MM総研がガバメントクラウドへの国民の意識を調査

MM総研は2025年3月に、政府・自治体専用のクラウド環境「ガバメントクラウド(政府クラウド)」についての国民の意識調査を行った。本調査結果から見えてくる国民のガバメントクラウドの認知度とセキュリティ意識についてを解説していく。

MM総研がガバメントクラウドへの国民の意識を調査
8割が国産クラウドも使うべきと回答

ICT市場調査会社のMM総研は2025年3月にデジタル庁などが推進する政府・自治体専用のクラウド環境「ガバメントクラウド(政府クラウド)」について国民の意識調査を実施した。その調査結果からガバメントクラウドの認知度が低いことや個人データのセキュリティ意識の高さが明らかになり、国産事業者への期待が高いことが分かった。

クラウド選びにおいて
データ主権への関心が高い

 この調査は一般消費者を対象にWebアンケートで実施され、2万1,089人から回答を得たもの。政府は2025年度末を目標に自治体の基幹業務システムの標準化とクラウド移行を進めており、多くの自治体が将来のIT基盤としてガバメントクラウドを選択し、利用する見込みだ。

 政府および自治体がガバメントクラウドへの移行を進めている中で、国民の認知度は25%にとどまり、そのうち「内容を理解し説明できる」と答えたのはわずか8%に過ぎなかった。一方で81%の国民が「国産クラウドを利用すべき」と回答しており、データ主権や安心・安全への関心の高さが浮き彫りとなった。

 この調査結果を担当したMM総研の取締役 研究部長 中村成希氏は「調査対象のうち75%がガバメントクラウドを知らないにもかかわらず、知らない人も含めて約8割が国産を使うべきだと言っているのは、ある意味すごいことですよね」と指摘する。

 この結果は国民の"感覚的な安心"が技術的理解を上回っている現状を示しているといえるだろう。特に「データ主権」への関心は高く、88%が「主権を守れるクラウドを選ぶべき」と回答している。

 また調査では「国産クラウドを使うべき」とする理由として、「日本の法律・規制に合わせやすい」「データが海外に流出しない」「セキュリティ面で安心できる」といった回答が上位を占めた。これは国際情勢の不安定化や個人情報保護への意識の高まりが背景にあると考えられる。

 一方で「海外クラウドを使うべき」とする意見も19%存在する。その理由には「国産事業者の信頼性が低い」「料金が安い」「技術が進んでいる」といった声が挙がった。クラウド選定においてはコストや技術力も重要な要素であるという意見もあることが分かる。

MM総研
取締役 研究部長
中村成希
MM総研
研究課長
高橋樹生

日本もソブリンクラウドに注目
しかし国産クラウドを選びにくい

 この調査の結果を受けて中村氏は欧州で浸透する「ソブリンクラウド」の概念が日本でも注目され始めていることを指摘する。

 中村氏は「ソブリンクラウドはヨーロッパではもう当たり前になっています。日本でも大手データセンター事業者が提供していますが、選択肢はまだまだ少ないのが実情です」と日本の現状を語った。

 ソブリンクラウドとはデータの保管・処理・運用が自国の法律と主権の下で行われるクラウド環境を指す。欧州ではGDPR(EU一般データ保護規則)への対応のために導入が進んでおり、日本でも「データ主権」を守るための仕組みとして注目されている。

 しかしガバメントクラウドに認定されているクラウドベンダーは現状、海外4社と国内1社(条件付き認定)に限られており、実質的に国産クラウドを選びにくい構造となっている。

 中村氏は「国内大手SIerもソブリンクラウドを打ち出していますが、実態としては外資系クラウドのサービスをOEMに近い形態で提供しています。また自治体向けのパッケージベンダーも海外のクラウドベンダーと提携して製品提供を進めています。こうした状況から自治体側も国産のガバメントクラウドを選択しにくいのが実情です」と説明する。

政府はクラウドプラグラムを
「特定重要物資」と定めている

 利便性やデリバリーなどの観点から全ての用途を国産クラウドでまかなうのは現実的ではない。一方で政府がクラウドプログラムを経済安全保障推進法に基づいて「特定重要物資」に指定していることからも、国産クラウドを推奨するべき用途などを整理することが必要だろう。

 MM総研の研究課長 高橋樹生氏もこの調査を担当した。高橋氏は「自治体がクラウドを選ぶ際、価格や機能だけでなくデータの行き先や主権の問題も考慮すべきだと思います。しかし現場ではそこまでの議論がされていないのが実情です」と指摘する。

 調査ではクラウドに保存される情報の中でも「住民基本台帳」「税情報」「保険・福祉情報」などは国産クラウドに保存すべきとの意見が多かった。こうした結果からも国民の安心感と技術的な裏付けの両立が求められていることは明らかだ。

 中村氏は「AI時代に向けてクラウドの利便性と主権の確保を両立させるためには、国産クラウドの選択肢を増やし、国民への説明責任を果たすことが不可欠です」と訴える。政府や自治体には今後の制度設計と情報発信の強化が求められる。