リモートデスクトップで全庁テレワークに成功
~コロナ禍でも業務を止めない新潟市役所の取り組み~

働き方改革の推進や新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、民間企業だけではなく自治体においてもテレワークの実施が推奨されている。徐々に実施率は増えてはいるものの、現状は市民の個人情報や行政文書などの機密性の高い情報を扱うセキュリティ面の不安から、テレワークの実施に踏み切れないケースが多い。新潟県の新潟市役所では、そうした悩みをリモートデスクトップソリューションの導入によって解決した。

1年間のテレワーク実証実験

 場所や時間にとらわれることのない柔軟な働き方が実現できるテレワーク。働き方改革の一環として業務の効率化、育児や介護との両立といった観点から、自治体においても導入が進みつつある。新潟県の新潟市役所もまた、働き方改革の推進に伴う全庁テレワークの実施を検討している自治体の一つだった。

「新潟市役所では、2019年1月ごろから働き方改革の実現に向けて1年間に及ぶ実証実験を行いました。実際に複数のリモートデスクトップソリューションをテスト導入し、総務部内の約100人の職員を対象に検証を行いました」と話すのは、新潟市役所 総務部 ICT政策課 井浦日高氏だ。

 続けて井浦氏は次のように振り返る。「テレワークを実現させるには、自宅や外出先でも庁内システムにアクセスして利用できるようにしなければなりません。市民の個人情報や行政文書などの機密性の高いデータを扱う当市にとって懸念点となったのが、リモートアクセスによる情報漏えい、マルウェアといったセキュリティリスクでした。導入するリモートデスクトップソリューションには、テレワークを初めて行う職員でも簡単に利用できる扱いやすい操作性であることに加え、総務省が公表している『地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン』などの指針に準拠した強固なセキュリティが求められました」

自治体ガイドライン準拠の認証機能

 1年間の実証実験を経て新潟市役所が採用を決めたシステムが、ソリトンシステムズのリモートデスクトップソリューション「Soliton SecureDesktop」とネットワーク認証に必要な機能をオールインワンで提供するアプライアンス製品「NetAttest EPS」だった。

 Soliton SecureDesktopは、アプリケーションを庁内のデスクトップとテレワーク用のPCにインストールするだけで、リモートデスクトップ環境を容易に実現できる製品だ。自席のPC(LGWAN接続系)に庁外環境からリモートアクセスして、庁内にいる時と同じように業務が行えるようになる。画面転送型の仕組みで、庁内のデータを庁外へ持ち出すことはできないため、セキュリティ面も安心だ。

 リモートアクセスする際は、ID/パスワードのユーザー認証とNetAttest EPSを利用した電子証明書を用いた多要素認証を実施する。証明書を持たない不正端末からのリモート接続を制御できるため、なりすましなどのセキュリティリスクも防ぐ。

「導入の決め手は、シンプルな手順で利用できる分かりやすい操作性と強固なセキュリティ性です。地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインの指標となっている多要素認証や電子証明書による認証を満たした万全なセキュリティ対策が講じられる点も魅力でした」と井浦氏は説明する。

 新潟市役所ではSoliton SecureDesktopを導入したことで次のような効果を実感している。


■Soliton SecureDesktopの導入効果

・高度なセキュリティ対策
総務省の地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドラインに準拠。ITリテラシーの低い職員でも多要素認証でセキュリティリスクを回避できる。

・操作がシンプルで扱いやすい
ID/パスワードを入力してログインするだけでリモートアクセスができるため、機械操作に苦手意識のある職員でも簡単に利用可能。

・BCP対策も実現
地震・津波・大雨・大雪などの自然災害や事故、停電、パンデミックなど予測不可能な事態に備えたBCP対策としても有効。

テレワーク実施率の拡大を目指す

 テレワーク環境を整えたことで、昨今のコロナ禍においても、テレワークを実施することで業務を継続できているという。「新潟市は、国との連絡調整や市政に関する情報の収集及び発信などを行う『新潟市東京事務所』を東京都に設けており、新潟市の職員が7人程度常駐しています。2020年4月に緊急事態宣言が発出された際には、Soliton SecureDesktopを利用して交代制による在宅勤務を実現できました。PCを開けば簡単に庁内のデスクトップ環境につながり、業務を継続できると好評です」(井浦氏)

 現在、約5,500人の職員の内、テレワークの実施率は15%ほど。主に外出先での作業が多い、建築関連や広報関係の部門で利用されているという。「当市は職員が働きやすい環境を構築するため、1年をかけて最適なリモートデスクトップ製品の選定や準備を行い、テレワークの導入に成功しました。次のステップとしては、窓口などの対面で業務を行う職員がテレワークを実施できるような環境を整えていきたいと考えています。職員が働きやすい環境を目指して今後もテレワーク拡大に向けて取り組んでいきます」と井浦氏は展望を語った。