今号のAzureから始めるAIとクラウドの未来では、以前も紹介したデータプラットフォーム「Microsoft Fabric」について改めて紹介します。Microsoft Fabricは、データの収集・加工・蓄積・分析・可視化・AI活用までを一つのSaaSとして提供する、統合データ分析プラットフォームです。どのようにデータ分析の自動化を進められるのか、導入のメリットを見ていきましょう。

分散するデータを統合&整理

「Microsoft Fabric」の強みは、SaaS提供のためネットワークインフラの運用が不要となる点と、データ活用に必要な七つのワークロードを内包している点です。併せて、「OneLake」により、データを一元管理し、Excel/Teams/PowerPointを含むMicrosoft 365と統合可能です。昨今の傾向として、Excelデータや基幹システム、「Microsoft SQL Server」(以下、SQL)、クラウドサービスなどさまざまな環境に有用なデータが存在しているにもかかわらず、それらをうまく活用できていないという声が多数届いている状況があります。生成AIの利用も急激に進んでおり、企業のデータ活用は大きな転換点を迎えています。

複数のツールを選べるMicrosoft FabricのWebブラウザー画面。

 上記を踏まえ、よりデータ基盤の利用を有効に促進するためには、データが1カ所で整理されていることが前提となり、データ基盤をこれ以上複雑にしないことが重要なポイントです。しかし現状は、多くのお客さまやパートナーさまにおいて、データ管理の観点でExcel・SQL・BIツールが分断されている、データの加工や分析処理が属人化している、AIを使いたくてもデータの形式が整っていないなど、コスト・運用・人材の面で多くの課題が生じています。その課題を解決するために、最初からAI前提で設計された統合型データ基盤としてMicrosoft Fabricが選ばれています。Microsoft Fabricは、「Power BI」「Azure Synapse」「Azure Data Factory」の強みを一つに統合することで、これらの課題を解消します。Microsoft Fabricは分析のためのツールだけではなく、AI時代に備えるためのデータの整理整頓を実現する重要なプラットフォームです。

 Microsoft Fabricは、簡単にデータの設定を行える点も魅力です。データの処理に関する全てのワークロードを単一のリソースプールで処理できるよう設計されているため、時間とコストの削減に寄与するデータ分析・統合ツールとして活用できます。

データの分析もMicrosoft Fabricで

 では、ここからはMicrosoft Fabricの持つ機能の詳細と強みを説明していきます。

・OneLakeによる「単一のデータ基盤」
 Microsoft Fabricの中核は、データレイクであるOneLake(The OneDrive for Data)であり、全てのデータを集めることが前提の設計となっています。これは、構造化および非構造化、リアルタイムデータを1カ所に集約でき、全てのワークロードが同じデータを参照、更新することを意味しています。また、データの二重管理、複製が不要となり、データウェアハウス、データレイク、BIごとにデータが分散しがちな従来の構成を統合可能です。Microsoft Fabricはツール同士をつなぐのではなく、最初からデータを分断させない設計になっています。

・分析からAIまでを一つのSaaSで完結
 Microsoft Fabricは単に複数製品をバンドルするのではありません。Azure Data Factory(データの取り込み)、データレイク/データウェアハウス(データ加工・分析)、「リアルタイム インテリジェンス」(即時分析)、Power BI(データ可視化)、「Microsoft Copilot」/「Fabric IQ」(AI&データの意味の理解)といった機能を、単一のアーキテクチャや単一のUI、単一の課金体系で提供しています。

・AI時代を前提にした設計(Fabric IQ+Copilot)
 データを単なる数値・列として扱うのではなく、それらを理解するためのデータへ進化させられます。Microsoft Fabricの機能であるFabric IQがデータを意味のあるビジネス概念として推論することで、Microsoft CopilotやAIエージェントがそれらのデータを「数値」ではなく「業務の文脈」として理解し、データ基盤がAIを使える構造に進化させることが可能となります。AIを導入する前に、AIが理解できるデータ基盤を作れることが大きな特長です。

・Power BIへの投資をそのまま活用
 Power BIで作成したモデルの再利用が可能なため、すでにPower BIをご利用中のお客さま、パートナーさまにとって導入障壁が低くなります。BIの上流を整える自然なステップとして、Microsoft Fabricに移行しやすくなっています。

 具体的な活用シナリオとして、Microsoft Fabric内のPower BIを活用したデータ分析を例に挙げてみましょう。まずExcel、SQL、各種クラウドサービスなどのソースに接続します。データをクリーンアップして整形し、データのモデル化や結合などを行った後、レポートやダッシュボードが作成されます。こうした視覚的なデータをチーム内で共有することなどが可能です。

 今回は、ニーズを踏まえながら、Microsoft Fabricを紹介し、その有効性を解説しました。ぜひ新年度を迎える前に、社内のデータを今一度洗い出してみましょう。それらを整理して統合し、AI活用の観点からデータの新たな利用方法を検討する際に、Microsoft Fabricは役立ちます。

text:日本マイクロソフト 大北崇人 氏