AIを武器に進化していくBoxの
AIエージェント戦略とは
3月27日、Box Japanは新年度の事業戦略に関する記者説明会を開催した。AIエージェントが活用段階に進むことで、人間の利用を前提としたソフトウェアの価値が減少する“SaaS is dead”が世間で語られるようになっている。しかしそんな中でも同社は、AIを武器にさらに進化していくという。本記者説明会で語られた同社のAI戦略を、詳しくレポートしていこう。
“SaaS is dead”の世の中でも
AIを武器に加速するベンダーへ

会見の冒頭はBox Japan 社長執行役員 佐藤範之氏が登壇し、Box JapanのFY2026におけるビジネス概況をこう振り返る。「FY2026は、非常に大きく成長した1年になりました。日本のお客さまから新規で獲得したライセンスの年間経常収益は、昨年度対比で34%成長しました。また新しいお客さまを獲得しつつも、既存のお客さまにもしっかり伴走しています。それを示す数値として、更新率は98%と高い数値を確保できました。その結果、グローバルにおける日本の売上比率は25%を記録しています。この25%という比率は、外資系SaaSベンダーの中でも高い数値だと考えています」
ではなぜBox Japanは、FY2026で好調な結果を出せたのだろうか。その理由について、佐藤氏は次のように説明する。「当社の日本でのビジネスは、エンタープライズだけでなく、500~2,000人規模のミッドマーケットや、500人未満のSMBのセグメントでも大きく成長しました。特に金融と公共がけん引し、この二つの領域は昨年度対比で約2.5倍の成長を見せています。加えて、関東や近畿以外のお客さまにも『Box』を使ってもらうために、新たなパートナー戦略として、昨年からダイワボウ情報システム(DIS)さまと契約を締結しました。現在DISさまが抱えるパートナー各社に、積極的にBoxを担いでもらっています。これによって非常に良い成績を残すことができた上、全国さまざまなところから引き合いをいただく状況が、今も続いています」
同社が好調な成績を残せた理由はまだあると、佐藤氏はさらに続ける。「カスタマーサクセスと、当社のコンサルティングサービス『Box Consulting』の連携強化を行いました。お客さまの環境にフィットした支援を実行することが、Box Consultingの仕事です。そしてBox Consultingが導入された後、お客さまの業務にきちんと影響が出ているかを確かめるために、カスタマーサクセスチームがしっかり伴走していきました。この取り組みが、98%の更新率にインパクトを与えました。また、昨今のランサムウェア被害を受けて各社がセキュリティ状況を見直したことも、Boxの導入につながっています。加えて、AIを活用したファイルの管理・利活用について、マーケティングメッセージを手厚く発信していました。こうしたことも受けて、お客さまが新しいAI活用のコンテンツ基盤に移る際、Boxを選んでもらうことができています」

また佐藤氏は、2026年は“AIエージェント実装の年”になるとメッセージを出す。「AIモデルの競争はすでに、あまり差が付かないところまで来ています。そのためお客さまは、AIエージェントが自社の業務にどう貢献するかへ考えをシフトしています。またAIの活用も、個人から組織へとスケールが大きくなっています。そして昨年、当社のコンサルティングチームがいくつかの企業とAI活用のPoCを行いました。今年はこれを本格実装し、具体的な成果を得るところまで持っていきます。お客さまがすぐに成果を出せるように、ソリューションをパッケージングし、半カスタマイズの状態で届ける体制を整えます」
そして同社のFY2027のAI戦略について、佐藤氏は以下のように語る。「ソリューションのパッケージングについては、ライフサイエンス、金融、公共といった、人と文書の取り扱いが多い業界に力を入れていきます。ライセンスはシートライセンスを継続しつつ、APIコールやAIトークンをユニットとして販売し、業務のトランザクションに応じて課金する仕組みを提供していく予定です。またGo to Market戦略を進めるに当たって、これからは業務部門にもコンタクトを取っていきます。業務部門への説明も、具体的な課題にフォーカスしたコミュニケーションや、導入による経済合理性を証明する方向へシフトしていきます」
最後に佐藤氏は、同社のAI戦略を進めるに当たっての意気込みをこう語った。「“SaaS is dead”と言われていますが、AIエージェントの登場で駆逐されるベンダーがいる一方、AIを武器にして加速するベンダーも出てきます。当社はもちろん、加速するベンダーです。お客さまのデータを保有しつつ、AIエージェントで業務を回せるSaaSベンダーこそが、次の覇者になっていきます。我々は“SaaS 2.0”のベンダーとして、今後も成長していきます」
AIのために進化するBoxで
人間とAIが共に業務を遂行

佐藤氏に次いで、Box Japan プロダクトマーケティング部 エバンジェリスト 浅見顕祐氏が登壇した。
浅見氏は、同社が4月3日に一般提供開始を発表した「Box Agent」について紹介を行った。Box Agentは、「Enterprise Plus」プランおよび「Enterprise Advanced」プランで提供されるものだ。AIエージェントがBoxの中のファイルを参照し、情報の検索や業務文書の作成、要約・分析の提示などを行ってくれる。参照するデータはユーザーがアクセス権限を持つもののみになるため、顧客の独自データがサードパーティーの大規模言語モデルのトレーニングに使われることはない。

