キヤノンITソリューションズが開発した「テレワークサポーター」は、キヤノンの顔認証技術を活用し、PCの前に座っている人物が本人か否かを認証し、在席/離席を判定し続けるクラウドサービスだ。以前は、Windowsのみの対応だったが、2023年4月からGoogle Chrome(Webブラウザー)版の提供を開始し、Chromebookでも利用できるようになった。テレワークの導入によって、従業員の労働時間の把握などに在席管理の需要が高まっている。Chromebookに対応したことで、さらなるビジネスチャンスが広がるだろう。

シンプルさと応用範囲の広さが魅力

「テレワークサポーター」は、PCに装備されているWebカメラの画像で本人を認証し、在席時間の計測や利用者以外ののぞき込みを検知するクラウドサービスだ。Chromebookで利用できるWebブラウザー版では、Chromeブラウザーで利用できるエージェントが提供される。

 Webブラウザー版エージェントを実行すると、ChromebookのWebカメラを使って登録されている利用者か否かの顔認証を随時行う。そして、その判定結果だけをインターネット経由でテレワークサポーターの管理サーバーに送信する。顔認証の判定はWebブラウザー側で処理されるため、画像データなどのプライバシー情報が外部に流出する心配もない。

 Windows版エージェントと比較すると「画面ロック」「撮影機器検出」「カメラ遮断検出」「常時起動」「他アプリとのカメラ共有」といった機能制限はあるが、基本的な認証や勤務時間の記録、Chromeブラウザーの機能を活用した自動起動など、標準的な機能は全て利用できる。

 動作の基本は、専用のWebブラウザー版エージェントが起動すると、Webカメラの映像が表示され、そこに映っている人物が登録されている本人か否かを確認し続ける。判定結果は、テレワークサポーターの管理サーバーに送信され、勤務管理者などが勤務状況を把握したり、本人以外ののぞき見や不正アクセスがないかを確認したりできる。

 機能と仕組みはシンプルだが、Chromebookを操作している人物が常に本人か否かを確認できるようになると、テレワークをはじめとしたモバイル端末の安全性がとても向上する。その結果、これまで導入を見合わせていた業務にも、Chromebookを提案できる機会が増えるだろう。

在宅が困難だった業務の問題を解決

 テレワークサポーターの導入実績の中に、コールセンター業務の在宅化を実現した成功例がある。コールセンター業務では、顧客対応に関連する問い合わせが多いため、オペレーターの操作するPCの画面には、個人情報が表示されるケースが多い。そのため、在宅で対応しようとすると、家族にものぞき見されないような完全な個室で作業する必要がある。なおかつ、誰にも見られていない状況であることも証明しなければならない。

 あるコールセンターでは、安全性を確保するために、監視用のWebカメラを組み合わせて、オペレーターを常にモニタリングしながら在宅業務を行ってもらう方法を検討した。しかし、監視用のWebカメラの設備投資にコストがかかる上に、インターネットの回線に常にカメラ映像を流し続けると、トラフィックの負担になるため、在宅勤務を見送ってきた。

 この問題を解決したのが、テレワークサポーターである。テレワークサポーターは、PCのWebカメラを利用するので新規の設備投資は不要だ。また、本人認証は確認データだけが送信されるので、トラフィックに負荷をかけることがない。さらにテレワークサポーターは、のぞき見を検知するとPCの画面をブラックアウトして情報を隠せるので、仮にダイニングで作業をしていて、子供が背後を通っても、画面を見られる心配はない。

 そのほかにも、本人確認が必要なeラーニングやオンライン試験などでも、テレワークサポーターが導入されている事例もある。また、製造業や人材派遣業、金融業なども、セキュリティ対策の強化にテレワークサポーターが活用されている。

外部システムとも柔軟に連携

 テレワークサポーターによる在席と離席データは、管理サーバーに蓄積されるだけではなく、Web APIでほかのクラウドサービスと連携し、在席状況やインシデント情報の共有などが行える。また、勤務時間などの勤怠データをCSVファイルに出力できるため、ほかの勤怠管理システムで読み込んで利用することも可能だ。

 テレワークサポーターの管理画面は、Google カレンダーのスケジュール画面のように、日付と時刻の表内に「在席」「離席」「インシデント」が色分けされたバーで表示される。のぞき見などのインシデントは、赤く点滅して表示されるので、管理者は一目で危険を認識できる。さらに、不正アクセスが検知されると、登録されている管理者のメールアドレスに通知が届く。カレンダー形式の表示のほかにも、管理者は利用者ごとの一覧なども確認できる。

 テレワークサポーターの利用者は、Webブラウザー版エージェントを起動したら、画面にある「勤務開始」をクリックして顔認証を開始する。あとは、エージェントが在席と離席を判定し続けてくれる。エージェントの画面には、勤怠のほかにもチームやタスクなどを選んで「開始」と「終了」を登録できるので、通常の業務だけではなくイレギュラーな作業などにも対応できる。

 テレワークサポーターは最小5ユーザーから導入できるので、小規模な企業や大手企業の部署、部門単位でも利用可能だ。大手企業の中には、仮想デスクトップ基盤(VDI)と組み合わせて、大規模に導入するケースもある。だが、Chromebookで利用できるようになったことで、VDIやシンクライアントのような大型の投資を行わなくても、安価な端末を大規模に導入できるようになった。

 例えば、単純なデータ入力の業務であっても、セキュリティ対策の関係から在宅での作業を許可しないケースもある。そうしたケースでも、テレワークサポーターによる本人確認とChromebookの利用履歴を確実に管理できるようになれば、在宅時に担当者がきちんと業務をこなしているかを記録で確認できる。

 コロナ禍が去っても、柔軟な働き方はこれからさらに求められていく。そのときに、Chromebookを操作する人物の確実な認証が行えるテレワークサポーターは、新しい在宅勤務のセキュリティ対策に貢献する魅力的な商材となるだろう。