大阪と東京をテクノロジーでつなぎ
多様なSTEAMプログラムを高校生や大学生が体験

2025年8月8日に、日本経済新聞社大阪本社が主催する「日経STEAM 2025シンポジウム」が開催された。本シンポジウムは、STEAM教育の推進や、文化・社会貢献活動の一環として実施されており、「探究ポスター発表 アイデアの泉」や「デジタルアート展示・発表会」などさまざまなプログラムが実施された。また、大阪会場と東京会場をオンラインでつなぎ、双方の参加者が発表を行う「私たちは問う 自由で豊かな未来のために発表コンテスト」や「DIS STEAMゼミ」も開催された。ダイワボウ情報システム(DIS)は2022年から継続して、同イベントに特別協賛するとともに、前述したDIS STEAMゼミの主催や「DIS特設体験コーナー」の設置によって、子供たちに3Dプリンターやドローンなど、最新のICT機器に触れる環境を提供した。

今年で4回目の開催となる「日経STEAMシンポジウム」。大阪会場となるインテックス大阪では、探究学習の内容をポスターで発表し、地域も分野も業種も超えたさまざまな人々から付箋でコメントをもらう「探究ポスター発表 アイデアの泉」や、SDGsの目標から自分達が最も達成したいものを選択し、シンボルキャラクターをデジタルアートソフトで制作し、そのキャラクターのプレゼンをポスターとARで行う「デジタルアート展示・発表会」、文理を問わず若手研究者と語り合える座談会「若手研究者座談会 語り合おう未来のために」、“問い”を立てる大切さと楽しさを体感できる体験型授業を提供する「サントリーSunRiSE『Q to VIEW』“問い”の探究で一変する世界のミカタ」、高校生が入試相談を行える「大学相談コーナー」のほか、大学研究室から普段触ることができない研究機材に直接触ったり操作したりできる「大学体験コーナー」に加え、「DIS特設体験コーナー」では3Dプリンターやドローン、生成AIなどに実際に触れて体験する場が提供され、来場者の姿でにぎわった。
また今年も大阪会場と東京会場をオンラインで中継し、それぞれの会場から発表を行う「DIS STEAMゼミ」も開催された。東京は東京国際フォーラムで実施され、前述したコンテストの開催のほか、DIS特設体験コーナーも設置され、会場を問わずSTEAMの学びを体験する熱心な生徒や学生の姿が見られた。大学生から小学生とその保護者など、幅広い年齢層の来場者でにぎわった日経STEAM 2025シンポジウムは盛況のうちに幕を下ろした。
本イベントリポートではDIS STEAMゼミおよびDIS特設体験コーナーの様子にフォーカスを当て、当日の様子を紹介していく。




教育や生活の身近な課題をどう解決する?
生徒や学生の視点から多彩なソリューションを提案
昨年に引き続き、大阪会場と東京会場の2拠点をオンラインで中継しながら、ICTを活用したアイデアを披露した「DIS STEAMゼミ」。「ICTで常識を変える。生活・教育の未来探究」をテーマに据えたプレゼンテーションが行われた。本記事ではそのDIS STEAMゼミの様子を、参加した生徒や学生の様子を交えて紹介していこう。

2025年のDIS STEAMゼミでは、大学と高校合わせて20校、22チームが出場した。昨年に引き続き出場した学校の姿もあり、STEAM教育への意欲的な学びの姿が見られた。
それぞれのチームの発表は、審査の上で最優秀賞が1チーム、優秀賞が2チーム、審査員特別賞が4チームに授与された。本記事では上位3チームを紹介する。審査員は大阪会場からDIS 取締役 販売推進本部長 竹渕正治氏、インテル 東京本社 アカウント・パートナー事業本部 副本部長 栗原和久氏、アドビ 教育事業本部 執行役員 本部長 小池晴子氏、グーグル Google for Education マーケティング日本統括 塙 真知恵氏、東京会場からはDIS 販売推進本部 副本部長 宇佐美一男氏、日本HP パートナー営業統括 第一営業本部 本部長 塩谷義嗣氏、日本マイクロソフト コーポレートソリューション事業本部 チャネルパートナー統括本部 担当部長 五十嵐佳織氏の合計7名が審査員を務めた。
今年のテーマは「ICT(情報通信技術)で常識を変える。生活・教育の未来探究」だ。プレゼンテーションで特に目立ったのが、現在のICT教育の課題を解決するソリューションだ。例えば、現在の高校生や大学生はコロナ禍において学校が一斉休校となり、オンライン授業を実際に日常的に経験してきている。その経験から、オンライン教育やICT教育に対する課題として「臨場感がない」「身体性の喪失」「受講生の意欲が低い」といったポイントを指摘。解決手段としてのVRやデータ、AIアバターの活用など、多様なテクノロジーを活用した方法を提案した。また、現在の学校部活動は教員の長時間労働などの課題が生じていることで、一部の部活動が廃止になるなど生徒たちの学校生活にも影響が生じている。そうした身近な課題に対して、メタバース空間の活用や、AI技術を用いた運動支援や学校マッチングシステムなどの提案も行われた。中には保育園の子供たちに対して、音楽を生成するAIを活用したダンスの提供を提案する生徒たちの姿も見られた。
ほかにも、里山保全や地域鉄道の衰退に伴う、新たな交通手段の提案など、テクノロジーを活用することで身近な地域課題を解決しようとする姿も見られた。昨年同様、テクノロジーの活用例のみならず開発予算や費用対効果、収益化に向けた予測なども含めたプレゼンテーションを行う姿が見られ、参加した生徒や学生同士で積極的に質疑応答を行う姿があった。
DISの竹渕氏は表彰式後の全体の講評において「皆さんの発表を拝聴する中で、身近な社会課題や教育現場の課題に対する真摯な姿勢に感動しました。一方難しいと感じたのは、この素晴らしいアイデアをいかにサービス化、社会実装していくかという点です。今回のDIS STEAMゼミを通じて、その難しさを痛感された方も多かったのではないでしょうか。社会の課題や教育現場の課題に対して、これからもさまざまなことにチャレンジしていただけたらうれしく思います。近い将来、また皆さんとお会いできることを楽しみにしています」と締めくくった。



