【特集】My first Microsoft

生成AIの登場によって、PCと会話をするという新しい使い方が生まれた。
その結果、PCやAIというテクノロジーは単なるツールではなく、ユーザーを助けてくれる“相棒”という存在へと変わってきている。
しかしテクノロジーはずっと前から身近にいたはずだ。
日本マイクロソフトが新たに立ち上げたプロジェクト「My first Microsoft」は、各界で活躍する人たちのテクノロジーとの出会いにフォーカスし、テクノロジーの人生への関わりを見つめ直す試みだ。
このユニークな企画を立ち上げた日本マイクロソフトの宮崎翔太さんに話を伺った。

テクノロジーとの関わりをたどる
主役はテクノロジーではなく「人」

教えてくれる人
日本マイクロソフト
業務執行役員
パブリックセンター事業本部
教育・社会基盤統括本部長
宮崎翔太

MOEKO●今回の「My first Microsoft」は、これまでのマイクロソフトのコンテンツとは少し違う印象があります。まずは、このプロジェクトを立ち上げた背景から教えてください。

宮崎さん●当社は昨年、おかげさまで創立50周年を迎え、また、Windowsは発売から40周年を迎えました。長い歴史の中で多くの方にご愛顧いただいてきたサービスを提供する会社ということもあり、「それぞれの方にとって最初のマイクロソフト体験って何だったんだろう?」という問いを起点にしたコンテンツです。どんな方でも人生のどこかで、初めてPCに触れた瞬間や、WindowsやOfficeを使い始めた瞬間があると思いますし、楽しい思い出も苦い思い出も含めて、ぜひお話を伺ってみたいと考えて企画を立ち上げました。

MOEKO●確かに「最初」があるからこそ、今があるという感じがします。

宮崎さん●そうなんです。このプロジェクトではマイクロソフトの製品やテクノロジーを語るのではなく、その方の人生やキャリア、価値観の原点をたどっていきます。そこで見えてくるのは「テクノロジーがどう人生に伴走してきたか」という物語です。また我々教育部門としては、GIGAスクール構想で初めてPCを手にする子供たちや学校現場に接する機会が多いですが、この企画で登場していただく方々の「My first Microsoft」は将来、社会で活躍する子供たちにとっての学びのヒントがたくさん含まれると感じています。

MOEKO●インタビューの進め方にも特徴があるそうですね。

宮崎さん●ええ。必ず最初に聞くのが「あなたにとって、最初のマイクロソフトは何でしたか?」という質問です。そこから、今の仕事に至るまでのキャリアや失敗、挫折、転機を掘り下げていきます。

MOEKO●あえて製品やサービスの話はしないということですか。

宮崎さん●はい。あくまで主役は「人」です。すでに行ったインタビューでは「PCは相棒だった」「同志だった」と表現する方もいらっしゃいました。テクノロジーは、その人の生き方を映す鏡のような存在だと思っています。

MOEKO●コンテンツに登場される方は、どのように人選するのですか。

宮崎さん●我々マイクロソフトはありがたいことにほぼ全ての業界でご利用いただいているサービスを提供していることから、各界で活躍するビジネスリーダーを中心にお声をかけさせていただいています。子供たちや学生が将来なりたい職業、働いてみたい会社などの方にも多数登場いただきます。年齢に関しても制限はなく、それぞれの世代でそれぞれのMy firstがあると考えています。

MOEKO●テクノロジーとの出会いも、さまざまですね。

宮崎さん●テクノロジーとの出会いが自作PCという方もいれば、仕事で初めてExcelを使ったという方もいらっしゃいます。共通しているのは、それまでできなかったことができるようになった瞬間の「ワクワク感」なんです。テクノロジーとの出会いに、このワクワク感を感じるかどうかで、その後のテクノロジーとの付き合い方が変わってくると思います。

探究する姿勢こそが
AI時代に求められる

MOEKO●宮崎さんご自身の「My first Microsoft」も、ぜひ聞かせてください。

宮崎さん●私はクウェートで生まれて、小学生の頃からアメリカンスクールに通っていました。そこで初めて、プログラミングに近い体験をしました。画面に線を引いたり、簡単な図形を描いたりする、本当に初歩的なものでしたが、とても楽しかったですね。

 またオレゴン・トレイルという、米国の西部開拓時代を題材にしたゲームも学校で体験し、大好きでした。ゲームを通じて開拓時代の歴史について興味を持つきっかけにもなりました。

MOEKO●自分のPCを持ったのはいつでしたか。

宮崎さん●中学生の時です。書店で買った参考書を頼りに自分のPCでバスケットボールに関するホームページを作って公開していました。今振り返ると全然うまくできていませんでしたが、どうやったらうまくできるのかを調べて、知り得た方法を試行錯誤してどうにか思い通りの画面が作れるようになると、うれしくてついつい時間を忘れて熱中したものです。

 今はワンクリックで答えが手に入る時代です。例えばどこかに行くときに地図アプリを使い、気付いたら目的地に着いていたという経験は誰しもあると思います。そこをあえて地図を見ずに自力で目的地に向かってみると、方向感覚を養う力になります。それと同じように、答えを「自分で探して、考えて、やってみる」という“遠回り”な学び方はAI時代にこそ重要だと思います。

 AIはとても便利ですが、万能ではありません。「なぜ、そうなるのか?」と考える姿勢がないと、テクノロジーは危うい存在にもなり得えます。答えをうのみにせず、探究する姿勢が大切なんです。

「最初」を振り返ることは
未来を考えること

教えてもらう人
MOEKOさん
ダイワボウ情報システム(DIS)に勤める入社2年目の営業職。

MOEKO●テクノロジーを「相棒」や「同志」と表現する方がいらっしゃると伺いましたが、これからのAI時代ではテクノロジーとどのように付き合うべきだと考えていますか。

宮崎さん●AIをはじめテクノロジーは完璧な存在ではなく、不完全だけれど一緒に成長していく存在です。テクノロジーを使ってうまくいかないときに、「なぜうまくいかないのだろう?」と考えることで、ユーザーもテクノロジーも共に進化します。

 また我々マイクロソフトとしては、子どもたちだけではなく我々大人も含めて、既存のコンテンツをただ消費するだけではなく、コンテンツやテクノロジーを作る側、0から1を生み出す創発人材になってもらいたいという思いがあります。

 ですからテクノロジーの利用に欠かせないPCやAIをただ道具として扱うのではなく、「相棒」や「同志」、「副操縦士」という感覚で扱うことで、テクノロジーとの「切磋琢磨」な関係を築くことができ、より価値の高い時間や成果をテクノロジーがユーザーにもたらしてくれるようになります。

MOEKO●今後、このプロジェクトはどのように展開していく予定ですか。

宮崎さん●まずは5名から7名のインタビューを継続的に公開していきます。将来的には教育の現場で教材として使っていただいたり、イベントでリアルな対談を実施したりするといった展開を期待しています。

 さらに海外にも広げたいですね。「My first Microsoft」という視点は、国や文化を超えて共感を生むと思っています。

 誰にでも「最初」はあります。その原点を振り返ることは、テクノロジーの未来を考えることであり、自分自身のこれからを見つめ直すことでもあります。この企画が、将来を見据える子供たちや学生にとってのヒントになり、世代や業種を超えた対話のきっかけになればうれしいですし、いつか今の子供たちが大人になったときに「My first Microsoft」を聞けることを心から楽しみにしています。