2022年度の社会インフラIT市場は回復傾向
Social Infrastructure
矢野経済研究所は、社会インフラIT市場規模予測を発表した。同調査では社会インフラITを、道路や鉄道、空港、港湾、河川、ダム、水関連、防災/警察の8分野を対象として調査を行った。
2020、2021年度の社会インフラIT市場は、6,248億円、6,095億円だ。2019年度の6,424億円と比較すると減少傾向となった。市場減少の背景には、新型コロナウイルス感染症の感染拡大がある。そのため、社会インフラIT案件の延期・停止が起こっていたのだ。特に、鉄道と防災/警察分野での市場縮小が大きく、2019年度と比べて約300億円の縮小が見られた。
2022年度の社会インフラIT市場規模は、前年度比5.4%増の6,424億円となった。前々年から前年までの減退傾向と異なり、2022年度の同市場は拡大に転じている。市場拡大の背景として、鉄道や空港、上水道、簡易水道、下水道、浄水場、排水処理、農業用水など水関連の分野において、社会インフラITへ投資が拡大したことが挙げられる。新型コロナウイルス感染症の拡大が沈静化したことにより、コロナ禍でストップしていた設備投資や保全計画が動き出したのだ。
2023年度の社会インフラIT市場規模は、2022年度の急拡大によって、前年度比1.7%減の6,315億円を矢野経済研究所は見込んでいる。
社会インフラで先進技術の活用進む
同調査では、社会インフラ向けITソリューション市場の調査も行っている。
現在の社会インフラIT市場は、レガシータイプの社会インフラITが占めている。しかし、2010年代から高速道路事業者や鉄道の大企業を中心に、デジタル技術を使った設備点検や遠隔監視、状態診断などを行うようになった。さらに2010年代後半からは、国土交通省がインフラ保全業務での技術活用を推奨しており、IoTやクラウド、ドローンやロボットといったテクノロジーの実装が始まっているのだ。こうしたテクノロジーの活用を背景として、2024年度の社会インフラ向けITソリューション市場は100億円を突破するとみている。さらに、IT技術の進展およびシステムの低廉化、現場での技術者不足や高齢化、残業規制の適用といった社会情勢の変化も市場の拡大を後押しすると矢野経済研究所は分析する。
今後5G/ローカル5Gや通信事業者が提供する無線通信方式「セルラー系LPWA」といったネットワーク、さらに6Gのような次世代型通信規格の登場も見込まれることから、新たなソリューションが創出される可能性がある。さらに、衛星やドローン、ロボットの活用が拡大すると矢野経済研究所は予測している。
2023年度のCDP市場は前年度比13.6%増
Customer Data Platform
アイ・ティ・アールは、メール配信システム・広告配信システムといった各種チャネルに、自社サイトのアクセスログや顧客・購買データなどを正規化した情報の作成と活用を目的とする製品・サービス「Customer Data Platform」(CDP)の市場予測を発表した。同調査によると、2022年度のCDP市場の売上金額は、前年度比14.2%増の118億円となった。
市場拡大の背景として、ベンダー各社が積極的なマーケティング活動を行うなど新規ユーザー獲得の動きが活性化していることに加え、既存ユーザーのシステム拡張も進んでいることが挙げられる。さらに2022年4月より施行された改正個人情報保護法によって、サードパーティーCookieの活用が制限された。その結果、企業は自社のWebサイトや店舗などから収集したファーストパーティーデータを利用したマーケティングの強化が課題となっている。そうした課題を解決するツールとして、CDPに注目が集まっているのだ。
これらの要因によって、2023年度のCDP市場の売上金額は、前年度比13.6%増が見込まれる。2022〜2027年度にかけての年平均成長率は13.6%の予測だ。
同社 シニア・アナリスト 水野慎也氏は近年のCDPの機能についてこう語る。「近年、大量の顧客データを機械学習によってセグメント分けするなど、AIエンジンを搭載したCDPも登場しており、今後学習モデルの改良により顧客理解の精度はさらに高まると予想されます。また、パーソナルデータのセキュアな活用においても機能拡充の動きが見られます。一部のベンダーはデータクリーンルームの装備を強調することで、パーソナルデータの保護とマーケティング活用の両立を訴求する動きが活発になるでしょう」
セキュリティ運用は一部にサービス&アウトソーシングを採用
Security / Operation Manegement / Backup
ノークリサーチは、年商500億円未満の中堅・中小企業がセキュリティ・運用管理・バックアップを行う「守りのIT対策」を、社内のエンドポイントに対して実施する手段に関して調査を行った。同調査では、各企業の実施手段を「パッケージ」「サービス」「アウトソース」「アプライアンス」「H/Wの付属機能」「OSの付属機能」に分類し、2022年と2023年の調査結果を比較している。
同調査によると、2022年から2023年にかけて、「サービス」が13.9%から16.2%、「アウトソース」が8.8%から13.5%と、大幅な増加を見せた結果となった。「サービス」と「アウトソース」の導入増加の背景として、管理サーバーを社内に設置する必要のないクラウド形態のセキュリティ・運用管理・バックアップのアプリケーションの増加が挙げられる。さらに、端末の調達・廃棄といったライフサイクル管理も含めた管理・運用を委託できるソリューションの増加も、導入の増加に寄与している。
導入の割合が最も高い実施手段は、2022年と2023年共に「パッケージ」となった。2022年は30.5%、2023年は31.3%と、2022年と2023年の割合に差がほとんど見られない。現在は旧来の「パッケージ」による社内エンドポイントの守りのIT対策を継続しつつ、部分的に「サービス」や「アウトソース」が採用されつつあるとノークリサーチは分析している。