昨今盛り上がりを見せる生成AIについて、市場調査会社のガートナージャパンは現在を市場での重要性や役割が理解される啓発期、安定期段階に進んでいると見解を示している。発展途上段階の生成AIにさまざまなリスクを危惧する声も上がるが、私たちが少しずつ歩み寄り理解を深めていくことで、将来的なビジネス創出や業務負担改善をサポートしてくれるだろう。今回は、生成AIとそのビジネスに関する入門書をいくつか紹介する。

まるわかり
ChatGPT&生成AI

野村総合研究所 編
990円(税込)
日経BP 日本経済新聞出版

 積極的にAI活用を考えていたり、何から始めたらいいか分からなかったりと幅広い層に向けたAI入門書。ChatGPTと生成AIに関し、進化の過程から課題と対応、日本企業の動向と将来展望などを解説。第4章では、生成AIサービスの例として、PowerPointを作成する「イルシル」「SlidesGPT」の機能を比較した。業務負担軽減の第一歩に役立ちそうだ。続けて「文書・対話」「プログラムコード」「動画」といったカテゴリー別にツールを紹介。大枠の概要を参照できる。Excel、Word、PowerPoint、Teams、OutlookなどにOpenAIのチャットAI「ChatGPT」の新バージョン「GPT-4」を統合した「Microsoft Copilot」も推奨している。本書を読むことでAIに対する理解と適用能力、データリテラシー、リスクの把握と周知といったスキルを高め、これらのツールを検討してみよう。

教養としての生成AI

清水 亮 著
1,034円(税込)
幻冬舎

 生成系AIについて、速く、正確性が高く、分かりやすい情報を伝えるため、筆者とChatGPT(GPT-4)が共同で執筆した1冊。GPT-4を用いて簡単な用例を示した第2章では、プロンプトとGPT-4の回答を記載している。今後ビジネスにAIを活用する意向のあるビジネスパーソンも活用方法をイメージしやすいだろう。昨今のAIの基となるディープラーニング技術に関しては、意味の近い単語を把握しそれらをベクトル化する仕組みを第3章にて図説し、AIの仕組みや本質に迫っている。最終章の第6章ではAIによって知性が無価値化され、クリエイティビティやホスピタリティが求められていくという予測を、原始時代から現代までの歴史になぞらえて説明。人間の美徳とされながら、お金にはならない習性は今後、人間社会の新たな価値創出につながるかもしれない。

AI人材に
いま一番必要なこと

藤本浩司 監修
柴原一友 著
2,420円(税込)
日本評論社

 本書は、AIをビジネスに生かすためのポイントや落とし穴を網羅的かつ体系的に解説している。AIをビジネスに生かす際に陥りやすい落とし穴としては、目的不明瞭、コスト設定の誤り、失敗への対策不足、導入初期から完全自動化、人間との連携不足などを挙げる。まずは目的を定めてスモールスタートし、失敗も見越して従業員と連携しながら業務負担を下げていくような運用が望ましいだろう。また、AIビジネスの進むべき方向性や対処方針を定めて、AIの構築・導入を円滑に進行するためには、AIの特長の把握が重要だ。第3章では米ボストン・ダイナミクスの人型ロボット「アトラス」やNTTコミュニケーションズの「AI映像解析ソリューション COTOHA Takumi Eyes」などのAIサービスに関する内容などを掲載している。多様な分野にAIビジネスを適用可能な1冊だ。