Box Agentは、AIと対話型のやりとりが可能な「Box AI Home」に搭載されている。Box AI Homeの検索窓に「○○の資料を探して」「△△の概要を教えて」といった手伝ってほしい事柄を入力すれば、Box Agentがその指示を実行してくれるのだ。
浅見氏は、Box Agentの特長を次のように話す。「Box Agentはマルチエージェントで動きます。ユーザーの指示を受けて理解するのがBox Agentですが、その裏では検索エージェント、質問エージェント、抽出エージェント、生成エージェントが連携して動いています。現在は資料の検索や要約、比較、想定質問の提示などが行えますが、今後はPowerPoint資料を作成する機能も追加する予定です」

浅見氏はBox Agentの説明に続けて、コンテンツの活用STEPを提示する。そして「Boxは、さらに先のAI活用へ行こうとしています」と強調する。「AIによって進化したBoxは、現在STEP4の『AIによるデータの資産化』の地点まで来ています。STEP4では非構造化データを情報資産に変えていくことがメインでしたが、今皆さまや私たちが目指しているのは、STEP5の『AIと人が共創する業務』です。人間の指示を待ってAIが動くのではなく、自律的にAIエージェントが動き、Boxの中のコンテンツを見に行ったり資料を作成したりすることを目標にしています。ですのでBoxはAIのために進化し、AIの武器になるよう進化していくのです」

またBoxはAI活用のコンテンツ基盤として成長するだけでなく、人とAIが混在するビジネスプロセス「Human in the Loop」を実現する機能の実装も目指すと浅見氏は語る。その実装を目指す機能が、「Box Automate」だ。
Box Automateは、同社が提供するワークフロー自動化アプリケーション「Box Relay」の進化版だ。AIが抽出したメタデータをスコアリングする機能で、提示された点数によって、人間も作業したほうがよいかどうかを判断できる。「例えば60点と出た場合は、人間もチェックしたほうがよいと判断が行えます。逆に90点以上であれば、人間のチェックはパスして次の作業へと移れます。このように、人間とAIが混在するコンテンツワークフローを構築可能になる機能を実装予定です」(浅見氏)
最後に浅見氏は、BoxとAIの関わりについて「AIエージェント機能だけでなく、Human in the Loop機能も強化し、AI-Readyなコンテンツ基盤を実現していきます」と強調した。
AIエージェントとコンテンツを
安全に連携するプラットフォーム
会見の最後はBox 共同創業者 兼 CEO アーロン・レヴィ氏がオンラインで参加し、「AIが仕事の在り方そのものを一変させています」と切り出す。「AIエージェントの性能は、急速に向上しています。単なるアシスタントとしての役割から、自律的に仕事を行う新しい労働力になっているのです。全ての仕事と従業員にエキスパートが付いている状況になり、個人個人の仕事に大きな変革をもたらします。そして、ナレッジワークを加速していきます。加えて、組織全体の生産性も大きく変革します。これがエンタープライズにおける真のAIのインパクトです」(レヴィ氏)

続けてレヴィ氏は、AIを活用する上での重要なポイントをこう語る。「AIが皆さまのビジネスについて、きちんと情報を把握しているかが非常に重要になってきます。そしてこうしたビジネスのコンテキストは、あらゆる企業のコンテンツの中に存在しているのです。AIの可能性を引き出すためには、自社独自のコンテンツとAIエージェントを、きちんと連携させていく必要があります」
しかし、コンテンツとAIエージェントの連携には、ある課題があるとレヴィ氏は話す。「企業のデータは、90%が非構造化データといわれています。加えて企業にある膨大なデータは、サイロ化した状態で存在しています。そのため、さまざまなところに分散したデータをうまく活用することが難しい状況になっているのです。そしてこれが、企業の生存問題に関わる大きな課題になっています。例えば、AIエージェントが間違った情報を基に作業をすると、間違った回答を従業員に提供してしまいます。もしくは、機密性の高いデータを漏えいさせてしまう可能性もあります。つまり企業には、安心安全な形でコンテンツとAIエージェントを連携できるプラットフォームが必要になってくるのです」
その課題に対して同社は、コンテンツとAIで業務を変革する「インテリジェントコンテンツ管理」という回答を提示している。インテリジェントコンテンツ管理によって、ワークフローの自動化やデータの検索が行えるだけでなく、カスタムエージェントの構築や異なるAIモデルの管理も可能になるという。

最後にレヴィ氏は、インテリジェントコンテンツ管理による業務改革について、以下のようにアピールした。「AIエージェントとコンテンツ連携の変革によって、業務改革が加速すると考えています。ナレッジワークを効率化したり、膨大な情報をマイニングしたりすることが行えるのです。さらにAIエージェントを利用して、ワークフローの変革も行えます。一つのAIエージェントだけでなく、たくさんのAIエージェントを集めたAIエージェント群が、皆さまの会社のコンテンツを使って仕事をするのです」

