今月のテーマは……
次世代の知的生産革命
驚異的な進化を遂げた「 NotebookLM 」

2024年11月号の本連載にて、「 Google Workspace 」に統合された強力なAIツール「 NotebookLM 」が、いかにして私たちの仕事に革新をもたらすのかについて紹介しました。あれから1年もたたないうちに、NotebookLM は私たちの想像をはるかに超えるスピードで進化を続け、単なる情報整理ツールから、創造性を刺激し、知的生産を加速させる真のパートナーへと変貌を遂げています。今号は、 NotebookLM に新たに追加された機能について、詳しく解説していきます。

マルチモーダルAIの真価を発揮

 今回の記事では、過去にNotebookLMを取り上げた内容との重複を避けながら、この数カ月で追加された画期的な新機能に焦点を当てます。特に「音声・動画概要」「Studio」「多言語対応の強化」に注目し、NotebookLMが切り拓く新しいワークスタイルの最前線を紹介します。

 2024年11月号の記事では、NotebookLM が音声データを取り込み、文字起こしできる点に触れました。しかし、その機能は今や序章に過ぎませんでした。最新のアップデートでは、「 Gemini 」の強力なマルチモーダル能力を最大限に生かし、音声や動画の「概要」を自動生成する機能が搭載されたのです。それぞれの特長について見ていきましょう。

■音声概要(Audio Overview)
 長時間の会議、インタビュー、講演などの音声ファイルをアップロードするだけで、NotebookLM は全文の文字起こしと共に、その内容を簡潔にまとめたサマリーや、主要なトピックを箇条書きにしたインデックスを自動で生成します。これにより、「1時間の会議の要点を5分で把握する」「インタビューの中から特定の話題が出た箇所を瞬時に探し出す」といったことが可能になります。もはや、議事録作成のために録音を聞き返す膨大な手間は必要ありません。情報は即座に活用可能なテキスト資産へと変わるのです。

■動画概要(Video Overview)
 研修動画、製品デモ、Webセミナーなどのビデオをソースとして追加すると、NotebookLM は映像と音声を解析し、タイムスタンプ付きの詳細な概要を作成します。これにより、動画コンテンツ全体を見返すことなく、特定のセクションで何が語られているかをテキストで素早く確認し、必要な情報へ直接ジャンプできます。これは、情報収集や学習の効率を劇的に向上させるまさに革命的な機能と言えるでしょう。

能動的なコンテンツ生成パートナー

動画概要画面の一例。複数のデータソースを基に解説動画の作成が簡単に行える。

 これまでの NotebookLM は、与えられた情報源(ソース)に基づいて質問に答えたり、要約を作成したりする「受動的」な役割が中心でした。しかし、新たに追加された「Studio」機能は、NotebookLM を能動的なコンテンツ生成パートナーへと昇華させました。
 Studioは、アップロードした資料群から、以下のような多様な形式のドキュメントを自動で生成する機能です。

・よくある質問:製品マニュアルや社内規定集を読み込ませ、「よくある質問とその回答」を自動生成。
・概要説明資料:複数のレポートや議事録から、特定のテーマに関する報告資料のドラフトを作成。
・学習ガイド:専門的な論文や教科書を基に、重要用語の解説や章ごとの要約を含む学習資料を構築。
・タイムライン:複数のデータソースとして取り込んだ文献に記載された内容を時系列に整理して、ユーザーの理解向上を支援。

 例えば、過去のプロジェクト報告書や顧客からのフィードバックを複数アップロードし、「次の製品企画会議に向けたブリーフィング資料を作成して」と指示するだけで、NotebookLM は課題、成功要因、今後の提案などを構造化したドキュメントの初稿を瞬時に作り上げます。人間はゼロから構成を考える必要がなくなり、AIが生成したドラフトを基に、より創造的で本質的な作業に集中できるのです。これは、知的労働の在り方を根底から変える大きな一歩です。

「音声解説」「動画解説」「マインドマップ」「レポート」など、さまざまな情報を理解するための支援ツールがワンクリックで起動できる。
50以上の言語を自由に選べる。取り込んだデータソースの言語を問わず、ユーザーに合った出力言語に対応する。

言語の壁を越えるグローバル・ブレイン

 2024年11月号の記事でも「翻訳」機能に触れましたが、多言語対応も大幅に強化されています。現在、NotebookLM のインターフェースと機能は50以上の言語で利用可能となり、まさにグローバルな共同作業を支える頭脳となりました。

 海外の最新論文、多言語にわたる市場調査レポート、各国の法規制に関するドキュメントなど、これまで言語の壁によって参照が難しかった情報も、瞬時に母国語で要約・分析できます。異なる言語で書かれた複数の資料を同時に読み込ませ、「これらの資料から、アジア市場における共通の課題を抽出して」といった、言語を横断した高度な分析も可能です。

 2024年11月号で紹介した当時、NotebookLM は優秀なリサーチャーやアシスタントという位置付けでした。しかし、音声・ビデオ概要、Studio機能、そして高度な多言語対応という革新的なアップデートを遂げた今、その役割は大きく変わりました。NotebookLM は、もはや単なる「時短ツール」ではありません。私たちの知識を整理し、新たな洞察を与え、創造的なアウトプットを助ける「知性の拡張ツール」です。

 さあ、あなたも進化した NotebookLM で、自身の知性と創造性が拡張される未来の働き方を体験してみてください。


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