AIインフラ市場は生成AIがけん引

AI Infrastructure

 IDC Japanは、国内AIインフラ市場予測を発表した。同調査では、AIプラットフォームやAIアプリケーション、AI対応の従来型アプリケーションなどを一つ以上実行するサーバーと、外付型ストレージシステムの二つに分類し、調査を行った。

 2023年の国内AIインフラ市場の支出額は、前年比46.1%増の1,094億8,900万円となる見込みだ。市場拡大の背景には、各企業による生成AIの関心が急速に高まったことによる、サービスプロバイダーを中心としたAIインフラ投資の活発化がある。

 2024年以降もAIインフラ投資が続く見込みだ。エッジからクラウドまで全範囲でAIを活用する「AI Everywhere」といったAI活用の裾野の広がりや、マルチモーダル化の進展による画像や動画の生成を背景として、AI向けのコンピューティング・ストレージリソースの需要はさらに高まるとみている。そうした背景の下、2022~2027年までの年平均成長率は16.6%と高い成長を続け、2027年の支出額は1,615億5,000万円に達する予測だ。

 同調査では、製品カテゴリー・デプロイメント別でも調査を行っている。製品カテゴリー別ではAIサーバーが市場の成長をけん引し、デプロイメント別ではクラウド向けAIインフラが成長セグメントになる見込みだ。クラウド向けAIインフラは、パブリッククラウドサービスとして提供されるAIサービスや、AIワークロードに最適化されたIaaSへの需要が高まったことにより、AIインフラに対する支出も高水準で継続するとみている。プライベートクラウドにおいても、基盤モデルのファインチューニングや推論といったワークロードなどで、AIインフラに対する需要が高まると予測している。

 同社 Infrastructure & Devices リサーチマネージャー 宝出幸久氏は、同市場の今後の傾向についてこう分析している。「2023年の国内AIインフラ市場は、生成AIの隆盛を背景としたAIインフラに対する需要の高まりによって高成長を遂げました。生成AIの急速な普及が今後の国内AIインフラ市場の最大の成長要因になるでしょう」

アクセラレーテッドAIサーバーの需要拡大

 同調査では、GPUなどのアクセラレーターを用いてAIワークロードを実行する「アクセラレーテッドAIサーバー」についての予測も行っている。同調査によると、国内AIサーバー市場におけるアクセラレーテッドAIサーバーの構成比は、2023年の26.9%から2027年には35.4%へ上昇が見込まれる。2022〜2027年の年平均成長率は41.7%の予測だ。

 高成長の背景には、機械学習や生成AIを含むディープラーニングのワークロード向けのインフラとして、需要が急速に拡大していることがある。特にパブリッククラウドサービスのインフラ向けの支出が拡大しており、高い需要が継続するとIDC Japanはみている。

2023年度のIGA市場は前年度比75.6%増

Identity Governance and Administration

 アイ・ティ・アールは、ID管理に加え、ワークフローによるIDのライフサイクル管理やプロビジョニング、アクセス制御とID棚卸し、監査機能を含んだ製品「Identity Governance and Administration」(IGA)の市場予測を発表した。同調査によると、2022年度のIGA市場の売上金額は、前年度比58.7%増の11億9,000万円となった。

 市場拡大の背景として、セキュリティインシデントの増加が挙げられる。クラウドシステムの利用の増加に伴い、過剰な権限や相反する権限の付与による情報漏えいや内部不正といったセキュリティインシデントが増加しているのだ。そのため、IDの適切な管理やガバナンス、職務分掌といったセキュリティ強化のニーズを受け、セキュリティ意識が高く、セキュリティ投資に積極的な大企業を中心に導入が拡大している。

 これらの要因によって、2023年度のIGA市場の売上金額は、前年度比75.6%増の20億9,000万円が見込まれる。この高成長は今後も継続し、2022〜2027年度の年平均成長率は28.1%となり、2027年度には売上金額が41億円に達する予測だ。

 同社 コンサルティング・フェロー 藤 俊満氏は近年のIGA市場についてこう語る。「ID管理は、情報セキュリティポリシーに沿ってIDの発行・設定から、変更・削除までを包括的に管理することが必要であり、IGAのようなソリューションを使用することで迅速かつミスなく運用・管理することが可能となります。国内では大企業を中心に採用企業が増え、参入ベンダーも増加しており、今後も市場は好調に拡大するとみています」

タブレット出荷台数の減少傾向が継続

Tablet

 MM総研は2023年の国内タブレット出荷台数を発表した。2023年の国内タブレット出荷台数は544万台と、前年比13.8%減となった。この結果は2010年以降の出荷としては4番目に少なく、2013年以降の11年間では最少を記録している。

 出荷台数が減少した要因として、2019年12月に文部科学省より打ち出された「GIGAスクール構想」による特需の一巡が、2022年より継続していると同社は分析している。2020〜2021年と900万台以上の出荷が続いたGIGAスクール構想による特需は、2022年には前年の3分の2に大幅減少した。2023年も減少傾向に歯止めがかからず、3年連続で減少し、2020年と比べ56.1%にまで縮小した。

 さらに、LTEネットワーク通信が利用可能な携帯キャリアが提供するセルラータブレットの販売台数の回復傾向が見られないことも出荷台数の減少要因として挙げられる。携帯電話各社は、セルラータブレット販売の注力度が依然として低いため、セルラータブレットの販売台数の回復傾向が見られないのだ。

 今後のタブレット市場について、MM総研はスマートフォン市場において、折りたたみスマートフォンが注目を集めており、今後タブレットを脅かす存在に成長する可能性があると指摘している。しかし、GIGAスクール構想の次のステップ「Next GIGA」におけるWi-Fiタブレットを中心とした買い替え需要や校内データを統合して教育面・業務面の双方向で活用する「スマートスクール」、教育DXの流れがタブレット市場のV字回復に向けたポイントとして注目されていると、MM総研は分析している。