農作業の負担を軽減する圃場管理ソリューションを活用したい

近年、IoTやAIなどを駆使した新しい農業のカタチとして「スマート農業」が注目されている。背景として農業従事者の高齢化や人材不足、後継者不足などの課題があり、スマート農業はテクノロジーの力によってそれらの業務改善を図る取り組みだ。しかし、スマート農業に活用される機械やサービスは高価格な製品であったり、最新のテクノロジーを使いこなすためのITリテラシーが求められたりするなど課題は多い。今回紹介する圃場管理ソリューションの機能や利便性を確認し、現代社会の農作業課題の解決の糸口を探ろう。

事業継承を見越した圃場管理にシフト

 スマート農業の代表例として、センサーデバイスの活用がある。例えば温度や湿度、日照時間などの情報をセンサーで収集することで、これらのデータと作物の生育状況を関連付け、より効率的で栄養価の高い作物を育てられる。また農業用ロボットを活用すれば、収穫を自動化して事業継続や新規参入の増加を促せる。

 特に、熟練の農業従事者は長年培ってきた経験と勘で品質を管理しがちだが、その数も減少傾向にある。前述したロボットやセンサーなどを活用すれば、未経験者でも農作物や圃場の記録が簡単に行える。これらのデータに圃場管理ソリューションを組み合わせれば、農業従事者が保有する圃場のデータを一元的に管理できる。

 一方で、スマート農業ソリューションはコストが高く、導入に二の足を踏みがちだ。こうしたコストの問題に対しては、農林水産省が実施している補助金・助成金制度などを活用することがお薦めだ。例えば、農林水産物の生産から消費に至るまでの環境負荷軽減と持続的発展を目指す交付金事業「みどりの食料システム戦略推進交付金」などがある。レンタルやリース商品などを検討するのも手だ。

 ソリューションを活用する際のITリテラシーへの懸念もあるだろう。これを踏まえ、手厚いサポートで容易に導入・運用可能なスマート農業ソリューションの提案を検討したい。

圃場管理や作物品質向上を低負担で

 それでは、農作業負担の軽減と事業継続をサポートするソリューションの機能をチェックしていこう。

 まずは、遠隔無線通信で圃場管理のコスト削減や安定した作物生産をサポートする圃場管理ソリューション。無線ネットワークを用いて通信や監視を行うことで、電源・ネットワーク・配線不要で設置できるという優れものだ。圃場内で管理する範囲を変更したり、複数の作物を入れ違いに管理したりできる。もちろんデータ管理のしやすさも担保しており、センサー間の温度差を3Dマップで表示する。収集したデータは、クラウド上に蓄積される。病気や生育不良が起きる原因を定量的に評価でき、温湿度データの状況から設備に不具合・故障を検出するなど、圃場環境の維持と向上に役立つ。

 農機の稼働状況を常に可視化するツールに対応している圃場管理ソリューションもある。農機の経過時間を記録するアワメーターは、燃料残量をPC上などで一覧表示できるため、農機の稼働状況をリアルタイムに確認可能となる。スマホでの作業記録にも対応し、作業記録を省力化する。万が一、圃場に異常が発生した時も自動でメール通知でき、気候変動への対応や犯罪防止に役立つ。

 今回は、NTTテクノクロス、ヤンマーアグリに製品を提案してもらった。

無線通信の圃場システムを遠隔監視

Fermier Monitor

NTTテクノクロス
個別見積

 遠隔無線通信により圃場環境のコスト削減や安定した作物生産をサポートする圃場管理ソリューション「Fermier Monitor」(フェルミエ モニター)を提案する。

 Fermier Monitorは、ハウスなどの圃場に設置可能な小型の「温湿度センサー」と併せて圃場管理システムとして提供している。温湿度センサーは半径約100m以内でデータを収集する。複数設置することによりハウス環境などを可視化する仕組みだ。

 通信には無線ネットワークを用いるため、ハウス内に電源やネットワークの配線が不要となり、任意の場所に設置できる。栽培期間中にセンサーの設置位置を変更したい場合も、柔軟な変更を実現する。複数の作物を生産している場合に、数カ月ごとに複数のハウスで入れ違いに管理するといった活用にも対応する。温度差は3Dマップで視覚的に把握しやすい形で表示可能だ。

 収集したデータは、クラウド上に蓄積する。携帯電話網やNTTの光回線「フレッツ光」を利用して、クラウド上へデータをアップロードする。PCだけでなくスマートフォンからも場所を問わずハウス内環境を確認できる。システムのUIは、ダッシュボード画面、カレンダー画面、データの詳細画面などを分かりやすく表示する。

 オプションを追加すれば細かな分析も実現する。例えば、複数センサーを任意に選択し、さまざまな角度で比較・分析を行う機能も利用可能だ。

 Fermier Monitorを適切に活用すれば、病気や生育不良が起きる原因を定量的に評価を行えるだろう。環境制御機器で意図する設定がされているか確認でき、暖房の稼働率削減も図れる。温湿度データの状況から設備の不具合・故障を検出するなど、圃場環境の維持に貢献するシステムだ。

複数の圃場管理をデジタル化&見守り

スマートアシストリモート

ヤンマーアグリ
スタンダードコース:2万2,000円/年※1
アドバンスSコース:2万2,000円/年※2
※1スマートアシスト搭載機を所有している場合。利用開始から、トラクターに活用する場合は最大10年間、コンバイン・田植機に活用する場合は最大7年間無料。
※2スマートアシスト搭載機を所有していない場合。最大1年間無料。

 遠隔監視技術で24時間365日農機を見守り、機械の状態や農作業を可視化する「スマートアシストリモート」を紹介する。

 スマートアシストリモートは、農機に搭載したGPSアンテナおよび通信端末を使い、農機の位置や状態、またセンサーで計測した作物の収穫量などを遠隔監視する。

 Web上で利用できる専用サイトでは、Googleマップ上に農機の位置をアイコンで示す直感的なUIを採用。農機の現在位置と共にエンジンの稼働時間や燃料残量を表示する。

 スマートアシスト搭載機に異常が発生すると、ヤンマーアグリ担当者が異常箇所の診断や部品手配を速やかに対応する「エラー情報通知サービス」も提供する。エラーの発生場所やエラー現象・対処方法を即時に確認できるため、ダウンタイム削減を図れる。

 また、あらかじめ設定した時間や場所以外で農機が稼働するとヤンマーアグリから所有者へ電話とメールで異常を伝える「盗難抑止見守りサービス」も提供する。

 専用サイトでは農機の管理のみならず、圃場ごとの作付管理や農作業の記録が可能な「ほ場情報管理ツール」「作業記録管理ツール」を備える。ほ場情報管理ツールでは、Googleマップに枠で囲った耕作圃場を重ね、作付けしている作物・品種ごとに色分けして管理でき、登録した圃場は1kmメッシュで1週間分の天気予報、1時間おきに36時間先の詳細情報まで閲覧できる。

 作業記録管理ツールは、農機の稼働履歴情報を使い容易に作業を記録できる。作物の生育状況や害虫発生状況の画像も登録可能だ。

 遠隔監視から記録まで農作業を包括的にサポートするスマートアシストリモートはデジタル管理で作業の効率化を図りたい農業従事者、農業団体にお薦めだ。

※価格は全て税込