オフライン環境での録音をサポートする
新しいハードウェア製品を発表
Nottaは5月29日に事業戦略発表会を実施した。本事業戦略発表会では、同社が提供する新しいハードウェア製品と今後の事業展開について語られた。本記事ではオフライン環境での録音から、AI議事録サービス「Notta」の文字起こし・要約までをスマートにしてくれるAIボイスレコーダー「Notta Memo」とAIイヤホン「Zenchord 1」の特長を中心に、Nottaの今後の事業戦略について見ていこう。
オフライン環境でも快適なNottaの活用を実現
5月29日、AI議事録サービス「Notta」を提供するNottaは事業戦略説明会を開催した。本説明会では、今後の事業戦略とともに、新しいハードウェア製品が2機種発表された。
AI議事録の市場は増加傾向
さまざまな業界で利用が進む
Nottaは「会話から無限大の価値を発見」をビジョンに掲げ、高精度な音声認識とAI要約機能を活用したAI議事録サービス「Notta」を2020年にリリースしている。Nottaは2023年に「AI要約」やAIテンプレート、2024年に「AIチャット」といったさまざまな機能を実装し、サービスを拡張してきた。
ビジネスにおける業務効率化と生産性向上のニーズが高まったことに加え、AI技術の急速な進化により音声データの活用が一気に促進されたことにより、AI議事録市場は急速に成長を続けている。市場規模は2033年には年間3,000〜4,000億円に達する見込みだ。同市場ではNottaをはじめとした文字起こしサービスだけでなく、「Microsoft Teams」「Google Meet」「Zoom」といったオンライン会議ツールに加え、文書管理ツール「Notion」も文字起こし機能を発表しており、競争が激化している状態だ。
そうした中Nottaは、ITや建設、不動産、コンサルティング、教育、物流、製造、旅行・交通、出版、そして地方自治体まで、多種多様な業界で利用が進んでいる。特にここ3年間は法人向け有料プランの成長が著しく、日経225銘柄に選ばれる企業の72%がNottaを導入しており、2024年5月から2025年5月までの間に法人の月間経常収益は5倍に拡大しているという。現場からのボトムアップや口コミによる広がりが、導入につながっているのだ。さらにNottaは、SAMLシングルサインオン連携やAI学習無しオプション、操作ログの提供、利用状況レポートといった企業向けの高度なセキュリティ機能や管理機能が充実している。こうした面から導入を決める企業もあるという。
こうした取り組みの結果2025年4月には全世界のユーザー数が1,000万人を突破し、日本国内のユーザー数も230万人に達した。

