各拠点の従業員が同一フロアに出社

テレワークマネジメント

“働き方改革”という言葉が叫ばれ始めるはるか以前、2008年に「テレワークの普及」を目的に設立されたのがテレワークマネジメントだ。柔軟に働ける社会の実現を目指し、企業などへのテレワークのコンサルティングを中心に、各種サービスの提供を行っている。

日本企業にマッチしたツール

テレワークマネジメント
代表取締役
田澤由利 氏

 企業へのテレワーク支援を行うテレワークマネジメントは、自社でもテレワークを実践している。そのコミュニケーションインフラとして2013年から導入しているのが、クラウドオフィス「Sococo」だ。米国のSococo(Social Communications Company)が提供する本サービスは、Webブラウザーやアプリケーション上に擬似的なオフィスの間取りを表示し、従業員がそれぞれのアイコンを操作することで、職場と在宅勤務中の従業員が共に働く環境を作り出す。

 テレワークマネジメントの田澤由利氏は「見つけた瞬間“テレワークで求めていたのは、まさにこのツールだ”と思いました。Sococo導入以前は、まだチャットツールなども普及しておらず、メールによるコミュニケーションをメインとしていましたが、共に働く従業員が今何をしているのか分からないという課題がありました。Sococoを導入したことによって、実際のオフィスという場所にいなくても“共に仕事をしている仲間”という感覚が醸成できました」と導入当時を振り返る。

 こうしたオフィスを仮想空間上で再現するツールは、特に日本企業の働き方にマッチしていると田澤氏は指摘する。日本ではチームで連携して働くケースが多いため、在宅勤務などテレワーク環境下においても気軽にコミュニケーションが取れたり、誰がどこにいるのかなどの情報が分かるようにすることが望ましい。テレワークマネジメントは北海道、東京、奈良にそれぞれオフィスがあるが、ほぼ全ての従業員がフルリモートで働いている。出社するのはSococo上のオフィスであり、各拠点の従業員が同一のフロアに出社して共に働いている。

ステータスに応じた居場所を用意

「Sococo上のオフィスでは、用途に応じたエリアを作り、本当のオフィスにいるようなストレスがない環境を構築しています。普段は各拠点のスペースにアイコンを置いています。これにより、そのスペース全体へのチャットや音声、ビデオ通話が可能になり『あの案件について知ってる人いる?』といったような、気軽な雑談が可能になります。また、会議のときは会議室スペースへ、集中して作業したいときは集中作業室へ、電話をするときは電話エリアへ移動します。また、お手洗いなど一時的に離席するような場合に移動する場所も設けました。視覚的に、現在は声を掛けられても対応できないことが分かるようにすることで、よりコミュニケーションが円滑に行えます」(田澤氏)

 テレワークマネジメントでは、自社でのSococoの活用を通し、2014年からは自社が販売代理店となって顧客に提案している。「直近ではコロナ禍の影響もあり、非常に多くのお問い合わせをいただいています。テレワークはインターネット環境の整備などの初期段階の課題を超えると、次はテレワーク環境下の働き方に課題が出てきます。特にその中でもコミュニケーションの取りにくさは多くの企業で課題と感じており、それを解決するツールとしてSococoが適しているのです」と語る。

 これからもテレワークマネジメントでは、コンサルティング企業として、課題解決ツールと合わせた企業のテレワーク運用の支援を進めていく。

アイコンの動きで“騒がしさ”が伝わる

日立ソリューションズ

日立ソリューションズでは、コロナ禍を契機としたテレワークによってコミュニケーション課題を抱えていた。それを解決するツールとして選択したのが、“騒がしさ”を感じ取れるバーチャルオフィスツールだ。

ステータス表示で気軽に声掛け

日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部
ワークスタイルイノベーション本部
ワークスタイルイノベーション企画部 部長
小倉文寿 氏

 第一回目の緊急事態宣言から1年以上が経過した。当時の宣言発出に伴い、全社的にテレワーク(在宅勤務)を実施した企業も少なくない。SI企業の日立ソリューションズもその一つだ。同社の小倉文寿氏は「緊急事態宣言の影響で、当社も極力オフィスに出社しないよう在宅勤務での働き方に切り替わりました。当初はMicrosoft Teamsを活用し、チャットやWeb会議などで在宅勤務環境下のコミュニケーションを図っていましたが、リアルなオフィスであったちょっとした雑談や、相手の様子が分からないことによる声掛けのしにくさなど、課題が多く生じました」と振り返る。

 そうした自社での課題を解決するために選択したのが、仮想オフィス「Walkabout Workplace」だ。米国のWalkabout Collaborativeが提供するクラウドサービスで、PCやタブレット、スマートフォン上におしゃれな仮想オフィスを表示して、テレワーク中の打ち合わせや雑談など、円滑なコミュニケーションを実現できる。

「2020年3月から緊急事態宣言による在宅勤務がスタートし、Walkabout Workplaceの検証をスタートしたのが同年の5月末ごろです。本製品以外のバーチャルオフィスツールも検証しましたが、当社の利用ニーズに最も合っていたのがWalkabout Workplaceでした」と小倉氏。バーチャルオフィスツールは、大きく分けてフロアマップを俯瞰するタイプと、業務中の従業員の様子を一定のタイミングで撮影して、リアルタイムの様子を共有するタイプの二つがあるが、Walkabout Workplaceはフロアマップを俯瞰するタイプだ。フロアマップ上に同僚の顔写真アイコンが表示され、対応可能な場合は緑色、会話NGの場合は赤色と状態を識別できるため、気軽に話し掛けることが可能になる。

物理オフィスと近づける強化を

「Walkabout Workplaceはこのフロアマップの中で自分の部屋が持てるのもよいです。ゲームのようななじみやすさもあるので、楽しく使える点も魅力的ですね。Walkabout Workplaceは話したい人の部屋をクリックすれば、雑談する気軽さで話し掛けられますし、フロアマップを見れば誰と誰が話しているか把握でき、その部屋に行くと会話に参加可能です。人が密集している様子や人の流れが画面上で分かるので、“騒がしさ”を感じながらリアルのオフィスにいる感覚で、業務に取り組めるのです」(小倉氏)

 日立ソリューションズではもともと、ワークスタイル変革ソリューションを提供していたが、ニューノーマルにおける働き方の実現に向けてこれを刷新した。その第一弾としてWalkabout Workplaceの日本初の販売代理店契約を締結し、2020年8月3日から販売をスタートさせている。「企業規模を問わず、約300件の問い合わせをいただいています。業種もさまざまですが、医薬、IT、金融系が比較的多いですね。導入の目的はやはり在宅勤務におけるコミュニケーション課題の解決で、メンバーの一体感の醸成や状況把握などが多いです。世界各国に散在するオフィスを仮想的に一つにしたいという要望を持つ企業さまもいましたね。ベンダーとともに、今後も従業員体験を最大化していくため、物理オフィスに近づける強化を進めていく方針です」と小倉氏は語った。