AIエージェントに注力するセールスフォース
Agentforce関連サービスの国内提供を開始
セールスフォース・ジャパン(以下、セールスフォース)は、2024年10月より国内での提供を開始したAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」にフォーカスして事業を推進している。こうした事業推進の一環として、3月25日に行われた記者説明会ではマーケティング部門向けのAIエージェント「Agentforce for Marketing」の、4月8日に行われた記者説明会ではAgentforceに特化したマーケットプレイス「AgentExchange」の国内提供の開始が発表された。今回は、新たに国内での提供が開始された二つのサービスと、4月8日に行われた記者説明会で発表されたセールスフォースのアライアンス戦略についても紹介していく。
企業のAIエージェント導入を促進
セールスフォース・ジャパンが注力しているAIエージェントに関する新しいサービスと、2026年度のアライアンス戦略について、3月25日と4月8日に行われた記者説明会の内容を基に紹介する。
マーケターの業務効率を向上させる
AIエージェントの国内提供を開始
まずは3月25日に行われた記者説明会の内容を基に、マーケティング部門向けのAIエージェント「Agentforce for Marketing」の特長を見ていこう。セールスフォース 専務執行役員 製品統括本部 統括本部長 三戸 篤氏は、Agentforce for Marketing提供の背景について以下のように語る。「顧客は一度の取引にとどまらず、深い関係を求めていますが、マーケティング部門は新規顧客の獲得に注力しがちです。マーケティング部門は新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の要望にも応えていかなければなりません」
しかし、マーケティング部門が新規顧客の獲得と既存顧客の対応を全て行うのは現実的ではない。「既存顧客は関係が深まるほどパーソナライズされたサービスをいつでも受けたいと望みます。マーケティング部門はこうした要望への対応に加え、新しい施策の対応も行う必要があります。しかし、マーケティング部門のリソースは限られているため、顧客の期待の間にギャップが生じてしまいます」と三戸氏は続ける。
こうした課題を解決するのがAgentforce for Marketingだ。Agentforce for Marketingは3月25日より、以下三つの機能の国内提供を開始している。一つ目が、マーケターとAIエージェントが協業して、キャンペーンのプランニングから実行まで行える「Campaign Creation」だ。マーケターはキャンペーンの概要やターゲット、ゴールをAIエージェントと会話しながら作成できる。同社 製品統括本部 プロダクトマネジメント&マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャー 由井晴菜氏は、Campaign Creationの優位性についてこう話す。「当社のデータプラットフォーム『Data Cloud』に統合された企業のデータやブランドのデータ、そしてお客さまのデータをブランディングに活用できます。お客さまごとにパーソナライズされたコンテンツの作成が可能です」
二つ目が、顧客のWeb上での行動や属性情報を理解して、顧客ごとに最適な製品を提供する「Personalization Decisioning」だ。例えばWebサイトに埋め込まれたチャットボットに最適な契約プランを尋ねると、AIエージェントが顧客ごとのデータを基に最適な契約プランを回答してくれる。顧客はスピーディーに最適な契約プランや製品を見つけられるため、契約率や購入率の向上に寄与する。
三つ目が、広告のパフォーマンスをAIエージェントが常に分析する「Paid Media Optimization」だ。リアルタイムの分析結果を表示したり、パフォーマンスが低い広告をアラートとして通知したりできる。パフォーマンスが低い広告を一時停止することで、予算を別の広告に振り分けられるのだ。
「Agentforce for Marketingを提供することで、マーケターの生産性向上はもちろん、顧客体験全体の変革を実現できます」と由井氏は力強く語った。