2.スマートフォンの背面にマグネットで装着することで、電話の音声を録音できる。
3.オープンイヤー型を採用し、着け心地が良いZenchord 1。
4.ケースにマイクを搭載しており、単体で録音できる。ケース背面のボタンを押すことで録音を開始する。
スマホを用いた通話も録音できる
カード型AIボイスレコーダー
Nottaは本事業戦略発表会において、Mizuho Leaguer Investments、GSR Venturesを新たな株主として迎え、総額9億9,000万円のシリーズA+資金調達を実施したことを発表した。この資金調達の目的は三つあり、一つ目が「ハードウェアエコシステムの構築」だ。Nottaとシームレスに連携するハードウェア製品の開発と市場への展開を行うという。二つ目が「AIを中心としたソフトウェア開発の加速」だ。音声認識技術や自然言語処理技術といったAI技術を高度化し、より高精度な文字起こし機能や複雑な内容も的確に要約する機能、多言語対応能力の向上を実現するという。三つ目が「企業顧客向け支援体制の強化」だ。国内企業からのニーズが急速に増加している現状に対応するために、営業体制とサポート体制の大幅な強化を行う。導入時の支援から運用開始後のサポートまで、一貫したサポートを提供することで、顧客の満足度向上につなげるという。
本事業戦略発表会では、ハードウェアエコシステムの構築の一環として、AIボイスレコーダー「Notta Memo」とAIイヤホン「Zenchord 1」が紹介された。Notta Memoは6月16日より一般販売を開始し、Zenchord 1は5月15日より応援購入サービス「Makuake」にて先行公開されている。
Notta Memoは、コンパクトなカード型デザインを採用したAIボイスレコーダーだ。本体の薄さは約3.5mm、重さは約28gとポケットにも入る薄型かつ軽量設計の携帯性に優れている。
四つのMEMSマイクと一つの骨伝導マイクを搭載し、360度方向からの音を正確に拾うことが可能だ。集音範囲は5mとなっており、大きめの会議室で利用しても会話の内容を明瞭に記録できる。またマイクには周囲の雑音を自動で除去するAIノイズキャンセリング機能も備わっており、クリアな音質を録音可能なため、文字起こし精度の向上に貢献する。
さらにNotta Memoはスマートフォンを用いた通話も録音可能だ。通話を録音する際はスマートフォンの背面にNotta Memoをマグネットで装着し、本体前面のスイッチで通話録音モードに切り替えるだけの簡単操作で対応できる。モードの切り替わりは本体前面の液晶でチェック可能だ。MEMSマイクで自分の声を録音し、骨伝導マイクで通話相手の声を録音する仕組みとなっている。
録音はオフライン環境でも行えるため、セキュリティの都合上Wi-Fiが整備できない工場や記者会見、対面の商談といった外出先でも会話の内容を記録できる。録音したデータはWi-FiまたはBluetooth経由で自動的にNottaアプリに転送される。アプリ上では文字起こしやAI要約、翻訳が可能だ。

イヤホン本体でもケースでも録音可能
オープンイヤー設計のイヤホン
Zenchord 1は、Nottaと音響ブランドZenchordが共同で開発したAIイヤホンだ。イヤホン本体に四つの高性能マイクを搭載しており、スマートフォンを使った通話やオンライン会議などの音声を録音できる。さらにZenchord 1は、ケースにも二つの高性能マイクを備えており、イヤホンを装着しづらいハイブリッド会議などの場面では、ケースをデスクの上などに置いて背面のボタンを押すだけで録音を開始できる柔軟性を持つ。これら合計六つのマイクはAIノイズキャンセリング機能を備えており、周囲の環境音をカットして音声認識精度を向上させられる。
Zenchord 1はオープンイヤー設計を採用しており、耳をふさがずに装着できるため、長時間着用していても耳が蒸れることがなく、快適に使用可能だ。さらに片耳の重さは約10gと軽量なため、耳にかかる負担を最小限に抑えている。またバッテリー面では、イヤホン本体で最大10時間、ケースを含めると最大30時間の連続使用が可能なため、1日を通して使用できるのだ。
Notta COO 田村清人氏は、同社がハードウェアの提供を開始する背景について以下のように語る。「当社の調査によると、Nottaが取り扱う音声データの内、約8割がオフライン上での会話という結果となりました。工場や記者会見、対面の商談といった環境ではICレコーダーで録音した後、手動でNottaアプリにアップロードする運用が一般的でした。こうしたオフライン現場でもNottaをさらに使いやすくするために、ハードウェアが必要だと判断しました」
最後にNotta CEO ライアン・チョウ氏は2027年までの目標について以下のように語った。「目標は三つあります。一つ目が月次経常収益を4倍に拡大することです。二つ目が、業界特化型のAIエージェントを10種類以上リリースすることです。販売や法務、ヘルスケアなどの分野における業務フローを深く理解したAIエージェントの提供を目指します。三つ目がソフトウェアとハードウェアを連携したAIエコシステムの構築です。今回発表したNotta MemoとZenchord 1を通じて、Nottaを会話や会議の内容を記録・整理・検索・活用できる『第2の脳』として位置付け、ユーザーの知的生産性を高めます」

CEO
ライアン・チョウ 氏

COO
田村清人 氏