IT・デジタル技術を有する人材需要は拡大

Digital Human Resource

 矢野経済研究所は、デジタル人材関連サービス市場規模予測を発表した。同調査ではデジタル人材関連サービスを、デジタル人材育成・研修サービス、デジタル人材(IT技術者)派遣サービス、デジタル人材紹介サービスの3分野を対象として調査を行った。

 2022年度のデジタル人材関連サービス市場は、前年度比10.8%増の1兆1,754億円が見込まれる。市場拡大の背景として、IT・デジタルスキルの習得に向けたリスキリングなどの人材育成の需要が高いことが挙げられる。企業のDX推進やデジタライゼーションに対する機運のさらなる高まりにより、IT・デジタル技術を有する人材需要は拡大傾向にあるのだ。さらに、人材獲得競争が激化している中、IT・デジタル人材の確保・採用に向けたアウトソーシング需要や、IT技術者派遣の利活用において需要が高い水準にあることも市場の拡大を後押ししている。

 2023年度のデジタル人材関連サービス市場規模は、前年度比8.2%増の1兆2,720億円になる見込みだ。好調な市場規模の拡大を支える要因として、企業のDX推進によるIT・デジタル人材の需給逼迫がある。それにより、IT・デジタル領域の人材育成やリスキリング、採用のアウトソーシング、人材活用に対する需要が高まると矢野経済研究所はみている。さらに今後は生成AIなどの新たなデジタル技術やツールの利活用の拡大によって、新たなスキルやそれらに関する教育・研修の需要および、人材採用・活用の需要が発生し、市場の拡大につながる予測だ。

デジタル人材育成・研修サービス市場は堅調に成長

 同調査では、デジタル人材育成・研修サービス、デジタル人材(IT技術者)派遣サービス、デジタル人材紹介サービスそれぞれの市場動向の調査も行っている。

 デジタル人材育成・研修サービス市場は堅調な拡大を見せる見込みだ。堅調な拡大を支えるのは、IT・デジタル人材の需給逼迫の継続だ。それによって、IT・デジタル人材の教育・育成に対する投資意欲が高水準で推移するとみている。さらに、生成AIの利活用の拡大やデータ活用の推進によるデータアナリティクスの需要拡大といった新たなスキルや人材に対する教育・研修の需要発生も、市場の堅調な拡大を支える要因として挙げられる。

 デジタル人材(IT技術者)派遣サービス市場は今後も拡大を見せる見込みだ。IT・デジタル人材不足を背景としたさまざまな業種・企業からの需要の維持・拡大に加え、需給逼迫や賃上げなどによる単価上昇によって市場の拡大が見込まれている。しかしその一方で、IT技術者の獲得競争激化によって、派遣会社側の人材確保難が生じ、派遣技術者の供給力の低下が懸念される。

 デジタル人材紹介サービス市場は当面、拡大を維持する見込みだ。市場の拡大を支えるのは、IT・デジタル人材の需給逼迫の継続や、さまざまな産業・企業における業務・サービスのデジタルシフト・DX推進を背景とする積極的なIT投資がある。

※事業者売上高ベース。
※2023年度は見込値、2024年度は予測値。
※デジタル人材育成・研修サービス、デジタル人材(IT技術者)派遣サービス、デジタル人材紹介サービスの3市場の合計。

就業管理市場はSaaSを中心に拡大

Employment management

 アイ・ティ・アールは就業管理市場の市場予測を発表した。同調査によると、2022年度の就業管理の売上金額は前年度比20.2%増の328億円となり、2023年度は前年度比15.1%増が見込まれる。

 市場拡大の背景として、時間外労働の上限規制などの法改正によって就業管理システムのリニューアルを進める企業が増加していることや、テレワークなどの働き方の多様化がある。今後も市場は安定した成長が見込まれることから、2022〜2027年度の年平均成長率は14%を予測している。

 また、パッケージ市場、SaaS市場別の調査も実施した。2022年度のパッケージ市場が前年度比7.9%増に対し、SaaS市場は主要ベンダーの注力もあり、前年比25.3%と好調な成長を見せた。この傾向は今後も継続し、2025年度にはSaaS市場は市場全体の8割を占める予測だ。結果として2022 〜2027年度の年平均成長率は、パッケージ市場の4.3%増に対し、SaaS市場は16.7%増と高い成長率が見込まれる。

 同社 プリンシパル・アナリスト 浅利浩一氏は近年の就業管理市場についてこう語る。「市場規模は2012年度の約80億円から、この10年で4倍に拡大しました。その原動力はSaaSの伸長であり、競合製品・サービスとの厳しい価格競争の中でも、多様な働き方や雇用形態への対応を求める時代の要請を追い風に拡大してきました。今後も製品・サービス間の競争は続き、導入後のサポートやカスタマーサクセスが劣るSaaSは淘汰されていきながらも、就業管理市場は残るホワイトスペースを吸収しつつ、成長を続けるでしょう」

※ベンダーの売上金額を対象とし、3月期ベースで換算。
※2023年度以降は予測値。

データレスPC/データ分散PCの導入予定が増加傾向

Endpoint

 ノークリサーチは、中堅・中小企業が導入済み・導入予定のエンドポイント端末/サービスの動向について調査を行った。同調査では、導入済み・導入予定のエンドポイント端末/サービスを、PC/スマートデバイスといった「通常のエンドポイント端末」「1to1リモートデスクトップ」「クラウドVDI」「社内設置型VDI」「データレスPC/データ分散PC」「その他」に分類している。

 同調査によると、2023年導入済みの割合はそれぞれ、通常のエンドポイント端末が79.9%、1to1リモートデスクトップが35.1%、クラウドVDIが25.1%、社内設置型VDIが18.1%、データレスPC/データ分散PCが12.3%、その他が2.6%と、通常のエンドポイント端末の導入が最も割合が高い結果となった。

 これら導入済みの割合と導入予定の割合を比べると、通常のエンドポイント端末は、導入予定の割合が59.3%と減少している。その背景として、Windows 11への移行が進んでおらず、現段階で導入予定の端末が確定しないことが挙げられる。また、1to1リモートデスクトップの導入予定の割合は27.9%、クラウドVDIの導入予定の割合は23.6%と減少傾向となり、社内設置型VDIの導入予定の割合は19.6%と横ばいとなっている。これらに対し、データレスPC/データ分散PCの導入予定の割合は16.3%と4ポイントの増加となっている。増加の背景として、データレスPC/データ分散PCは通常のエンドポイント環境から変更点が少ないことがある。データレスPC/データ分散PCのOSやアプリは、通常のエンドポイント端末に導入する形態のため、通常のエンドポイント環境からの変更が少ないのだ。こうした変更点の少なさゆえに、中堅・中小企業にとってセキュリティと手軽さを両立しやすい選択肢であるとノークリサーチは分析している。