豊島岡女子学園高等学校
チーム名:レアチーズケーキ
今いる場所をあなたの教室に
最優秀賞に選ばれたのは豊島岡女子学園高等学校の「レアチーズケーキ」というチームだ。豊島岡女子学園高等学校は昨年のDIS STEAMゼミに引き続き最優秀賞を受賞した。今回のレアチーズケーキの生徒たちは、双方向型のオンライン授業をVRで実現するサービス「ClassPort」を提案。これは「インフルエンザや入院などで学校を休むと授業進度からの遅れが不安」といった課題に対し、現状支援制度が不足していることを指摘し、家や病院からでも参加できるオンライン授業に、VRの技術を活用して臨場感をプラスすることを目的としたソリューションだ。実際の画面イメージや、会話・表情変化機能のイメージなども示しながら、価格設定やビジネスロードマップ、収益の推移なども交えてプレゼンテーションを行った。審査員として講評コメントを述べたDISの竹渕氏は「発表内容やアイデアの評価はもちろんですが、今回事前にルーブリックを配布しており、それを読み込んだ上でプレゼンテーションに挑んできていると感じました。全項目高いスコアを獲得しており、発表にも非常に時間をかけて練習してきていることが伝わりました」と評価した。

優秀賞
愛媛県立松山南高等学校
チーム名:Interesting Creative Teaching
優秀賞に選ばれた愛媛県立松山南高等学校のチーム「Interesting Creative Teaching」は「ICTで変える地方鉄道の未来」と題して、彼らにとって身近な交通手段である鉄道の時刻表を例に挙げ、地方交通インフラの脆弱性を指摘。「車の運転ができなくなる」と“陸の孤島化”が進む地方都市の課題を解決するために、持続可能な交通インフラとして「デマンド型交通システム」と道路と線路の両方を走行できる「Dual Mode Vehicle」(DMV)の二つを組み合わせたサービスを提案した。地方の交通インフラという、日本全国に存在する課題に対して実現可能性の高い提案を行えたポイントが評価され、受賞となった。

優秀賞
神奈川県立平塚江南高等学校
チーム名:放送委員会STEAM班
優秀賞に選ばれた神奈川県立平塚江南高等学校のチーム「放送委員会STEAM班」は、登壇者の内1人の生徒が「入りたかった演劇部が廃部になっており、消去法で放送部に入った」という経験から、少子化や過疎、教員不足などが原因となり、部活選びに消去法が用いられていることに対する課題意識を持ち、教員不足を解消する手段としてメタバース空間「メタクラブ」を提案した。すでに利用されているデータベースを応用しつつ、指導者や地域の人々と連携しながら県単位で部活動に取り組むような仕組み作りを目指していくという。日本の現状を分析して上手く説明している点が評価され、受賞となった。


最先端の技術が集結する体験コーナー
STEAMや大学の学びをこの場で知る
日経STEAM 2025シンポジウムでは、大阪会場と東京会場共にDISによる「DIS特設体験コーナー」が出展された。3Dプリンターやドローン、生成AIなど、最新の機器やソリューションに触れながら、STEAMのさまざまなプログラムを体験できるコーナーだ。そのほか、昨年に引き続き大阪会場では大学体験コーナーや相談コーナー、探究ポスター発表、デジタルアート展示・発表会なども開催され、終日多様な年齢層の来場者でにぎわった。

3. 東京会場とオンラインでつなげて謎解きを行い、その答えを画像生成AIで出力するゲームなどのコンテンツ。生成AIによる画像生成はPCスペックやネットワークなどの環境によって、同じプロンプトを打っても出力されるコンテンツに差異が生じるため、そうした生成AIの特性も含めた学びを提供した。
4. プログラミングによるドローン操作体験。
5. こちらも東京会場とつなげたプログラミング体験。手の動きで音を発するプログラミングによって、大阪会場と東京会場でセッションを行うというものだ。



