GIGA第2期学習者用端末はChromeOSシェアが6割に都道府県単位のOS統一が進む

2020年にGIGAスクール構想第1期(以下、GIGA第1期)で導入した学習者用端末。全国の小中学校の児童生徒、1人につき1台整備されたこれらの端末が、2025年度に更新のピークを迎える見込みだ。このGIGAスクール構想第2期(以下、GIGA2期)に向けたICT整備の動向調査を、MM総研が継続的に実施している。その最新調査結果が2025年7月31日に発表された。本調査結果から、GIGA第2期に訪れる教育現場の変化を見ていこう。

学習者用端末はChromeOSにシフト

 MM総研は、2025年7月31日に「小中GIGAスクール第2期におけるICT整備動向調査」(2025年7月時点)を発表した。本調査では2025年6〜7月にかけて、全国にある1,741全ての市区町村へ電話調査を実施し、1,249の市区町村から回答を得た。

 今回の調査結果で特にフォーカスされたのが、OSシェアの変化だ。GIGA第1期のOSシェアはGoogleのChromeOSが42%、マイクロソフトのWindowsが29%、AppleのiPadOSが29%という割合だった。しかし今回MM総研が調査した対象(端末のOSおよび台数に回答した1,174団体の621万台)をベースに分析すると、ChromeOSが60%、Windowsが10%、iPadOSが31%というシェアの変化が見られた。GIGA第1期と比べると特にChromeOSが18ポイント増とシェアを伸ばし、過半数を超えている。GIGA第1期の調査は2021〜2023年に実施した複数の調査を統合分析していることなどから、厳密に同じ調査ではないものの、おおよその傾向は一致するだろうとMM総研 研究課長 高橋樹生氏は述べた。

「GIGA第2期のChromeOSは、中小規模の自治体から、政令市や中核市など大規模自治体まで幅広く採用されています。次いでiPadOSはGIGA第1期と比べて2ポイント増とほぼ横ばいの微増傾向です。iPadOSはこれまでiPadを採用していた自治体が、GIGA第2期も継続してそのOSを選んでいるという印象です。一方、WindowsはGIGA第1期と比べて19ポイント減少とシェアを大きく落としています」と高橋氏。

 数字だけ見れば、GIGA第1期でWindowsを使っていた自治体が、GIGA第2期はChromeOSに切り替えるケースが多いようだ。その背景を、高橋氏は二つ挙げた。

 一つ目はGIGA第1期で導入したWindows端末に対して「OSアップデートなど、運用しにくい」「動作が遅い」という不満が生じていたことだ。この不満を払拭しきれず、ChromeOSへ移行した可能性がある。二つ目は、共同調達の影響だ。GIGA第2期はGIGA第1期と異なり、都道府県ごとの共通仕様書を基にした共同調達を原則としている。条件に当てはまる市区町村は、この共同調達からオプトアウトしてもよいことになっているが「意外とオプトアウトしない市区町村が多く、都道府県ごとのOSカラーがかなり定まってきました」と高橋氏は指摘する。

GIGAスクール第1期と比較して、GoogleのChromeOSシェアは18ポイント伸張し60%と過半数を超える結果となった。

OS統一で教員の負担軽減へ

 では学習者用端末のOSを切り替える自治体は全体のどれくらいの割合なのだろうか。MM総研の調査によれば、第1期から継続して同じOSを利用する自治体は67%、OSを切り替える自治体は28%だったという。GIGA第1期の採用OS別で見ると、ChromeOSは9割以上、iPadOSは約8割の自治体が継続利用すると回答した。一方で、複数OSを採用していたり、Windowsを採用したりしていた自治体では、6割以上の自治体がOSを切り替えると回答した。高橋氏は「OSを切り替える自治体に、GIGA第2期におけるOSの選定理由を尋ねたところ、『周辺自治体が多く利用している』が38%と最も多く、『運用しやすい』が33%、『現場の教員からの意見・アンケート結果で選ばれた』が23%という結果でした。OSの切り替えに当たっては、整備運用側の意見だけでなく、現場の意見や周辺自治体の状況などが反映されているといえるでしょう」と語る。

