2030年頃の未来社会を先行実装する「スーパーシティ構想」について内閣府が語る

都市の未来を実装する
SUPER CITY スーパーシティ

Special Feature 2
これまで6回にわたって、デジタル田園都市国家構想にまつわるテーマを取り上げてきた特集も、今回が最終回となる。今回取り上げる「スーパーシティ」とは、これまで紹介してきた先端テクノロジーが日常的に活用されている未来社会を、先行して実際の都市に実装する取り組みだ。多様な分野に活用されるテクノロジーの可能性と、デジタル田園都市国家構想が目指す未来社会をのぞき見よう。

What's SUPER CITY ?
10年先の未来へ導くスーパーシティ

高齢化や過疎化といった社会課題に直面する地方において、デジタル技術を活用することでその個性を生かしながら地域を活性化し、持続可能な経済社会の実現を目指すデジタル田園都市国家構想。特定地域において大胆な規制改革を行いながら、2030年ごろの未来社会の先行的な実現を目指すのが「スーパーシティ構想」が、それを導いていく。



内閣府
地方創生推進事務局
国家戦略特区担当
参事官
菅原晋也

 スーパーシティ構想の概要について、内閣府 地方創生推進事務局 国家戦略特区担当 参事官 菅原晋也氏は「Society 5.0の先行的な実現の場として定義され、ICTなどの技術を活用しつつ都市や地域の抱える課題解決を行う都市や地域を『スマートシティ』と定義しますが、スーパーシティはそのスマートシティの概念に内包されるような位置付けの概念です。スーパーシティとスマートシティの大きな違いは『大胆な規制改革を伴うかどうか』にあります」と語る。

 スーパーシティ構想のポイントは大きく3点ある。一つ目は生活全般に跨る複数分野の先端的サービスの提供だ。ここで言う複数分野とはおおむね5分野以上を指しており、AIやビッグデータなどの先端技術を活用し、例えば行政手続きや移動(モビリティ)、医療、教育などの幅広い分野での利便性向上を目指す。二つ目がこれら複数分野間でのデータ連携だ。前述した複数分野での先端的サービス実現のため、「データ連携基盤」を通じてさまざまなデータを連携・共有する。三つ目は大胆な規制改革だ。先端的サービスを実現するための規制改革を同時、一体的、包括的に推進していく。これらスーパーシティ構想を実現していく地域を「スーパーシティ型国家戦略特区」という。

 同様にデジタル田園都市国家構想を先導するモデルとして、デジタル技術を活用して健康・医療分野などにおける革新的な事業を先行的に実施する「デジタル田園健康特区」があるが、複数分野にわたる先端的サービスの提供は行わないところなどが、スーパーシティ型国家戦略特区とは異なるポイントだ。

 このスーパーシティ型国家戦略特区に政令で指定されたのが、茨城県にあるつくば市と、大阪府・大阪市だ。「2021年4月に31自治体からスーパーシティ提案がありましたが、その時の提案には大胆な規制改革が必要なものが少なく、同年10月に28自治体から再提案をいただき、今回の2自治体に決定しました」と菅原氏。つくば市は「誰一人取り残さない」包括的な社会モデル構築を目指しており、インクルーシブを重視した「つくばスーパーサイエンスシティ構想」を掲げている。大阪府・大阪市は「2025年日本国際博覧会」(略称:大阪・関西万博)を契機とした先端的サービスの実現を目指し、空飛ぶクルマなどの社会実装を目指す。

 内閣府はこうしたスーパーシティ実現に向けたスーパーシティ構想等推進事業に2022年度補正予算と2023年度予算案を合計して約10億円の予算を計上しており、2023年度予算では先端的サービスの社会実装を促すデータ連携への支援を拡充していく方針だ。「2022年11月、今回指定された国家戦略特区ごとに区域方針を策定しました。今後は次のフェーズとして、自治体の首長や事業者、内閣府などが参画した区域会議を立ち上げ、区域計画案の策定を進めていきます」と菅原氏は直近の展開について語った。

つくば市上空を飛行するドローン。地域のスーパーから食料品を詰め込み、つくば市の宝陽台自治会館まで配送する。配送された食料品は、その場で配送ロボットに積み替えて、ロボットが注文者の自宅まで配送していく。
配送ロボットは「発進するよー!」などの声を掛けながら歩行者と同程度の速度で走行していく。
また交通弱者の足の代わりとなり得るパーソナルモビリティロボットは、電動車椅子と同程度の大きさながら自動運転で走行し、目的地まで利用者を運ぶ。このロボットも配送ロボット同様に「ロボットが走行しています」「右に曲がります」といった声などで動きを周囲に伝えている。