専務執行役員
アライアンス事業統括本部
統括本部長
浦野敦資 氏

アライアンス事業統括本部
グローバルテクノロジーパートナー本部
本部長
鈴木千尋 氏

専務執行役員
製品統括本部
統括本部長
三戸 篤 氏

製品統括本部
プロダクトマネジメント&マーケティング本部
プロダクトマーケティングマネージャー
由井晴菜 氏
AgentExchangeの提供開始に合わせ
Agentforceのパッケージング範囲を拡大
続いて「AgentExchange」の国内提供開始について、4月8日に行われた記者説明会の内容を基に見ていこう。AgentExchangeはAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」に特化したマーケットプレイスだ。顧客や開発者は、セールスフォースのパートナー企業が開発したさまざまなAgentforceソリューションをAgentExchangeから入手できる。
AgentExchangeの国内提供開始を受け、15社のパートナー企業が対応を表明した。中でも、オプロ、KDDI、テラスカイ、ネクプロ、フレイ・スリーの5社は、すでに各社が開発したAgentforceソリューションをAgentExchangにて提供している。同社 アライアンス事業統括本部 グローバルテクノロジーパートナー本部 本部長 鈴木千尋氏は「2026年度中にAgentExchangeに対応した20のサービスリリースを目指しています」と展望を語る。
AgentExchangeの国内提供開始に合わせて、Agentforceのパートナー向けの機能がアップデートされている。これまでAgentforceでパートナー企業がパッケージングできたのは、スケジュール調整を行うといったAIエージェント「エージェントアクション」のみであった。今回の機能アップデートでは、メールの文章を作成するといった生成AIのプロンプト「プロンプトテンプレート」や、複数のエージェントアクションを統合して、一定の役割を実行する「エージェントトピックス」のパッケージングが可能になった。さらに、4月中には複数のエージェントトピックスをまとめた「Agentテンプレート」のパッケージングもサポートする予定だ。「パートナー企業の皆さまは、実質的にAgentforce全体を事前設定済みのパッケージソリューションという形で提供できるようになります。お客さまはAgentExchangeからAgentテンプレートをインストールしてそのまま使うことも、特定のユースケースに合わせてカスタマイズすることも可能です」(鈴木氏)
続けて鈴木氏は「Agentforceの機能拡張によって、パートナー企業の皆さまはお客さまに対してAIエージェントとして提供できるユースケースが広がりました。これらの機能を活用することで、パートナー企業の皆さまにはAIエージェントの導入に課題を抱えているお客さまの支援をしてほしいですね」と語った。

三つの取り組みを軸として
2026年度のアライアンス戦略を推進
最後にセールスフォースが進める2026年度のアライアンス戦略を見ていこう。三つの軸を基に、2026年度のアライアンス戦略を推進していくという。一つ目の軸が「Agentforceビジネスの加速」だ。Agentforceの活用を促進するためにセールスフォースでは、Agentforceの市場投入を促進する「Agentforce GTM 組織」の新設に加え、パートナー育成のための支援プログラムや顧客提案のためのアセットを提供する。「Agentforce資格取得のためのAI学習コンテンツやテクニカルトレーニングなどの提供を行います。こうした支援プログラムの提供によって、Agentforce認定資格者数3,000人を目指します」と、同社 専務執行役員 アライアンス事業統括本部 統括本部長 浦野敦資氏は意気込みを語る。
二つ目の軸が「単一のアーキテクチャ上に統合されたプラットフォームによるビジネス拡大」だ。浦野氏は「Agentforceの活用を日本市場で拡大していくためには、既存のSalesforceユーザーに訴求していくことが重要です」と前置きし、AgentExchangeを通してさまざまなAIエージェントアプリを提供することで、一つのプラットフォーム上でAIエージェントが利用できる強みを、パートナー企業と共に顧客に伝えていくと述べる。
三つ目の軸が「新規市場開拓の推進」だ。昨年度に引き続き、地域・銀行関連事業者との協業を加速させる。「地域企業では業種・業態を問わず当社のプラットフォームの導入が進んでおり、中には自社でソリューションを開発している事例もあります」(浦野氏)こうした地域発のソリューションの全国展開をセールスフォースと地域の企業が共同で行うことで、地域活性化につなげていくという。一方で銀行関連事業者については、中堅企業や関西市場に注力する考えを見せた。
最後に浦野氏は「これらの取り組みを推進することで、AIエージェントの導入を促進していきます」と意気込みを語った。