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少子化の現状と対策を内閣府子ども・子育て本部が提言

少子化の現状と対策を内閣府子ども・子育て本部が提言

2023年01月12日更新

Special Feature 2
デジタル田園都市国家構想シリーズ vol.4
子育てに寄り添うテクノロジー

地方が直面している課題の中でも、人口減少や少子高齢化は深刻だ。特に少子化を止めるためには、結婚や妊娠・出産、子育てに対するニーズをくみ取り、それを実現していくことが求められる。今回はその中でも妊娠・出産や子育てにフォーカスし、GovTech(Government×Technology)や、BabyTech(Baby×Technology)によってそれを解決する方法を紹介していく。

男性の育児参画やテクノロジー活用で
子育てがしやすい社会へ

内閣府子ども・子育て本部

少子化が加速している。厚生労働省の「人口動態統計」によると、2021年の出生数は81万1,622人と過去最少となった。また2022年の出生数は80万人を切るという予測もされており、過去最少を再び更新する可能性が高い。言わずと知れたことだが、少子化の進行により生産年齢人口や労働人口の減少が発生したり、社会保障制度における現役世代の負担が増えたりするといった問題が起こる。少子化問題を解決することは、社会経済を揺るがす危機的な状況を解決することにつながると言えるだろう。

第2子以降の出産をためらう背景

 少子化問題を解決するためには「結婚、妊娠・出産、子育ての希望の実現」に向けた対策が急務だ。2023年4月から内閣府の外局として「こども家庭庁」を創設。これまで内閣府や厚生労働省などそれぞれの省庁にあったこども政策に関する司令塔機能を一本化し、子供の視点に立った政策立案を行っていく方針だ。

 現在、内閣府において子ども・子育て支援の為の基本的な政策や、少子化の進行への対処に関する企画立案や総合調整などを所管している子ども・子育て本部の少子化対策担当 参事官 中島 薫氏は「夫婦の平均理想子供数は2000年代以降、緩やかに低下してきています。平均予定子供数は、2021年調査では前回同様の2.01人と横ばいの推移となりましたが、1990年代以降から見るとなだらかな減少傾向にあります」と指摘する。理想子供数と予定子供数にはギャップが存在するが、この理想の子供数を持たない理由として多いのが「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」という経済的な理由だ(出所:国立社会保障・人口問題研究所)。特に予定1人、理想2人以上の夫婦(以下、A群)では46.2%、予定2人以上、理想3人以上の夫婦(以下、B群)では59.3%がこの理由を回答している。また、年齢・身体的理由として「高年齢で産むのは嫌だから」といった身体・年齢的理由を挙げた割合も多く、A群では40.5%、B群では41.7%となった。また育児負担を理由に挙げた夫婦も多く、A群では23.7%、B群では23.6%だった。

男性の育児参画を促す社会へ

内閣府
子ども・子育て本部
少子化対策担当
参事官
中島 薫 氏

 第2子以降の出生の状況には、夫の休日の家事・育児時間の相関も指摘されている。「令和4年度版少子化社会対策白書」によると、休日の家事・育児時間なしと回答した夫婦は出生ありが10.0%だったのに対し、休日の家事・育児時間が6時間以上と回答した夫婦では出生ありが87.1%に上った。一方で、6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間では、2016年時点でも妻と夫の間に大きな差がある。政府では女性に対する妊娠・出産への支援に加えて、仕事と子育ての両立を図るため、男性の育児参画を促進する取り組みを推進している。実際2022年10月からは、「産後パパ育休」(出生時育児休業)が創設され、男性でも育児休業を取得しやすい環境の整備を企業に義務付けた。

 こうした男性の育児参画は、勤めている企業の姿勢にも左右される。中島氏は「徐々に男性の育休取得率も増えてきていますが、やはり女性に比べて短期間ですし、職場の雰囲気で育休を取得するべきではないと判断してしまう男性もいます。男性であっても女性であっても子育てに参加できる環境について、企業トップの方からきちんとメッセージを発信してもらうことは、会社にとっても社会にとっても価値があることだと思います。多様な人々が働きやすい会社は、持続可能な社会の実現にもつながるでしょう」と指摘する。

 一方で、前述のような環境の整備だけでは育児に対する女性の身体的・精神的な負担はまだまだ大きいのが現状だ。それを解決するため、育児をサポートするテクノロジー「BabyTech」(BabyとTechを組み合わせた造語)の活用に、現在注目が集まっている。

※予定子供数が理想子供数を下回る組み合わせの内、「理想2人以上、予定1人」および、「理想3人以上、予定2人以上」で回答数が多い3項目を編集部が抽出。
出所:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生同項基本調査」(2021年)を基に内閣府作成

BabyTechで育児負担を軽減

 内閣府では、子育てに優しい社会機運の醸成に向けた国民運動の基盤として、官民合同で「子育て応援コンソーシアム」を開催しており、その中でも子育てに伴うさまざまな課題解決へのデジタル技術の活用が提案されている。中島氏は「これまでのコンソーシアムの中では、赤ちゃんの泣き声を解析し、泣いている理由を教えてくれたり、寝かしつけをサポートしてくれたりする製品(第8回)や、赤ちゃんが眠っている時に、呼吸の波形をリアルタイムで確認できるマットレス(第4回)などが紹介されました。『乳幼児突然死症候群』(SIDS)や窒息などにより、睡眠中に赤ちゃんが死亡する事故が発生するケースがありますが、このようなセンサーマットは新生児を育てる上での睡眠時のリスクを低減し、子育ての見守り負担の軽減につなげられるでしょう」と語る。

 また、若い子育て世代は地域とのつながりが希薄であるために、身近に子育てについての相談ができる相手がいなかったり、地域にどのような子育て支援サービスがあるかを分からなかったりといった課題を抱えているケースもある。そうした地域の課題を、デジタル上のプラットフォームで再現できるアプリなども登場している。「どこの小児科が良いとか、お下がりが欲しいとか、逆にこれを誰かにあげたいといった交流ができ、孤独感の軽減に役立ちます。子供の急な発熱時に病児保育施設の予約をアプリで完結できる、病児保育のネット予約サービスなども登場しています。これらを活用することで、子育てに対する負担を軽減することが可能になるでしょう」と中島氏。

 一方で課題となるのは、これらのBabyTech製品を導入する際のコストだ。前述した通り、理想の子供数を持たない理由として経済的な負担を挙げている夫婦も存在する。特にBabyTechのハードウェア製品は、その導入効果が分からなければ導入に二の足を踏んでしまうケースも少なくないだろう。

 神奈川県小田原市では経済産業省の2021年度委託事業として、BabyTechの活用促進に向けた実証調査を2022年1月24日から2月25日の期間で実施した。本実証の中では四つのBabyTechを対象の市民に利用してもらい、その効果検証を行っており、実際に導入効果が得られたケースもあったという。今後は、自治体と企業が連携したBabyTechへの取り組みを進めていくことで、子育て世帯の負担軽減を実現できる可能性があるだろう。

「2023年4月に発足するこども家庭庁は、各省庁よりも一段高い司令塔の役割を担い、こども政策に関する企画立案や総合調整を進めていきます。子供や子育て当事者の声をしっかりと聞き、子育てがしやすい環境整備を進めていくことが重要です。また、現在の子育て世代は当たり前にテクノロジーを活用できる世代です。これらのサービスが充実していくことで、社会全体が子育てに負担を感じることなく、楽しめるような社会になっていくことを望んでいます」と中島氏は語った。

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