや、前のめりになって学びを深めようとする姿勢はこのスペースならではです。これからもさまざまな教科でこのAmazon Think Big Spaceを活用しつつ、小学校や高校とのつながりを強めていきます」と語った。

 寄贈式では弥栄中学校の生徒会長が、AWSジャパンの白幡氏からAmazon Think Big Spaceのレプリカキーを贈呈され、在校生を代表して感謝の言葉を述べた後「私たちが住むこの相模原市は、豊かな自然に恵まれた場所であると同時に、JAXAやさまざまなものづくり企業など、先進的な技術や研究が行われる場所でもあります。この地域で生まれ育った私たちが、これからこのAmazon Think Big Spaceを活用して、先進的なSTEM教育を学ぶことで、この相模原という地域への理解を深め、そしてこの地域を担う若い力として、さらに成長できるよう努力していきたいと思います」と力強く語った。

 寄贈式の第2部では、東京学芸大こども未来研究所の研究員である田中若菜氏による講演と、生徒によるQ&Aセッションが実施された後、生徒へのサプライズとしてドローンが学校の敷地内を飛行して空撮するといったイベントが行われた。その後の生徒会活動でもAmazon Think Big Spaceの場所が活用され、生徒の情報活用能力と問題解決能力が日常的に生かされている様子が垣間見えた。

寄贈式第1部の最後には、相模原市からAmazonへ感謝状が贈られ、Amazonからは生徒代表にAmazon Think Big Spaceのレプリカキーが手渡された。