企業のPC調達は今、大きな転換点に差しかかっている。Windows 10サポート終了に伴う端末更新に加え、生成AIの業務活用が普及したことで、法人ユーザーの関心は“次に選ぶべきPC”へ向かい始めている。そうした中で存在感を高めているのが、NPUを備えたAI PCだ。今回は日本マイクロソフト デバイスパートナーセールス事業本部 マーケティング戦略本部 Commercial Windows 戦略部長 仲西和彦氏に、Copilot+ PCをはじめとしたAI PCが法人向けPCビジネスにどのような変化をもたらすのか、話を伺った。

パフォーマンスの高さと
堅牢なセキュリティの両立

日本マイクロソフト
デバイスパートナーセールス事業本部
マーケティング戦略本部
Commercial Windows戦略部長
仲西和彦

 AI PCというキーワードが多くの場所で聞かれるようになってきた。しかし、そもそもAI PCとはどのようなデバイスだろうか。AI PCとは一般に、CPUやGPUに加え、AI処理専用の「NPU」を搭載したPCを指す。さらにマイクロソフトは、NPUが40TOPS以上の処理性能を備えることなどを要件とした次世代AI対応PCを「Copilot+ PC」と定義している。日本マイクロソフトの仲西氏は「このクラスの製品は、AI活用における処理性能に優れているだけでなく、従来のWindows PCとしての利用においても高いパフォーマンスを発揮し、日常業務においても快適な利用体験を提供します」と語る。

 Copilot+ PCはセキュリティ性能の高さも魅力的だ。全てのCopilot+ PCはCPU内蔵型のセキュリティプロセッサー「Microsoft Pluton」をはじめとするチップレベルのセキュリティ機能を備えている。Microsoft Plutonは認証情報や暗号化キーのような機密資産を保護する。攻撃者がマルウェアをインストールしたり、PCを物理的に持ち去ったりした場合でも、認証基盤の改ざんや情報の消去、侵入痕跡の隠蔽は極めて困難だ。法人企業をターゲットとしたサイバー攻撃が激化している昨今、こうしたエンドポイントのセキュリティ対策は欠かせないポイントだ。

消費電力を抑えたPC稼働が
ユーザーの生産性を向上する

 Copilot+ PCをはじめとしたAI PCを活用するメリットでまず思い浮かぶのが、生成AI活用だろう。しかしNPUの価値はそれだけに発揮されるものではない。

 仲西氏は「Copilot+ PCを使い始めると、多くの人が『Web会議を実施した際にバッテリーの持ちが良い』ことを体感すると思います。実は、当社のTeamsをはじめとしたWeb会議ツールで使われるアプリケーションは、音声のノイズ処理や、カメラの背景処理などでさまざまなAI処理が実行されています。従来はこれらの処理をCPUやGPUが担っていましたが、Copilot+ PCではNPUが行います。NPUには従来のチップよりもはるかに低い電力消費でAI処理を実行できるという特性があり、Web会議を行う際もバッテリーを長持ちさせることが可能です。長時間の会議や移動中でも、安心して使い続けることができるでしょう。またPC上の消費電力を抑えられることで、ユーザーの生産性向上に加えて、IT部門の運用効率化や、企業全体でのエネルギー効率の最適化にも寄与できます」と語る。

 Web会議と並行して資料を開いたり、メールを確認しながらチャットツールで返信したりと、昨今のビジネスシーンでは常にPC上で複数のアプリケーションを実行するマルチタスクを行っている。数年前のPCを使用し続けていると、これらのマルチタスク作業でPCの動作が重くなったり、端末が発熱したりといった問題も発生するだろう。

 仲西氏は「Copilot+ PCはこれまでのWindows PCの中でも最も高速で、最もインテリジェントなPCであり、5年前のPCと比べて約5倍のパフォーマンスを発揮します。複数アプリの同時利用においても快適なパフォーマンスを実感できるでしょう。また、今後の利用体験も注目ポイントです。生成AIの登場により、その活用領域が広がる中で、PC上でAI処理を行う『ローカルAI』の活用シーンも拡大します。それに伴い、NPUの処理能力がユーザー体験に直結する場面も増加していきます。40TOPS以上のNPUを搭載したCopilot+ PCは、ローカルAIを活用する将来の利用シーンを見据えた選択肢としても、大きな価値があります」と指摘する。

ローカルAI×クラウドAIの
組み合わせが効率化を生む

 もちろん、クラウドAIである「Microsoft 365 Copilot」を活用するデバイスとしてもCopilot+ PCは最適だ。ローカルAIと組み合わせることで、日常業務の効率を大きく高めることが可能になる。例えば、OutlookやWordでCopilotを活用し、文章作成や要約をするといった日常業務はもちろんのこと、Copilot+ PCならではのAI機能「Click to Do」(クリックして実行)を活用することで、画面上に表示された数表をそのままExcelに取り込むことも可能だ。取り込んだデータは加工や分析、グラフ作成までスムーズに行える。Copilot+ PCのデバイス側の機能と、Microsoft 365のサービスを組み合わせ、従来よりも効率的でシームレスな業務を実現できる。

 アプリケーションベンダーからも、さまざまなAIアプリケーションがリリースされはじめている。仲西氏は「各アプリケーションベンダーから提供されているアプリを見ると、国内では会話の聞き取りデータから文章の作成、要約、翻訳といった分野でのAI活用が進んでいる印象です。Copilot+ PCはPC上のデータをNPUで処理することで、日常生活の中でAIをより身近に活用できる環境を提供しています」と語る。例えば機密性の高い情報を扱う業務や、社内データを活用した文書作成や分析などでは、Copilot+ PCの活用が有効と言える。今後、こうしたAIアプリケーションが増えることで、業務の幅はさらに広がっていきそうだ。

 仲西氏は「AI PC市場は今、大きな転換点を迎えています。AIが“目新しいもの”から“日常的に活用される存在”に変わりつつあるためです」と指摘する。こういった環境で重要となるのは、より多くのWindowsユーザーが日常的にAIを使った新しいPC体験ができる環境といえる。

「PCの選択においては、一度の購入がその後の利用体験や業務効率に大きく影響します。販売パートナーの皆さまがビジネスPCを提案される場合、将来の利用方法やアプリケーションの進化を見据えながら、Copilot+ PCを含むAI PCの価値を踏まえた提案を行っていただくことが重要です。生成AIの活用が広がる中で、企業活動にはよりスピードと柔軟性が求められるようになっています。その中で、AIの活用に限らず、日常業務も含めて快適に利用できる高いパフォーマンスのPC環境を整えることが、結果として生産性の向上や業務効率の最適化につながっていくでしょう」と仲西氏は販売パートナーへのメッセージを贈った。