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地方のデジタル化促進を効果的に進めるには

地方のデジタル化促進を効果的に進めるには

2022年09月08日更新

地方のデジタル化促進は箱物ありきではなく
地域との交流によるビジネスの確立で促進される

|日本DX|識者見解

デジタル田園都市国家構想のICT基盤として、光ファイバーの整備、5Gの整備、データセンターの地方分散整備、日本列島を周回する海底ケーブルの整備などを含むデジタル田園都市国家インフラ整備計画を総務省が中心となって進めている。すでに地方にデータセンターを構築して運営する事業者は政府のこの取り組みに対してどのような意見を持つのか、関西経済同友会の常任幹事をはじめ日本データセンター協会理事長、ソフトウェア協会会長などを務めるさくらインターネット 代表取締役社長 田中邦裕氏に話を伺った。

災害対策やリスク回避だけでなく
ICTに関するメリットも必要

さくらインターネット
代表取締役社長
田中邦裕 氏

 業界でいち早く地方にデータセンターを開設したさくらインターネットの代表取締役社長を務める田中邦裕氏はデジタル田園都市国家インフラ整備計画について、国家のICTインフラを強靭化することを評価しつつ、ICTに関連するメリットも追求する必要があると指摘する。

 田中氏は「データセンターを地方に分散して整備するメリットとしてディザスタリカバリーによる災害対策をはじめ、電力が不足している東京に対して北海道や九州は再生エネルギーが潤沢に供給できるなどリスク回避、および再生エネルギー利用というESGの観点での効果が挙げられます」と評価する。

 また日本周回海底ケーブルの整備(デジタル田園都市国家スーパーハイウェイ)および陸揚局の地方分散整備も同様にリスク回避の効果がある。しかし一方で田中氏は次のように指摘する。

「望む望まないにかかわらずデジタル社会は進展していきます。それを支えるICT基盤に対して災害対策やリスク回避という観点で強靭化することへの取り組みはとても重要です。しかし東京などの首都圏のデータセンターの需要が高い以上、データセンターを地方に整備してもITとしてのメリットがなければ設備が使われないことが危惧されます」

データセンターだけでは
地方のデジタル化は進まない

 さくらインターネットは2011年に北海道石狩市に「石狩データセンター」を開設し、ビジネスを順調に成長させており、現在も黒字幅を伸ばし続けているという。

 地方のデータセンターの運営の難しさについて田中氏は「データセンターを利用するユーザーは東京の企業が中心であり、東京のデータセンターの需要が圧倒的に大きいのが実情です。ただしクラウドサービスを提供するデータセンターについてはロケーションを問いません。クラウドという付加価値を加えれば地方のデータセンターにも需要が見込めます」と説明する。

 デジタル田園都市国家構想では地方のデジタル化促進や地方創生も目的の一つとなっている。データセンターの地方分散整備やデジタル田園都市国家スーパーハイウェイや光ファイバーの整備は地方のデジタル化の促進や地方創生にどのように貢献するのだろうか。

 田中氏は「地方にデータセンターがないから、あるいは光ファイバーが不足しているからデジタル化が進まない、地方創生ができないということではありません。逆に地方にデータセンターを開設すれば、地域のデジタル化が進むわけではありません」と指摘する。

 地方に開設するデータセンターを起点に地域のデジタル化や産業の振興を促進するにはどのような取り組みが必要なのだろうか。田中氏は地域との交流の重要性を挙げる。さくらインターネットの石狩データセンターでは、地域の人材を雇用して同施設を運営している。また同施設を通じて地域のデジタル化に貢献する取り組みも意識して行ってきた。

 こうした取り組みは地域にデータセンターがなくても、IT企業が進出して地域の人材を雇用し、地域の企業と交流することで地域のデジタル化および産業の振興に貢献できると田中氏は説明する。

さくらインターネットの石狩データセンターの外観。
さくらインターネットの田中社長は沖縄の那覇市に移住した。田中氏は「日本全体でデジタル化が進めば、場所を選ぶビジネスが激減して地域の格差が是正されます。また世の中の無駄や特権も排除され、より平等な社会になります」と話す。

誰もが使えるUXの実現と
ハイブリッドの解消で前進

 これまで地方創生を目的に地方に開設されたデータセンターが破綻した事例が少なくなかった。しかし、さくらインターネットをはじめ成功事例も少なからずある。その共通点について田中氏は「自社の資金で作っていること」だと指摘する。

 そして「作ることが目的ではなく、作ってサービスを売ることを目的としているため、ビジネスが確立されているのです。地域との交流を通して生まれる需要に加えて、どの地域にどのような需要があるのかを見極めて、それがビジネスとして成立するのか、継続できるのか、どのようなサービスが受け入れられるのかという、ビジネスとして当たり前のことを実行しています」と説明する。

 さらに地方でのデジタル化の難しさについても指摘する。田中氏は「基本的な認識としてデジタルのリテラシーは都市部の人が高い傾向にあり、地方と格差があります」と話す。

 これは解決に時間がかかる、非常に困難な問題ではあるが、解決策はある。田中氏は「地方の人もスマートフォンでオンラインゲームを楽しんだり、オンラインで買い物をしたりするなど、デジタルが使えないわけではありません。問題はアプリケーションのUXです。特にビジネスアプリケーションや公共機関が提供するサービスのUXは使いづらい場合があります。それに加えてデジタルと対面のハイブリッドでサービスが提供されていることも問題の一つで、デジタルを使わなくてもよい状況になっています。UXを誰もが使えるデザインに改善し、全てのサービスをデジタルで提供することで、日本のデジタル化が前進するでしょう」と提言する。

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