2025年9月10・11日、ダイワボウ情報システム(DIS)が主催するICT総合イベント「DISわぁるど」が、「山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング)」にて実施された。国内外の主要ITベンダーが最新技術を披露し、来場者との情報交換や商談が活発に行われた。多くの来場者でにぎわったセミナーの様子と注目の展示を、ダイジェストで振り返っていく。
Day2:Special Session
やまがたAI部の挑戦
~高校生が考えるAIイノベーション~
地域と教育をつなぐAI部のビジョン
「やまがたAI部の挑戦~高校生が考えるAIイノベーション~」と題した特別セッションでは、企業と教育という二つの視点から、AI人材育成の現在地と可能性が語られた。登壇したのは、やまがたAI部 運営コンソーシアム会長 松本晋一氏、山形県立産業技術短期大学校 校長 佐藤俊一氏。そして特別ゲストとして、山形県立酒田光陵高等学校 教諭 湯澤 一氏と生徒の池田琉慧さんが参加した。
松本氏はやまがたAI部の成り立ちについて、「高校生がAIを学び、地域課題に挑む教育プログラムを作りたいと佐藤先生に相談したことから始まりました。快く賛同いただき、県内の校長先生方とも連携して、やまがたAI部が誕生しました」と振り返る。
やまがたAI部は、デジタル人材の育成によって地域経済に貢献することを目指している。松本氏は「日本は世界に比べるとデジタル競争力が低い状況です。都市部だけではなく、地域から人材を育てることが不可欠です」と語った。

探究と実践が融合する教育モデル
なぜ部活動としてAIを学ぶのか。佐藤氏は「AIを実践的に深く学ぶ場が授業内には十分にありません。だからこそ部活動という形で学ぶ仕組みを作りました」と語る。
やまがたAI部は、産学官連携によって支えられている。山形県内を中心とする企業や自治体、教育機関の協力の下、高校生に学習機会を提供。指導には実務経験豊富なデータサイエンティストやAIエンジニアなどが関わり、現場に近い視点から支援を行っている。
やまがたAI部では、入部後からオンライン講座と探究活動を通じて学びを深めていく。 毎年3月には学びの成果を披露する「AI甲子園 in やまがた」が開催される。生徒たちはAI甲子園 in やまがたに向けて準備を進めていくのだ。「卵の茹で時間と温度をセンサーで記録し、黄身の状態をAIで予測するなどさまざまな実習を行っています。高校生たちがデータの扱いやモデルの精度について議論しながら取り組んでいます」(佐藤氏)

運営コンソーシアム会長/オーツー・パートナーズ
代表取締役社長
松本晋一 氏

佐藤俊一 氏

情報科 教諭
湯澤 一 氏

情報科
池田琉慧 さん
高校生が語るAI学習のリアル
やまがたAI部での活動について池田さんは次のように話す。「始めはeラーニングシステムの『Moodle』を利用して、AIのファインチューニング方法などの基礎を学びました。夏以降は、AI甲子園 in やまがたに向けて探究テーマを決め、アプリケーションの制作に取り組みました。私たちが開発したのは、先生の業務負担を軽減する『光陵WEBアプリケーションFAQAI ひかりくん』です。生徒が学校のルールを把握していないケースが多く、授業以外の質問も先生に聞いているため、負担になっているのではないかと考えました。そこで、生徒自身で疑問を解決できるよう、AIが先生に代わって質問に回答する仕組みを作りました」
このような生徒の主体的な探究活動について、湯澤氏は「生徒が自ら課題を見つけ、解決に向けて取り組む姿勢が育っています。やまがたAI部は教育の可能性を広げる場です」と語った。
やまがたAI部の活動は、地域や多様な課題に向き合い、AIを通じて社会と関わる力を育んでいる。生徒が自ら課題を見つけ、技術を活用して社会に働きかける経験は、地域の未来を担う力の礎となるだろう。






