量子鍵配送システム

衛星搭載用QKD送受信システムの小型化を実現

 東芝は1月28日の記者会見で、大陸間での安全な通信を実現する高速・小型な衛星搭載用の「Quantum Key Distribution」(QKD)送受信システムの開発を発表した。

 技術開発の背景について、東芝欧州社 ケンブリッジ研究所 副所長 小坂谷達夫氏は、次のように説明する。「量子コンピューターの進展により、既存の公開鍵暗号が将来的に解読される可能性が指摘されています。そのため量子力学の原理に基づき、盗聴が理論的に不可能なQKDへの期待が高まっています。QKDは国内では光ファイバー網を用いて実用化が進んでいますが、伝送距離に比例して損失が増加するため、数百㎞を超える通信は困難です。また『量子複製不可能性定理』により、信号を単純に増幅できず、海底ケーブルなどを用いた大陸間通信には適用できません。そのため大陸間の量子暗号通信では、衛星を用いたQKDが有効な解決策となります」

 開発したシステムでは、1GHz帯を利用した高速QKD通信により、低軌道衛星が地上局の上空を通過する3〜5分の間に、大量の暗号鍵を生成・送信可能だ。また衛星への搭載コストを抑えるため、送信機は幅約20×奥行き約10×高さ約10㎝、重さ約1.6㎏、受信機は幅約40×奥行き約30×高さ約10㎝、重さ約9㎏と、コンパクトかつ軽量な設計を採用している。

 さらに、この送信機と受信機をイギリスのヘリオット・ワット大学の衛星地上局に統合し、衛星QKDで生成した暗号鍵を、通信や情報セキュリティ分野の国際的な技術標準「ETSI標準」に準拠した鍵管理ソフトウェアを通じて地上ネットワークへ安全に連携する仕組みを実証している。この実証により、通信波長や伝送方式、プロトコルなどが異なる衛星QKDと地上の光ファイバーQKDの間で、シームレスな暗号鍵の共有が可能なことを証明した。

 最後に小坂谷氏は「ドローンを利用した自由空間QKDや、低軌道衛星と地上との通信実証を進めていきます」と今後の展望を語った。

今回開発された送信機。本体は幅約20×奥行き約10×高さ約10cm、重さ約1.6kgとコンパクトかつ軽量な設計を実現している。