ジャイアン鈴木の「仕事が捗るガジェット」 - 第46回

小規模店舗でリーズナブルにWi-Fi環境を構築する無線LANルーター「Aruba Instant On AP11D」


日本Hewlett Packard Enterprise「Aruba Instant On AP11D」

ahamo、povo、LINEMOなどの新料金サービスが大手キャリアからスタートしましたが、各種ストリーミングサービスを利用している方にとって、いわゆる「ギガが減る」ことは大問題。Wi-Fiを利用できるか否かによって、飲食、休憩する店を決める方は多いと思います。今回レビューする「Aruba Instant On AP11D」は、小規模店舗向けに比較的リーズナブルな価格でWi-Fi環境を提供可能にする無線LANルーターです。

文/ジャイアン鈴木


通信速度よりも設置性やソフトウェア機能を売りにしたルーター

AP11DはWi-Fi 5(11ac)対応の無線LANルーター。最新のWi-Fi 6(11ax)には対応していませんが、壁に設置できるマウントキットを用意したり、わかりやすいモバイルアプリ・Web設定ツール、ビジネスを前提にしたソフトウェア機能を売りにした製品です。とは言っても最大867Mbps(5GHz、11ac、2x2 MIMO)で通信が可能で、最大アクティブデバイス数は50台。小規模店舗であれば実用上十分なスペックです。

パッケージには、本体、デスクスタンド(取り付け済み)、イーサネットジャンパーケーブル(取り付け済み)、壁用ボックスマウントブラケット、イーサネットケーブル、ネジ、取り扱い説明書が同梱。写真の電源は、PoE対応のネットワークスイッチやインジェクターがあれば、LANケーブル経由での給電(IEEE802.3at/af)が行なえるため、別売りとなっています

壁用ボックスマウントへの取り付けに使用するブラケット。省スペースに設置可能です

付属のイーサネットケーブル。長さは実測150cm

取り扱い説明書は、クイックスタートガイド(日本語)、Startup Guide(英語)、Safety, Compliance, and Warranty Information(英語)、Welcome!カード(英語)が同梱。クイックスタートガイドでは、スマートフォンを使ったセットアップ手順を確認できます

コンパクトボディーながらインターフェースの数は十分

AP11Dの本体サイズ(取り付け部品を除く)は86×40×150mm、重量は313g。インターフェースは、底面にPoE給電対応アップリンク接続有線LAN(RJ-45)×1、ダウンリンク接続有線LAN×2、PoE送電対応ダウンリンク接続有線LAN×1、背面にmicroUSB端子と、背面と底面で電気接続を行なうための一組のパッシブパススルーポート、右側面にUSB Type-A端子が用意されています。

ダウンリンク接続有線LANが3つ用意されているので、最大3台のPCを有線LAN接続可能です。コンパクトなボディーながらインターフェースの数は十分と言えます。

これはデスクスタンドを取り付けた状態。前面にはPSE(給電装置)、無線、システムのステータスを示すLEDが用意

右側面にはリセットボタン、セキュリティースクリューロック、USB Type-A端子、電源端子が配置

底面には左から、PoE給電対応アップリンク接続有線LAN(RJ-45)×1、ダウンリンク接続有線LAN×2、PoE送電対応ダウンリンク接続有線LAN×1を配置

デスクスタンドを取り外すと、本体背面にmicroUSB端子と、背面と底面の電気接続を行うための一組のパッシブパススルーポートが用意。製品出荷時、パッシブパススルーポートはイーサネットジャンパーケーブルで接続されています

家庭向けルーターをセットアップした経験があれば設定に悩むことはなし

セットアップはスマートフォン用のアプリケーション「Aruba Instant On」を使って行います。大まかな流れは、アプリのインストール、アカウントの作成、アカウントの有効化、新しいデバイスの選択、ネットワーク名(SSID)とパスワードの設定です。本製品は小規模店舗向けの無線LANルーターですが、家庭向けモデルをセットアップした経験があれば、特に悩むことはないと思います。

今回はiPhoneで設定しました。アプリケーション名は「Aruba Instant On」です

まずはアカウントを作成します

AP11Dをローカルネットワークに接続して、電源を入れていれば、アプリが自動的に検出します

最後にネットワーク名(SSID)とパスワードを設定

このホーム画面にたどり着けばセットアップは完了です

なお、クイックスタートガイドには記載がなかったですが、PCからブラウザーで「https://portal.arubainstanton.com/」にアクセスして、作成したアカウントのIDとパスワードを入力すれば、大きな画面で各種設定が可能です。細かく設定をいじるときにはブラウザーで作業することをオススメします。

これはゲストアカウントでログインした際に表示する「ゲストポータル」の設定画面。この設定項目はスマートフォン用アプリには表示されないので、ブラウザーから設定する必要があります

ゲストポータルを用意しておけば、SSIDとパスワードを入力したあとに、このようなウェルカム画面を表示できます

下りが最大567Mbps、上りが最大571Mbpsを記録

AP11DはWi-Fi 5(11ac)対応の無線LANルーター。通信速度を売りにしたモデルではないですが、実効通信速度も計測してみました。方法はAP11Dに「16インチMacBook Pro」をNBase-T対応の有線LANアダプター「SANLink3 T1」経由で接続して、ネットワークパフォーマンス測定ツール「iPerf3」をサーバーモードで実行し、「iPhone 12 Pro Max」の「iPerf」アプリからアクセスしました。結果は下りが最大567Mbps、上りが最大571Mbps。Wi-Fi 5(11ac)対応無線LANルーターの実効速度としては十分納得感のある結果です。

下りの最大通信速度は567Mbpsを記録

今回のベンチマークを5分間連続実行した際の発熱を計測したところ、デスクスタンドを外した背面で最大51.6℃に達しました(室温25.6℃で測定)。室温、接続台数、稼働時間によって発熱量は変わってくるので、あくまでも参考程度に留めてください

AP11Dはビジネスユーザーにとってリーズナブルな選択肢

いまどきの無線LANルーターならゲストアカウントを作成したり、利用可能スケジュールやネットワークアクセス制限を設定できるのは標準機能ですが、認証機能を備えたゲストポータルを用意できる点は便利そうです。店舗で来店者に開放するのにもよし、PoE対応の監視カメラを設置してもよし、店舗や小さなオフィスなどで活躍できるでしょう。

ビジネスを前提にしたソフトウェア機能を備えた無線LANルーターを探している方に、AP11Dはコスパのよい選択肢と言えます。

ジャイアン鈴木

筆者プロフィール:ジャイアン鈴木

EYE-COM、TECH Win、TECH GIAN、PDA Magazine、DIGITAL CHOICE、ログイン、週刊アスキー、週アスPLUSと主にPC系メディアで編集兼ライターとして勤務。2015年1月よりフリーの編集兼ライターとして活動を開始しました。