2025年9月10・11日、ダイワボウ情報システム(DIS)が主催するICT総合イベント「DISわぁるど」が、「山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング)」にて実施された。国内外の主要ITベンダーが最新技術を披露し、来場者との情報交換や商談が活発に行われた。多くの来場者でにぎわったセミナーの様子と注目の展示を、ダイジェストで振り返っていく。

Day1:Special Session

ゴルフと人生のヒント

失敗を恐れず挑戦し続ける力

岡本綾子氏
プロゴルファー
岡本綾子

「ゴルフと人生のヒント」と題して行われたプロゴルファーの岡本綾子氏の特別セッションは、挑戦と探究の軌跡を辿る濃密な時間となった。広島県出身の岡本氏は、ダイワボウホールディングスの実業団ソフトボールチームでエース投手として活躍し、1971年に開催された「第26回国民体育大会(和歌山国体)」のソフトボール競技で優勝を果たした。その後、21歳でゴルフに転向。大阪府にある「PGM池田カントリークラブ(旧:池田カンツリー倶楽部)」で研修生としてゴルフを始め、約1年後にプロテストに合格した。

「研修生時代は、夜遅くまで月の光や街灯の明かりを頼りにパッティングの練習をしたり、女子寮までの4kmの山道を走って帰ったりしていました。危ないからやめた方がいいと周囲に言われることもありましたが、それでも私はトレーニングを続けました」と岡本氏は話す。その努力が、短期間でのプロ入りを支えた。

 1987年には「米国女子ゴルフツアー(LPGAツアー)」で賞金女王に輝き、米国人以外の選手として史上初の快挙を達成した。「あの時は、賞金女王になったという実感が全くありませんでした。どうすればもっと良いプレーができるか、そればかりを考えていました」と岡本氏は語る。結果より過程を重視する姿勢は、ビジネスにも通じる。肩書きや数字にとらわれず、日々の積み重ねこそが本質であるという考え方である。

 海外生活も挑戦の連続だった。米国での活動を始めた頃、現地の選手たちのアパートを転々としながら生活し、通訳者を介さずに、自らの力で交流を重ねた。「言葉が通じなくても、自分で動いてみようと思いました。そうすることで、少しずつ環境にも慣れていったのです」と岡本氏は語る。異文化の中で自分のスタイルを貫きながらも、柔軟に環境に適応していく姿勢は、挑戦を続ける人間の強さを物語っている。

経験が判断の糧となる

岡本綾子氏によるレッスン
岡本氏によるゴルフレッスンが行われた。

 岡本氏の挑戦は、技術や精神面だけでなく、自然との向き合い方にも表れている。「ゴルフは自然との戦いです。特に雨の日は、傘を差して待つ時間が長いため、腕の疲労がショットにも影響してしまいます」と岡本氏は語る。

 雨に加えて、風もまた難しい相手だ。「風を敵に回すと、ゴルフは途端に難しくなります。だからこそ風とは友達になればいいのです。ただし、風向きを読むには、ボールを打つ技術以上に繊細な判断が必要になります」と岡本氏は話す。

 風速や地形によって球筋が変わるため、情報収集と経験が欠かせない。風や地形の特徴は、一度のプレーではつかみきれない。繰り返しの実践を通じて、判断の精度が磨かれていく。「例えば、キャディーから『このホールは谷間から吹き上げる風が強い』といった情報を共有してもらうことがあります。そうした情報を基に、自分の球筋が風にどう影響されるかを見極めることが大切です。ただ、風は目に見えない分、実際の流れが予想と異なる場合もあります。風が右から吹いているように見えても、グリーン上では逆方向に流れていることもあるでしょう。だからこそ、情報に加えて、実践を通じて得た経験が判断の糧となっていきます」(岡本氏)

思考と工夫が技術を磨く

 ゴルフ解説などの仕事にも携わる岡本氏は、技術を伝える場面でも常に工夫を重ねてきた。「ゴルフをしない人、関心のない人に興味を持ってもらうにはどうしたらいいのだろうと、自分なりに工夫したことがあります。スタンス、グリップではなく、足の幅や構え方、握り方といったように、ゴルフ用語をなるべく使わず解説した時期もありました」と岡本氏は話す。専門的な内容であっても、相手に合わせて言葉を選ぶ姿勢は、岡本氏の考える“伝える力”の一端を示している。

 特別セッションの終盤では、岡本氏によるゴルフレッスンが行われた。クラブの握り方やスタンスの取り方、球筋の打ち分けなどを具体的に説明しながら、実際のスイング動作を交えて指導した。岡本氏の特別セッションを通じて、参加者はゴルフの技術のみならず、人生を前向きに歩むためのヒントを受け取っていた。