 OSを切り替える自治体への影響はあるのだろうか。高橋氏は「多くの場合はWindowsからChromeOSへの切り替えになりますが、一時的には操作に慣れておらず負担が生じるかもしれません。しかし、長期的に見ると都道府県単位でOSが統一されたことで、先生方の負担は減るだろうと予想しています」と指摘する。

 公立の小中学校教員は都道府県の職員として採用されるため、市町村を跨いで異動することも少なくない。その場合、A市で使っていたOSと、B市で使っていたOSが異なると、異動のたびに新しいOSの操作を覚え直す負担が発生する可能性もある。しかし、都道府県単位で採用しているOSが統一されていれば、異動した場合でも操作を覚え直す必要がなくなる。

 高橋氏は「先生方は自分たちが授業で使った教材や資料などを、学校の枠を越えて共有するケースも多いです。例えばある県では、県単位で先生方がコミュニケーションを取れるチャットルームを使っており、その中で『この資料は授業で反応が良かった』といったような情報交換を行っていました。しかし市区町村ごとにOSが異なる場合、特定のOSで作った資料は別のOSで開くとレイアウトが崩れてしまうという互換性の問題が発生するリスクもあります。そのため都道府県単位でOSを統一していくことは、先生方にとってもメリットが大きいでしょう」と指摘する。

 MM総研は、2024年8月にも「GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査(2024年8月時点)」を実施している。その際にGIGA第2期で共同調達を行う上での一番の課題として挙げられたのが「端末価格の高騰」だった。今回、GIGA第2期で導入する端末単価を調査したところ、全体平均で5.5万円となったという。この5.5万円は政府の端末購入補助基準額と同額であることから、その金額に見合う端末を選定しているようだ。

「GIGA第2期で整備する学習者用端末では、タッチペンの整備を必須としています。そのため調達する学習者用端末を選定する際も、タッチペンが学習端末本体に収納できるのかといったポイントに着目して調達する自治体が多かった印象です。そのほか、本体重量や堅牢性など、GIGA第1期と比較して端末調達時に見るポイントが細かくなった印象です」と高橋氏は語る。

複数OS採用やWindowsの自治体では6割以上がOSを切り替える方針。周辺自治体が利用していたり、運用しやすかったりといった理由からChromeOSを選択するケースが多い。

広がる端末活用で生まれる需要

 それでは、これらの端末調達時期はいつ頃になるのだろうか。今回の調査で調達台数と時期の双方に回答した1,227市区町村の661万台を対象に、MM総研が分析を行ったところ、2025年度は調達台数の72%(661万台のうち475万台)、2026年度は22%(同144万台)と、2025年度に更新が集中する見込みだ。「2026年度以降も200万台から300万台弱ほどの端末の調達が予想されていますので、この更新需要を的確に捉えることが、販売店の皆さまにとって重要な戦略となるでしょう」と高橋氏は指摘する。

 2025年度は英語や数学のデジタル教科書が本格的に使われ始めており、2026年度以降はこれらの活用がさらに本格化することが見込まれている。2027年度からは全国学力・学習状況調査がCBTに全面移行する方針が示されているが、このCBTにも学習者用端末が活用される予定だ。GIGA第2期ではGIGA第1期よりもさらに学習端末の活用が加速化していくだろう。

 高橋氏は「端末活用が広がることで、来年以降はネットワークの問題が改めて噴出したり、端末をより高度に使いたいニーズが出てきたりと、さまざまな需要が生まれてくるでしょう。2027年ごろにはネットワーク機器の更新も始まると予想していますので、地域の販売店の皆さまには引き続き、教育現場でのICT活用の動向を見守りつつ、地域の子供たちを支えるという目線から、これからも支援を続けてほしいと思います」と語った。

各市区町村のGIGA第2期端末の調達時期は2025年度に集中する見込み。2027年度以降も少ないながらも調達がある予測だ。

出所:全てMM総研