クラウドサービスの普及やハイブリッドワークの常態化により、企業のIT環境はかつてないほど複雑化している。日々の業務の中で「PCの動作が重い」といった言語化しにくいストレスを感じつつも、問題を抱えたまま業務を続け、生産性を落としている従業員は少なくない。こうした従業員の目に見えないストレスを解消し、DEX(デジタル従業員体験)を高める切り札となるのが、HPの「HP Workforce Experience Platform」だ。

従業員の潜在的な課題を
データの可視化で解消

日本HP
ワークフォースソリューション事業本部
事業本部長
中 宏樹

 クラウドサービスや多様なデバイスの利用が進んだ結果、IT環境の分散化が引き起こす従業員の生産性の低下が深刻な問題となっている。HPが行ったグローバル調査によると、従業員の多くが「自分たちの職場環境(デバイス、テクノロジーなど)に満足していない」という結果が出ている。

 この不満の背景にあるのが、明確な故障とはいえない「PCの動作が何となく重い」「アプリケーションの立ち上がりが遅い」といった、言語化しにくい日々のストレスだ。多くの従業員は、業務に影響を感じつつも「この程度の問題でIT部門に連絡していいのだろうか」とちゅうちょし、PCを再起動するだけで、問題を解決することなく業務を続けがちである。IT管理者はこうした現場のサイレントな課題を把握できず、結果として組織全体の生産性が低下してしまう。

 こうしたIT管理者と従業員の間に生じる「認識のギャップ」と、目に見えない課題を解消すべく、HPが提供するのが、「HP Workforce Experience Platform」(以下、WXP)である。日本HP ワークフォースソリューション事業本部 事業本部長 中 宏樹氏は「WXPは、こうした従業員が抱えるテクノロジーやデジタルツールに関する潜在的な課題をデータの可視化によって解決し、DEXを向上させるために開発されました」と説明する。

 WXPは、AIをベースにしたモジュール式のクラウドベースのSaaSだ。デバイスのパフォーマンスやアプリケーションの稼働状況、ネットワークの接続状況などの多角的なデータを数値化してリアルタイムで確認できる。

 WXPにおける特長的な機能の一つが「エクスペリエンススコア」だ。PCのハードウェアやOSのパフォーマンス、アプリケーションの動作状況、ネットワーク品質、ヘルプデスクへの問い合わせ履歴、従業員のフィードバックなどを統合し、IT環境に対する従業員の体験を0〜100(100点満点)のスコアとして可視化する。これにより、これまで把握が難しかった潜在的な問題を早期に検知し、プロアクティブな対応が可能となる。IT環境の改善を通じて、従業員のDEX向上と生産性向上にも寄与する。

スマートな資産管理が可能
IT管理者の運用負担を軽減

 WXPの導入メリットは、単なる現状の可視化にとどまらない。企業のIT投資を最適化し、ハードウェアの総所有コスト(TCO)の削減と投資利益率(ROI)の最大化を実現する点も大きなメリットである。それを具現化するのが、AIを活用した「スマートリフレッシュ」機能だ。

 従来の企業におけるPC管理では、4〜5年といった一定の期間ごとに全社一斉の入れ替えを行うケースが一般的であった。しかし、この方法ではまだ十分に使えるPCまで一律で入れ替えられてしまうため、過剰な設備投資が発生しやすい。中氏は「AIがデバイスのパフォーマンス、実際の使用状況、ライフサイクルなどを分析し、本当に交換が必要なタイミングでの段階的な入れ替え計画を提案します。これにより、一斉入れ替えによるコスト負担を分散させ、投資すべきところに適切に予算を集中させるスマートな資産管理が可能となります」と語る。

 さらに、AIによる「予測分析」と「異常検知」機能により、問題が顕在化して従業員の業務がストップする前に、自動的に修復アクションを実行する。その結果、ヘルプデスクへの問い合わせ件数自体も大幅に削減されるという。

 また、ITオペレーションの効率化においてもWXPは強みを発揮する。マルチデバイス対応の統合管理プラットフォームであるため、PC、プリンター、コラボレーションデバイス、仮想マシン、アプリケーションなど多様なデバイスとサービスを一元的に管理できる。「IT管理者向け機能として提供する『フリートエクスプローラー』も搭載しています。自然言語でデバイスに関する質問をすると、AIチャットボットが即座に回答してくれます。日本語にも対応しており、トラブルシューティングをはじめIT管理者の運用負担を軽減します」と中氏はアピールする。

WXPのホーム画面。従業員のエクスペリエンススコアなど、さまざまな情報を一目で確認できる。

投資判断を支える
データドリブン提案

 法人向けPCビジネスを活性化させる上で、顧客に対して「なぜ新しいPCへの入れ替えが必要なのか」を納得してもらうことは容易ではない。特に、昨今注目されるAI PCなどの高スペックなPCの導入に対しては、経営層から「そこまでのスペックが必要なのか」「投資対効果が見えない」という疑問の声が上がりやすい。こうしたハードルを乗り越えるためのツールとしても、WXPは有効だ。

 例えば、WXPによって各従業員のアプリケーション利用負荷やCPU・メモリーの使用率を解析し、既存のPCではスペック不足で生産性が落ちている層をデータドリブンで抽出する。これにより、「どの部門のどの業務に、どのようなスペックのPCを優先導入すべきか」という明確な根拠を、経営層に提示できるようになる。「さらに、AI PCの導入前後で、従業員ごとの実利用データに基づいた客観的な比較を行うことで、導入効果も含め、判断材料を提示できます。感覚ではなく事実に基づいて投資判断を行えるため、導入効果を経営層に説明しやすくなり、最適な導入計画の策定にもつながります」と中氏は説明する。

 WXPは用途に応じた三つのプランが提供されている。PCフリートの可視性と制御に不可欠なツールやサポートを利用できる「Standardプラン」(AI機能は含まれない)、Standardプランの機能に加えてAIによる異常検知、フリートエクスプローラー(限定的なクエリ)などを含んだ「Proプラン」、Proプランの機能に加えてフリートエクスプローラー無制限のクエリ)やAIによるセンチメント分析(従業員アンケートのAI要約・改善提案)などを含んだ「Eliteプラン」から選択できる。企業の規模やニーズに応じた柔軟なアプローチが可能だ。

 販売形態としては、HPまたはディストリビューター経由の再販に加え、認定資格を取得したパートナー企業が、WXPのマルチテナント機能を活用し、自社ロゴを用いた自社サービスとして、複数の顧客に対して、ITサービスを提供する形態も確立されている。

 最後に中氏は「今後もAIの活用はさらに進んでいくでしょう。WXPでもAI機能の強化を継続していく予定です。AI PCと組み合わせてWXPを提案することで、PCビジネスをより活性化できるように取り組みます」と意気込みを語った。WXPはPCビジネスの拡大を後押しする強力な切り札となるだろう。